編集・ライター。’83年、山形県生まれ。10年間、健康情報誌の編集部で月刊誌・Webメディアの編集に携わったのちフリーランスに。現在はヘルスケア・医療分野などを中心に、医師や専門家の取材、企画、執筆を行う。

釼持 陽子

<h3><span class="strongInContent">海外から広まり、日本でも注目され始めている「A２ミルク」</span></h3>
<p>牛乳を飲むとお腹が痛くなる、下痢になりやすいという理由から、飲むのを避けたり飲むタイミングに気をつかったりしたことはないだろうか。そんな“牛乳が合わない”と思っている人に朗報となるのが、お腹にやさしい次世代牛乳として注目されている「A２ミルク」だ。</p>
<p><span class="strongInContent">「A２ミルクは、ニュージーランドやオーストラリアなどの海外では20年以上前から広まり、日本でも徐々に需要が高まっています」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>と話すのは、’19年からA２ミルクの研究に携わる、東京農業大学の庫本高志教授。</p>
<figure id="attachment_372982" aria-describedby="caption-attachment-372982" style="width: 640px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="06410e41"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/05/7f227dfc1199c87997d3c8573f528a18.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-372982" class="wp-caption-text">牛乳を飲むと、お腹がゴロゴロするのは…</figcaption></figure>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p><span class="strongInContent">「A２ミルクと通常の牛乳との違いは、牛乳に含まれるたんぱく質の一種、βカゼインの種類です。βカゼインは牛の個体が持っている遺伝子で決まり、『A１型』と『A２型』が存在します。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">普通の牧場では、A１の牛、A１A２の牛、A２の牛が混在して飼育されています。そのためそこで搾られた牛乳は、A１型とA２型のβカゼインが混ざっています。これが一般的な牛乳です。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">遺伝子がA２の牛のみから搾られた牛乳は、A２型のβカゼインだけを含んでいます。これを『A２ミルク』といいます。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">A１型・A２型というと難しいですが、人間の血液型に、A型やB型、AB型があるのと同じイメージです」</span></p>
<figure id="attachment_372983" aria-describedby="caption-attachment-372983" style="width: 828px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ba01278a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/05/d8a78d9fd664f1a5438846836f015157.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-372983" class="wp-caption-text">A２ミルクは、A２型のβカゼインだけを含んでいる。一方、普通の牧場でつくられる牛乳は、牛から搾ったあとにタンクに集めるためA１型とA２型のβカゼインが混ざった状態になる。（日本A２ミルク協会提供）</figcaption></figure>
<p>つまり、純粋なA２の牛だけから絞った牛乳が、「A２ミルク」というわけだ。元来、牛乳のβカゼインはすべてA２型だったが、牛を家畜化する過程で遺伝子が変異して、A１型のβカゼインが生まれた。これが、ホルスタイン種を中心にさまざまな乳用種に広がっていったと推測されている。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<h3><span class="strongInContent">遺伝子で判断すると、日本人のほとんどが「乳糖不耐症」予備軍</span></h3>
<p>牛乳を飲むとお腹がゴロゴロしたり、下痢になったりする症状を「乳糖不耐症（にゅうとうふたいしょう）」という。これは、牛乳に含まれる乳糖を分解する「ラクターゼ」という乳糖分解酵素の活性が低下し、うまく消化吸収ができないことで起こる症状だ。</p>
<figure id="attachment_372984" aria-describedby="caption-attachment-372984" style="width: 640px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="23a5abef"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/05/86ebe6bc7784cde3779c2163c5e641e1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-372984" class="wp-caption-text">牛乳は、たんぱく質、脂質、炭水化物のほか、不足しがちなカルシウムやミネラルなどが豊富。A２ミルクも含まれる栄養素は変わらない。お腹の不快感でこれまで避けていた人も健康のために取り入れたい</figcaption></figure>
<p><span class="strongInContent">「消化不良を起こす原因の一つと考えられているのが、A１型のβカゼインです。A１型とA２型では、βカゼインを構成する209個のアミノ酸のうち67番目のアミノ酸が異なります。たった一つのアミノ酸の違いなのですが、A１型のβカゼインだけがお腹の不快感につながるといわれています」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="日本人には…"></div>
<div class="expapp-yahoo-paragraph-break"></div>
<p>販売されているほとんどの牛乳は、A１型のβカゼインを含む。しかも日本人は、遺伝子的に乳糖不耐症が起こりやすいと、庫本教授は話す。</p>
<p><span class="strongInContent">「お腹がゆるくなるのは、乳糖だけが原因ではなく、冷たい牛乳を一気に飲む、食べ合わせが悪いなど、他の要因も考えられます。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">しかしながら、一般的に日本人を含めたアジア系の人種の多くが、遺伝子的に乳糖を分解できないことがわかっています。遺伝子だけで判断するならば、ほとんどの日本人が乳糖不耐症予備軍といってもいいでしょう。A１型に比べて消化不良が起こりにくいA２ミルクは、乳糖不耐症などのお腹の症状を緩和させることが期待されています」</span></p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<h3><span class="strongInContent">通常の牛乳は、大きなタンクにA１・A２が混ざった状態</span></h3>
<p>１ℓ200円前後で買える通常の牛乳に比べ、A２ミルクの値段は300～500円程度とやや高い。その理由は、販売に至るまでさまざまな高いハードルをクリアする必要があるからだ。</p>
<figure id="attachment_372987" aria-describedby="caption-attachment-372987" style="width: 3120px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="3b90a94f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/05/fff3973625bd9232af1c2fff05a0f05e.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-372987" class="wp-caption-text">東京農業大学稲花小学校では、３月より週に数回、学校給食で日本A２協会牛乳の提供を開始。食育の一環として、学校給食でもA２ミルクが取り入れられ始めている（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
<p><span class="strongInContent">「通常の牛乳をつくっている牧場では、A１の牛、A１A２の牛、A２の牛が一緒に飼育され、搾った生乳は大きなタンクに集められます。そのためA１型とA２型のミルクが混ざった状態になります。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">100％のA２ミルクをつくるためには、まず牧場のすべての牛の遺伝子を調べ、そのうちA２の遺伝子を持った牛だけを分けて飼育する必要があります。さらに搾った生乳にA１型が混ざってはいけないので、タンクはもちろん、殺菌や充填といった商品に至るまでの工程も分けて製造することになります」</span></p>
<p>このように酪農家にとって苦労がある一方で、A２牛だけを分けて飼育するという点で、飼料や飼育方法を独自に工夫できるメリットがあり、それが味のおいしさや品質向上にもつながっているという。<span class="strongInContent"> </span></p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p><span class="strongInContent">「例えば、遺伝子組み換え作物の飼料を使わない、牛乳の検査を徹底しているといった牧場もあり、それらがこれまでの牛乳とは違った付加価値になっています。このようにこだわりをもってつくられたA２ミルクは、特別感のある“プレミアム牛乳”といえます」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>また、牛乳でお腹を壊しやすい人や、お腹の弱い子どもに飲ませたい人にとっては、本当にA１型の牛乳が混ざっていないかどうかも気がかりなところ。庫本教授は、重井医学研究所（岡山市）と共同で生乳から簡単にA１型・A２型を特定できる検査キットを開発し、一部のA２ミルクの製造工程で取り入れられているという。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="「ちょっと高い」けど売れているA２ミルク"></div>
<div class="expapp-yahoo-paragraph-break"></div>
<h3><span class="strongInContent">「ちょっと高い」けど売れているA２ミルク</span></h3>
<p>これまでA２ミルクは専門店やネット注文でしか購入できなかったが、昨年頃からオーケーストアやライフ、成城石井などのスーパーでも販売を開始。現在、百貨店や食品スーパーで手に入りやすい３つのA２ミルクを紹介する。</p>
<figure id="attachment_372989" aria-describedby="caption-attachment-372989" style="width: 787px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a5569e18"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/05/d855ddc40ec349f7eed132d7f464749b.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-372989" class="wp-caption-text">オーガニック生乳でつくった有機牛乳￥538（1000ml）／カネカ。全国でも希少な有機循環型酪農を実践。豊かな大地で育った牛がつくるオーガニック生乳の風味が特徴</figcaption></figure>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<figure id="attachment_372990" aria-describedby="caption-attachment-372990" style="width: 4896px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f4c596dd"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/05/fd79a06786dce4cec755d2a8f4f42243.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-372990" class="wp-caption-text">日本A２協会牛乳￥389（1000ml）・￥162（200ml）／日本A２ミルク協会。日本A２ミルク協会のオリジナル。A２ミルクの品質管理基準である「A２協会認証制度」の水準を満たしている</figcaption></figure>
<figure id="attachment_372991" aria-describedby="caption-attachment-372991" style="width: 707px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="86d29d01"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/05/0df8c9b7ee52d05ed334bd5ca054e67a.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-372991" class="wp-caption-text">河北潟A２牧場牛乳￥388（1000ml）・￥216（500ml）／ホリ乳業。食の安全や環境保全に取り組む「JGAP認証」を取得した、金沢市のホリ牧場のA２ミルク。A２協会認証で安心して飲める</figcaption></figure>
<p>牛乳にしてはちょっと高い。なのに今、スーパーで売れているというA２ミルク。牛乳が合わないと思っていた人にとっては、お腹が不快になることなく栄養を摂取できるのがうれしい。これまでの牛乳とは異なる“プレミアム牛乳”を、毎日の健康に役立ててみてはどうだろう。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p><span class="strongInContent">庫本高志（くらもと・たかし）</span>　東京農業大学農学部動物科学科教授。京都大学農学部卒業。農学研究科を経て、医学研究科博士課程修了。博士（医学）。国立がんセンター（現：国立がん研究センター）研究所、京都大学大学院医学研究科を経て’18年から現職。’19年からA２牛乳の研究を始める。研究成果を社会実装するために、’22年株式会社エージーティーシーを設立。専門は、動物科学、実験動物学、遺伝学。</p>


編集・ライター。1983年、山形県生まれ。10年間、健康情報誌の編集部で月刊誌・Webメディアの編集に携わったのちフリーランスに。現在はヘルスケア・医療分野などを中心に、医師や専門家の取材、企画、執筆を行う。

釼持陽子

牛乳を飲むとお腹が痛くなる…。牛乳が合わない”と思っている人に朗報となるのが、お腹にやさしい次世代牛乳として注目されている「A２ミルク」だ。

日本人は遺伝子的に牛乳が合わない！？「お腹がゴロゴロしない」次世代牛乳A２ミルクがやっと日本でも

あなたへのオススメ

関連記事