《東京・大泉学園》幹線道路の真ん中を「墓200基」がふさぐ”特殊事情”とは? | FRIDAYデジタル

《東京・大泉学園》幹線道路の真ん中を「墓200基」がふさぐ”特殊事情”とは?

今年5月から一部の工事が始まったが、近隣住民からは「渋滞を生むのでは」と不安の声

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道をふさぐ約200基の墓。終戦後間もない1946年に国が決定した都市計画道路で約240億円の予算が計上されている
道をふさぐ約200基の墓。終戦後間もない1946年に国が決定した都市計画道路で約240億円の予算が計上されている

えっ? 道の真ん中にお墓!?

東京の西武池袋線・大泉学園駅近くには、上の写真のような奇妙な一帯がある。千代田区九段北から練馬区西大泉までをつなぐ19.3㎞の都の幹線道路「放射第7号線」(大半が目白通り)だ。

「東京の外環道路や関越道へのアクセス向上などが期待されています。’06年から都による工事が始まり、道路用地上の約200戸が移転しました。しかし道をふさぐ200基ほどの墓を所有する寺とは合意に至らず、西大泉付近の2㎞だけ未開通区間になっていて……」(都庁関係者)

なぜ、交渉はまとまらないのか。当該の寺の住職が困惑気味に説明する。

「墓は道路にかかる部分以外にも建っています。しかし、都が移転のために払う用地補償費は道路にかかる部分だけ。一部の墓を残しての移転は、管理上の危険性もあり受け入れられません。新たに墓地を建てるには緑地や駐車場を作る必要があるため、補償をもらっても同じ大きさの土地では収まり切らないんです」

都にも事情がある。話すのは、東京都建設局道路建設部街路課の担当者だ。

「道路用地にかからない部分の補償は基本的にはできません。今まで墓地の一部だけが道路用地上にあったケースでは、本堂はそのままにしてお墓を郊外に移転してもらうか、墓地を立体化することもありました。都が費用をどこまで支払うかはケースバイケースですが、用地補償費の基準に基づきながら、建物の機能などを失わないように考慮し、移転するうえで必要となる費用を補償しています」

住民から早期開通を求める要望が相次いだため、都は今年5月から寺の西側に延びる未開通区間で街路建造工事を開始。舗装の仕上げなどを進め一部を開通し、迂回路につなげることも検討するという。しかし、住民からは不安の声も。

「全部がつながらないと、かえって渋滞を生みかねません。実際、現在迂回路として使われている道は朝晩渋滞し大変なんです。私たちは一日でも早い全線開通を望んでいます」(近隣住民)

混迷を深める「墓問題」。不動産鑑定士の冨田建氏はこう指摘する。

「都は制度的に可能な範囲で最大限、寺側に寄り添った対応をすべきです。そもそも都市計画道路には数十年も工事が始まらないものも多く、土地の所有者は自由利用が制限されてしまう。都市計画道路を見直す時期に来ています」

「開かずの道路」全線開通へのメドは、いまだに立っていない。

『FRIDAY』2024年6月7・14日号より

  • 取材・文撮影:形山昌由(ジャーナリスト)

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