サッカー日本代表シュミット・ダニエル 目標は「攻めるキーパー」

スペシャルインタビュー

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197㎝の長身ゆえ、隣の愛車が小さく見える。「電車に乗るときは、網棚にヒジをかけてます」(シュミット・ダニエル)

「おぉっ! とテンション上がりましたね。直前のリーグ戦でチームの調子がよくて、自分もちょいちょい(シュートを)止めていたので、運がよければ呼ばれるかなという気持ちではいましたけど」

昨年8月、ロシアW杯後に発足した森保一監督率いるサッカー日本代表に初招集されたときの気持ちを、シュミット・ダニエル(27・ベガルタ仙台)はそう振り返った。日本が待望した身長197㎝の大型キーパーは米国イリノイ州の出身。米国人の父と日本人の母を持つ彼は、2歳から宮城県仙台市で育った。

3月下旬の『キリンチャレンジカップ2019』のコロンビア戦、ボリビア戦に臨むメンバーにも名を連ねるなど、代表GKとして定着したシュミット。ここまで代表での出場は2試合だが、1月のアジアカップではグループステージ第3節のウズベキスタン戦でゴール左スミに放たれた際どいシュートを横っ飛びで凌(しの)ぐなど、ポテンシャルの高さを見せた。

「あれは……見栄えはよかったですけど、白状すると(シュートを打たれたときに)ポジショニングが遅れたから、飛ばなきゃいけなくなっただけで、ホントはもう少し簡単に防げたと思います(笑)」

長身ゆえ高さを活(い)かしたハイボールの処理が一番の長所と思われがちだが、実はウリは足元の技術。バックパスを受けても慌てず、パワーを活かしたキックを魅せる。後方からのビルドアップ――攻撃の組み立てに安心感がある。

「世界と戦っていくうえで当然、ハイボールの処理能力は期待されますが、森保さんは後方からのビルドアップ能力も求めていると思います」

日本代表の歴代キーパーと比較しても圧倒的な高さを誇り、現代サッカーのGKに不可欠な足元の技術をも持ち合わせたシュミットは、生まれながらの守護神のように思えるが――実は「わけアリでキーパーになった」と打ち明ける。

「中学まではボランチをやっていたんですよ。ただ、長距離走が苦手でスタミナもなくて、体育の授業でサッカー素人の子にボールを取られて、『もういいや』って一度、サッカーを辞めているんです。それでバレー部に移ったんですが、顧問の先生がめちゃくちゃ怖くて、サッカー部に戻ることに。そしたら……バレーを経験したことで手でボールを扱うのに慣れたのか、GKをやってみたらしっくりきたんです(笑)。本格的にGKに転向したのは高校に入ってからなんです」

「世界に一歩近づいた」

もともとフィールドプレーヤーだっただけに、キックには自信があった。目標に定めたのもフィード(前線への配球)が上手い元オランダ代表GKのファン・デル・サールだった。

「元ボランチの僕としては、マネしやすそうに思えて、勝手に参考にしていました。いま、気になっているのはマンチェスター・シティ(イングランド)でプレーするブラジル代表GKのエデルソン・モラレス。チームとして彼のフィードを武器として活用していますからね。GKから敵陣の最終ラインの裏あたりにいるFWにピタリと照準を定めて蹴るフィードはスゴい。スピードもあるし、あのフィードを使えるとチームは相当楽になる。究極の理想ですが、アトレティコ・マドリー(スペイン)のオブラク(スロベニア代表)みたいなシュートストップができて、エデルソンみたいな配球をする、そんなGKになれたら最高ッスよね!」

いまでこそJ1の仙台で正GKを務めるシュミットだが、プロ入り後は当時J2の熊本や松本にレンタルに出された。常時出場するようになったのは’17年以降だ。「もう27歳。焦りはありますよ」

だが、キーパーとしてのスタートが遅かっただけで、進化のスピードは速い。1月にアジアカップを経験したことで「世界に一歩近づいた」と言う。

「先発出場は1試合だけでしたけど、公式戦に出られたのは大きかった。代表に呼ばれた当初は、海外組の選手のシュートや判断スピードについていけなくて悔しい思いの連続だったんですが、1ヵ月におよぶ遠征が終わるころには慣れていけた。自信もついてきました」

長身でかつ手足も長く、モデルと勘違いされてもおかしくないルックスの持ち主。ハデに見えるが、性格はいたってマイペースだ。

「ピッチではなるべくテンションの上げ下げがないよう心がけています。キーパーがDF陣を怒鳴り散らしているシーンをよく見かけますが、よほどのことがない限りチームメートは一生懸命やるでしょうし、終わったプレーにどうこう言うよりも次のプレーに切り替えたほうがいいはずですから」

両親は英語で会話していた。兄はインターナショナルスクール卒で英語が堪能。だがシュミットは一般校に通っていたため、英語は苦手だという。

「そこはすごく後悔していますね……。この顔で海外遠征に行くと、当たり前のように英語で話しかけられるので、メチャクチャ困ります(笑)」

それでも「スキルアップのために、海外に移籍したい」と即答する。

「スペインもいいですが、理想はイングランドのプレミアリーグ。ドイツのブンデスリーガにも興味があります。ドイツはいいGKが多い。きっと確立したGK論があるんだと思います。年齢的なことを考えれば、すぐにでも行きたい」

2月末に開幕した’19年のJリーグ、仙台は1分け3敗と出遅れた。まずはチームで失点を減らすことから始める。

「身体が大きいだけでも、ある程度ゴールは守れると思うので、あとはフィードの飛距離といった自分なりの武器を磨いていけたら。まだまだ足りないところはありますし、代表のスタメンは簡単じゃないですが、手が届かないわけじゃない。まずは昨日の自分を超えることを意識しています。日々進化すれば、少しずつ近づいていけると思います」

「攻めるキーパー」の進化は、森保ジャパンの進化に直結するのだ。

「キックで攻撃の起点となるGK」は世界の潮流であり、森保監督の目指すサッカーに、シュミット・ダニエルは不可欠なプレイヤーだ
本誌未掲載カット サッカー日本代表シュミット・ダニエル スペシャルインタビュー
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  • 取材・文栗原正夫撮影渡辺航滋

Photo Gallary6

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