<figure id="attachment_375184" aria-describedby="caption-attachment-375184" style="width: 2692px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="27268388"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/05/f58f707c71a754fca41c30d7e1b5b696.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-375184" class="wp-caption-text">訪中の２日目にハルビン工業大学を訪れたプーチン大統領。学生や教員を前に講演し、両国の若者の交流強化を呼びかけた</figcaption></figure>
<p>20年近くにわたり、ロシアの最高権力者の座に就く″皇帝″の足元がついに揺らぎ始めている――。</p>
<p>ロシアのプーチン大統領（71）が通算５期目となる内閣を発足させたのは５月14日のこと。そのわずか２日後には、親友と呼び合う習近平国家主席（70）の待つ中国を訪問。世界に蜜月ぶりを改めてアピールした。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>だが、この″スピード訪中″は「プーチン大統領の焦りの表れ」だと防衛省防衛研究所研究幹事の兵頭慎治氏は見る。</p>
<p><span class="strongInContent">「中国は長期化しているウクライナとの戦争を続けるための命綱となっている。中国をつなぎとめるために、組閣後に慌てて訪中したというのが実情でしょう」</span></p>
<p>国境を接する両国。戦略的に背後をとられたくないロシアにとって同盟関係は不可欠だ。そして経済的にも中国は重要なパートナーとなっている。ＮＡＴＯ諸国の経済制裁により、兵器の製造に必要不可欠な半導体などの電子部品をロシアは中国からの輸入に頼らざるをえないからだ。ドローンをはじめとした軍事と民生の双方で活用できる「デュアルユース品」の輸入も昨年は実に89％が中国からだった。元産経新聞モスクワ支局長で、大和大学教授の佐々木正明氏が語る。</p>
<p><span class="strongInContent">「昨年の中ロ貿易額は約37兆円で、これはロシアの貿易額全体の約３割を占めています。しかし、中国にとってロシアとの貿易額は全体の４％にすぎず、両国は決して対等な関係とは言えない。ロシアの中国依存が顕著になっています」</span></p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>現在のロシア経済の一番の不安要素は、国家歳入の20％近くを占める国営の天然ガス会社・ガスプロムが大幅な赤字を出していることだ。そしてここでも中ロの立場の差が明らかになっている。</p>
<p><span class="strongInContent">「欧米に天然ガスを輸出できなくなった影響が大きく、昨年12月の決算でガスプロムの赤字額は約１兆８００億円にも上りました。現在、最大の販売先は中国ですが、中国がロシアから購入している天然ガスの価格は、国際標準価格から46％も値引かれた額なのです」（筑波大学名誉教授の中村逸郎氏）</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="募る民衆の不信感"></div>
<h2>富裕層の支持が危機的に</h2>
<p>それでも中国との不平等な貿易を続けなければいけないのは、プーチン政権が「経済破綻からの国家崩壊」を恐れているためだ。’90年に国家予算の約３割を国防費に充てたため、生活物資の供給が滞るなど経済政策が失敗して崩壊したソ連の二の舞は避けたいというプーチン大統領の意思が隠れている。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>現在、ロシアはソ連末期と同じく国家予算の約３割が国防費に充てられているが、「組閣人事から、経済死守の意図と戦争長期化の覚悟が読み取れる」と慶應義塾大学教授の廣瀬陽子氏は言う。</p>
<p><span class="strongInContent">「国防相を12年間務めたショイグ氏を交代させ、経済学者のベロウソフ氏を抜擢しました。軍事に充てる予算を効率化させるためでしょう。経済破綻を防ぎつつ、いかに戦争を継続するかを考えなければいけない局面を迎えているのです」</span></p>
<p>直面するのは、経済問題だけではない。３月22日に首都・モスクワ郊外で発生し、145人が犠牲となったテロへの対応を巡り、民衆の不信感が募っているのだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「テロの実行犯とされる過激派組織『イスラム国』は３月上旬からモスクワで準備を始めていました。その動きを察知したアメリカ政府はロシアに対して警告しましたが、プーチン政権は『陰謀だ』と取り合わなかった。テロ発生後もプーチン大統領は事実上、イスラム国の関与を否定し、ウクライナの犯行を示唆する声明を出しています。治安面の失策すらもウクライナの攻撃に結びつける姿勢を民衆は疑問視しています」（前出・佐々木氏）</span></p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>ロシアの発展に貢献してきた富裕層・オリガルヒからも見放される可能性が出てきた。前出の中村氏が続ける。</p>
<p><span class="strongInContent">「現在、オリガルヒがロシア国外で所有している資産が凍結されています。６月にイタリアで予定されているＧ７サミットでは、この資産を売却しウクライナの復興に充てる案が検討される見通しです。これが採択されれば、さらなる求心力低下は避けられない。開戦以来、オリガルヒや将来の経済、政治を担うはずだったエリートの国外脱出に歯止めがかかっていません。人材不足で今後の政権運営が困難になることも危惧されています」</span></p>
<p>強まる中国への依存と、国内に募る不満。プーチン大統領が、強行した戦争のツケを払う時が近づいている。</p>
<figure id="attachment_375183" aria-describedby="caption-attachment-375183" style="width: 2508px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="bca132b3"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/05/4d2eb12987923f591e87bb1c8b7ee193.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-375183" class="wp-caption-text">習近平国家主席（右）との会談後、通訳のみを伴って議論を交わす場面も。夜にも非公式の会談を行い、訪中初日は12時間もの間、ともに過ごした</figcaption></figure>
<p>『FRIDAY』2024年6月7・14日号より</p>


Getty Images　アフロ

プーチン大統領が通算５期目となる内閣を発足し、わずか２日後に習近平国家主席の待つ中国を訪問。蜜月ぶりを改めてアピールしたが、このスピード訪中は"焦りの表れ"だという。″皇帝″の足元がついに揺らぎ始め…

ロシア・プーチン大統領　５期目で聞こえ始めた絶対王国「内部崩壊の足音」

あなたへのオススメ

関連記事