マネーライター、ファイナンシャルプランナー／証券会社のマーケットアナリストを経て、1996年に独立。ビジネス誌や経済誌を中心に金融、資産運用の記事を執筆。著書に『ロボアドバイザー投資１年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる！ キャッシュレス決済で絶対得する本 』。

松岡 賢治

<p><span class="strongInContent">年々、増加し続けるクレジットカード詐欺。現在の主流の手口は「フィッシング」と「クレジットマスター」だが、今年に入ってからは新手も登場している。「なりすましバナー広告」とでも呼べるようなタイプで、完全な詐欺とは言えないが、放置しておくと確実に損害が発生するという巧妙な手口だ。一体どんなものなのか？　その中身と対策を専門家が解説する。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
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<figure id="attachment_369158" aria-describedby="caption-attachment-369158" style="width: 640px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="7adde469"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/04/8100419f26d5924348fb9aab8ab6cdca.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-369158" class="wp-caption-text">自分が表示したWebサイトの「一部」だと思ってカード情報を入力したら…</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">クレジットカード詐欺の被害額は過去最大を更新</span></h3>
<p>日本クレジット協会が発表した、’23年のクレジットカード不正利用額は540億9000万円に上り、’22年の436億7000万円から24％増加して過去最大となった。不正利用の93％を占めるのが番号盗用によるもので、詐欺を行う側がカードの番号や有効期限、セキュリティコードといった重要な情報を盗み、本人になりすましてカードを使うというものだ。</p>
<p>番号盗用の手口について簡単に触れておくと、現在の主流は<span class="strongInContent">「フィッシング」</span>と<span class="strongInContent">「クレジットマスター」</span>の２つが挙げられる。</p>
<p>まず、フィッシングは、ユーザーに対して偽のメールやメッセージを送り付け、「支払いに問題がある」「カードが使えなくなった」などと訴えて、偽サイトのURLに誘導、誘導先の偽サイトでカード情報を入力させて盗む、といったものである。</p>
<p>つまり、フィッシングは番号盗用といっても、騙されてしまったユーザーが自分でカード情報を流出させていることになる。したがって、怪しいメールやメッセージは一切無視をして、偽サイトに移行しないようにすれば盗用を防ぐことができる。</p>
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<h3><span class="strongInContent">予防できない番号盗用「クレジットマスター」とは</span></h3>
<p>だが、「クレジットマスター」の方はユーザーが予防できない。クレジットマスターとは、カード番号の規則性に基づき、無数の数字を組み合わせて、カード番号や有効期限、セキュリティコードといった実在のカード情報を生成する、という手口である。昔からある手法だが、パソコンのデータ処理が高速化したことで、「bot（ボット）」といわれるような自動作業ソフトウェアを駆使して容易にできるようになった。</p>
<p>カード番号の自動生成をするbotは、ショッピングサイトに手あたり次第に番号を入力していき、実在のカード情報を探り当てようとする。実在のカードがヒットすれば、その番号で第三者が買い物をしてしまう。こうなると、一回も使ったことがないカードであっても、不正利用される可能性が出てくる。実際、未使用のカードが不正利用されたという報告もある。</p>
<p><span class="strongInContent">残念ながら、このカードマスターに対しては有効な予防策はない。ほとんど唯一といえるのが</span><span class="strongInContent">利用明細の確認だ。最低でも１週間に１回はカードの利用明細をチェックして、不正利用がないかどうかを確認してほしい。</span></p>
<p><span class="strongInContent">不正利用を把握した段階でカード会社に連絡をすると、ユーザーの故意または重大な過失がなければ、連絡した日から約60日前までさかのぼって利用被害の全額が補償される。</span>不正利用の発見は早ければ早い方がいい。最近は、スマホのアプリで簡単にチェックできるので、それほどの手間ではないはずだ。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="サイトの一部になりすまして…"></div>
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<h3><span class="strongInContent">サイトの一部になりすました</span><span class="strongInContent">「バナー広告」</span><span class="strongInContent">とは？</span></h3>
<p>そして、<span class="strongInContent">今年に入ってから被害が散見されるようになったのが、「なりすましバナー広告」タイプだ。</span>その名のとおり、おもにWebサイトに表示されるバナー広告が入口となっている手法のことである。</p>
<p>Webサイトやスマートフォンのアプリを見ていると、頻繁に画面上にバナー広告が表示される。通常のバナー広告の場合、クリックすると、商品やサービスに関連した画像や動画が広告として流れてくる。</p>
<p><span class="strongInContent">しかし、「なりすましバナー広告」の場合、ユーザーはバナー広告として認識していない。サイトの一部だと思い込んでいる。その理由は、商品名やサービス名などは一切表示されず、その代わりに「スタート」や「続行」、「ダウンロード」といった文字が入ったクリック用のボタンだけが大きく表示されているからだ。</span></p>
<p><span class="strongInContent">このように「なりすましバナー広告」の最大の特徴は、一見、バナー広告とはみえず、サイトの一部に〝なりすまし〟ていること。サイトを利用しようとしている人が、間違ってそのバナーをクリックすることを狙っているのである。</span></p>
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<figure id="attachment_369160" aria-describedby="caption-attachment-369160" style="width: 837px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b4a6551a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/04/964479d6e510af4fef8e221dcf482282.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-369160" class="wp-caption-text">’23年のクレジットカード不正利用被害額の９割以上が「番号盗用」によるもの（金額は億円。千万円を四捨五入）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">「無料登録」の言葉に油断してカード情報の入力をすると……</span></h3>
<p>この「なりすましバナー広告」をクリックすると、メールアドレスでアカウントを作り、最終的には、クレジットカードの情報を入力するように指示される。</p>
<p>その段階でも、ユーザーは、自分が表示したWebサイトを利用するための手続きだと思い込んでいる。ところどころで、<span class="strongInContent">「アカウントの作成は無料」「無料で登録できる」「登録したクレジットカードに課金はされない」</span>といった説明がついて回るのだ。</p>
<p>カード情報の登録を済ませても課金されないことが明示されるが、利用規約のリンクを開くと、いきなり長文の英語が出てくる。そこには、「契約内容」として、<span class="strongInContent">「５日間の無料期間の間に解約しない場合は月額●●●●円が課金される」といったことが英語で書かれている。</span>この金額を見た段階で、ほとんどの人が「変なサイトにひっかかった」と分かる。</p>
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<h3><span class="strongInContent">無料ソフトがダウンロードできるサイトが狙われている</span></h3>
<p>ここまでの説明を聞いて、「何でカード情報まで登録してしまうのか？」と疑問を感じた人も多いだろう。それにはいくつかの理由が考えられる。</p>
<p>「なりすましバナー広告」は、動画やゲームの無料サイトや、ビジネス系ソフトウェアの運営サイトなど、あらゆるWebサイトに登場している。<span class="strongInContent">共通しているのは「無料ソフトのダウンロードができる」ところ</span>。</p>
<p><span class="strongInContent">例えば、オンラインのファイルストレージが利用できるサイトに表示されていると、使いたい人はあまり抵抗なくクリックしてしまう可能性がある。それほど、絶妙な位置に表示され、上手くデザインされているのだ。</span></p>
<p>また、「カード情報を入力するときにヘンだと気付かなかったのか？」と思うだろうが、「あと30分以内にファイルを送らなければいけない」とか、「１時間以内にPDFを修正しないと間に合わない」といった、切羽詰まった状態になってしまうと、ソフトのダウンロードを最優先してしまい、少しヘンだなと思っても、カード情報を入力してしまうことは十分に考えられる。</p>
<p>なにしろ、途中で、<span class="strongInContent">「無料で利用可能」ということが繰り返しアピールされるのだ。「居住国確認のため」という名目でカード情報の入力を求めるサイトもある模様。</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="カード会社は「返金は不可能に近い」と…"></div>
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<h3><span class="strongInContent">詐欺ではない！？ 「なりすましバナー広告」の巧妙な仕組み</span></h3>
<p><span class="strongInContent">さらに、厄介なことがある。「なりすましバナー広告」は、100％詐欺とは言えない、〝グレー〟な手口なのだ。なにしろ、本人の意思でクリックして、カード情報を入力している。表面上は、契約に同意した形となる。</span></p>
<p><span class="strongInContent">しかも、ここがポイントなのだが、手続きを取れば解約が可能とされている。つまり、詐欺とは一線を画した、あくまで一般的なサイトの体裁をとって運営されているのだ（サイトの中身は動画やゲームのサブスクというパターンが多い）。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">そして、しっかりと解約手続きをすると、契約が解除されるケースがほとんどだという。「100％クロ」とは断定できない、巧妙な仕組みになっている。ただし、この解除をするのが難しい。まず、解除を申し込むサポート画面が非常に分かりにくい。次に、サポート画面にたどり着けても、英語でメールを送るように要求される。</span></p>
<p><span class="strongInContent">しかし、絶対に放置してはいけない。カードを作り直しても請求は続く恐れがあり、放っておくとより面倒になる可能性もあるからだ。カード会社に直接質問をしたが、完全に詐欺とは言えないため、「返金は不可能に近い」とのこと。また、カードの作り直しは必須だという。</span></p>
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<h3><span class="strongInContent">解約請求の英文のテンプレートを利用する</span></h3>
<p>では、「なりすましバナー広告」にひっかかってしまったときはどうするか？　実は、<span class="strongInContent">「国民生活センター越境消費者センター」</span>に具体的な相談事例が掲載されている。</p>
<p>「越境消費者センター」は、海外事業者との取引でトラブルに遭遇した人の相談窓口で、さまざまな相談事例が掲載されている。そのうち、<span class="strongInContent">【“無料”をうたうアプリの海外からの課金に関する相談】のケースが、「なりすましバナー広告」に近い。</span>まずはココを参照して、トラブルの概要を把握しよう。</p>
<p>もし、カード情報まで入力をしてしまったら、「越境消費者センター」の【スマートフォンなどの当選をきっかけとした海外有料サイトの登録・課金のトラブル】のページを参照してほしい。</p>
<p>そこには<span class="strongInContent">、解約を申し込むときの英文のサンプルが掲載されている（【事業者への解約の申し出文（英語・ひな型）】）。なるべく早く、そのサンプルを利用して、サポートに解約のメールを送り付けよう。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>本来なら、実際の〝なりすましバナー画像〟を貼って、分かりやすく注意喚起をしたいところだが、あくまでもグレーゾーンに留まるため、「営業妨害」といったクレームが来ないとも限らないので自主規制したい。</p>
<p>バナーをクリックしただけなら、サイトを閉じてしまえば問題はないので、落ち着いて対処してほしい。くれぐれもカード情報だけは入力しないように。</p>
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<p><span class="strongInContent">■国民生活センター越境消費者センターの関連ページはコチラ</span></p>
<p><a href="https://www.ccj.kokusen.go.jp/jri_sysi?page=free" target="_blank" rel="noopener">1＿【“無料”をうたうアプリの海外からの課金に関する相談】</a></p>
<p><a href="https://www.ccj.kokusen.go.jp/chatbot_answer?page=smartphone" target="_blank" rel="noopener">2＿【スマートフォンなどの当選をきっかけとした海外有料サイトの登録・課金のトラブル】</a></p>
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松岡賢治

年々、増加し続けるクレジットカード詐欺。今年に入ってからは、「なりすましバナー広告」とでも呼べるようなタイプの新手も登場しているという。放置しておくと確実に損害が発生するという巧妙な手口が特徴だ。

補償されないグレーゾーン、気がつかないで…新手のカード詐欺「なりすまし型バナー広告」の意外なワナ

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