世界からの圧力で退任に追い込まれた JOC会長竹田恒和の無念
3月17日午後3時半、日本オリンピック委員会(JOC)が本部を置く「岸記念体育会館」(渋谷区)の地下駐車場に、黒塗りの高級車が停まった。降りてきたのは、竹田恒和会長(71)その人だ。
再び駐車場に姿を現したのは、それから約4時間後。竹田会長は見送りにきた職員らと談笑してからクルマに乗り込み、自宅へと帰って行った――。
3月19日、今年6月をもって退任することを竹田会長が発表した。竹田会長にはかねてから五輪招致を巡る贈賄に関与した疑惑が指摘されていた。
ただ、五輪関係者の間では、「辞める必要はない」という声もあったようだ。五輪組織委員会理事の高橋治之氏は今年1月、本誌の取材にこう語っていた。高橋氏は元電通専務であり、竹田会長とも昵懇、「招致のキーマン」とも言われる人物だ。
「日本で捜査を受け、贈賄には当たらないという結論がすでに出ている。それなのに、フランスが捜査しているからといって、いまさら騒ぐのはおかしいでしょう。’13年のことをこれから調べたって、(真相が)わかるわけない。竹田会長だって、無実だってことを(1月の)会見ではっきり言えばよかったんだよ」
それでも退任という道を選んだのは、会見で本人が語ったとおり「世間を騒がせた責任」を重く見たからだろう。退任会見の2日前、JOCを出る竹田会長の表情には、無念さが滲んでいるように見えた。
撮影:西圭介