W杯日本大会まで半年 サンウルブズがリーグから除外という衝撃

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3月16日、秩父宮ラグビー場でのレッズ戦終了後のウォーレンボスアヤコ(右) 写真:松尾/アフロ

ラグビー日本代表を支えてきたプロクラブ、サンウルブズが加盟する国際リーグ・スーパーラグビーから除外されることになった。オーストラリアメディアの電子版などによれば、スーパーラグビーを統括するサンザーが22日にも発表の予定だ。同日、日本ラグビー協会(日本協会)とサンウルブズを運営するジャパンエスアールが記者会見をおこなう。

ワールドカップ日本大会を半年後に控えるなか、日本代表候補へも打撃を与えうる報せ。これがもし真実のものとなれば、サンザー、日本ラグビー協会などに相当な説明が求められるだろう。日本ラグビー界は、変わり続ける国際情勢のなかで最善の手を打てるだろうか。

日本協会がスーパーラグビーへのチーム派遣を決めたのは2014年だった。当面の契約期間は2016年から2020年までの5シーズンと定められ、翌年にはジャパンエスアールが立ち上がった。東京の秩父宮ラグビー場、シンガポールのナショナルスタジアムをホームグラウンドとし、2018年には香港でも試合を実施。アジアでの競技普及も期待されてきた。

結成当初は日本協会が新たな日本代表ヘッドコーチを決めるのに時間がかかったことなどからチーム作りに難航。毎年ヘッドコーチを交代させてシーズンごとに勝ち星を伸ばしたが、今季強豪チーフスに勝つまで通算7勝と苦しんでいた。

とはいえ複数の選手が激しい肉弾戦への耐性について手ごたえを明かすなど、日本代表に底力を与えた。コーチング体制を整えてからは、ナショナルチームに似た戦術、ゲームプランを用いて強豪国(ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチン)のクラブと戦えるようになった。昨年6月に勝ったイタリア代表戦でのインサイドセンターが、ファーストレシーバーになる攻撃陣形は、サンウルブズが5月のスーパーラグビーので試していた戦術だ。サンウルブズは総じてスペースにパスやキックを効果的に配す、スピード感あるスタイルをモットーとしてきた。

グラウンド外では狼の鳴きまねをする独特の応援スタイルなどが定着。今年に入ってサンウルブズ除外の議論が本格化した際は、同じオーストラリアカンファレンスに属するレッズのブラッド・ソーンヘッドコーチがこうコメントした。

「それ(サンウルブズ脱退)が本当になったら非常に、非常に残念。今季の彼らの戦いぶりを見たら明白です。日本ラグビーにとって大きい存在であると知っている人も多いでしょうし、観客も素晴らしい。来日する我々も、(日本などの)町に出るだけで異なる文化や空気を肌で体感できるわけです」

サンザーがサンウルブズを外す直接的な要因は、財政的問題とされる。詳細は22日の会見で明らかとなるだろうが、国内報道ではオーストラリアのテレビ局の放映権引き上げに伴いサンザーがサンウルブズへ年間約10億円の参加費を求めたとされる。できたてのジャパンエスアールにとっては法外とも言える金額。公益財団法人の日本協会が代表強化費として工面すれば状況は一変するところだが、両組織の間にはかねてより隙間風が吹いていた。

ちなみにサンザーのボードメンバーの中では、かねてより南アフリカの面々がサンウルブズの存続に否定的だったと見られる。アウェーゲーム時の移動距離の長さを理由にしていたが、本当のところはわからない。3月中旬には日本企業に近しいオーストラリアのクラブがサンウルブズ存続を支持したと伝えられたが、国内では複数の関係者が「除外が既定路線では」と唇をかんでいた。

3月15日には、チームの環境整備に尽力してきたジャパンエスアールの渡瀬裕司CEOが一連の問題について発言。前向きな決意表明をしたが、終わりの始まりの暗示にも映った。その言葉を拾っていく。

「目先の資金など短絡的なことよりも…(見るべき点はある)。その意味ではサンウルブズのラグビーのクオリティを褒められているのは嬉しいことで、それは続けていかなくてはいけない。毎回、満員に近い形での試合をするのも一番」

「将来的なビジネスについてとか、色々と考える人はいると思います。ただ、チームのすばらしさを見て欲しい」

「こういう言い方をするのは難しいかもしれませんが…スーパーラグビーにしがみつきたいというよりも、サンウルブズというチームを残したい。ファンも選手もそう思っている」

普及とイコールで結ばれる代表強化に寄与してきたサンウルブズのスーパーラグビー参戦。この命綱が切れるとしたら、日本協会はそれに代わる効果的な強化ビジョンを打ち出さねばならない。統括団体のワールドラグビーは国代表による国際大会新設を企画しているが、これが日本代表を含む形で実現されたとしても開幕は2022年以降となりそう。次のワールドカップは2023年にフランスでおこなわれる。

国内トップリーグがスーパーラグビーもしくはフランスのプロリーグ級に充実したらよいのだろうが、従来の観客動員数などを踏まえると諸外国のような完全プロ化は至難の業。そもそも出場選手の視点からから見れば、スーパーラグビーとトップリーグとでは強度やゲームスピードが段違いだ。

トップリーグはいずれ新リーグとなる見込みだが詳細は未定で、決まっているのは2019年度のトップリーグが2020年1月に開幕すること。ほとんどの日程がスーパーラグビーと重なる。トップリーグとスーパーラグビーとの兼ね合いについて、渡瀬はこう言っていた。

「僕は協会の人ではないので、そこはわからないです。いまの立場的にはサンウルブズ(の発展)が私の使命だし、それが日本ラグビーのためだと信じてやっています」

ちなみに2017年限りでスーパーラグビーから脱退させられたオーストラリアのウェスタン・フォースは昨夏、世界各国のチームを招いて「ワールドシリーズラグビー」という大会を開いた。

今季サンウルブズで活躍する坂手淳史は、3月16日のレッズ戦後にこう応じた。

「実際に何もわからないと聞いているので僕たちもコメントすることがないのですが、自分たちとしてはここで成長できているので、いまのこのシーズンが大事だと思っています」

明らかに先行きが不安な中で選手が「いまは目の前のことを精一杯やる」と話す流れは、サンウルブズができる前からずっと続いている。少なくとも現場の思いを置き去りにする決定は、最小化されるべきではないか。

  • 取材・文向風見也

    スポーツライター 1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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