子供も、ホームレスも。キャッシュレス先進国デンマークのお金事情

現金決済比率は10%以下! 紙幣と銅貨の製造を外国に委託するデンマーク

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消費税アップをきっかけに、日本でもキャッシュレス化が進もうとしている。プリペイドカードやアプリを使って支払う人が増えてきたとはいえ、まだまだ現金で支払う人が多い日本。

キャッシュレス先進国といわれるデンマークでは、自国通貨“クローネ”の紙幣と硬貨の流通量が減ったことから、すでに硬貨の製造をフィンランドに委託し、紙幣はフランスに委託することになったとか。

キャッシュレス社会とは、どんな社会なのか。デンマークで暮らすウィンザー庸子さんに伝えてもらった。

「世界一幸せな国」ランキング上位の常連国デンマークは、持続可能エネルギーの先進国としても有名。最近では、デンマーク風の暮らし方「ヒュッゲ」が欧米を中心に注目を集めている

子供のお小遣いも“アプリ”にチャージ

デンマークでは、ホットドッグの屋台でも有料公衆トイレでも、ほとんどの支払いがカードで可能なほど、キャッシュレス化が進んでいます。

子供のお小遣いにも“ロメペンゲ”というアプリが使われています(ロメペンゲとはデンマーク語で「お小遣い」の意味)。デンマーク最大の市中銀行ダンスケバンクが、8歳から14歳の子供を対象に開発したもので、子供は “ロメペンゲ”用カードとアプリを取得し、保護者は子供のアカウントにモバイルバンクからお小遣いを送金します。送金されると子供には通知が行き、アプリ内で貯金ができます。

保護者は、1日、1週間または1ヵ月に子供がいくらまで使えるかを設定することができ、保護者がモバイルバンクでの設定で許可した場合にのみ、子どもはアプリ内の貯金口座から、お店などで使えるカードに貯金の一部を移すことができます。また、このカードをインターネット上でも利用可能かの判断も、保護者が選択します。

子供が持つカードには暗証番号があり、お店とATMで利用可能、カードに入っているお金(保護者が許可した金額)以上は使用できません。

子どもは自分のお小遣いや貯金をアプリ内で管理することを学び、保護者はその過程を見守ることができます。また、子どもの希望に応じてルールや利用限度額等を設定でき、子ども自身が管理する範囲を決めることができる点も、現金でのお小遣いにはない利点です。

デンマークでは子供たちもキャッシュレス。写真は、デンマーク皇太子家の双子くんたちの初登校日の様子(2017年)

ホームレスにも「Mobie Pay(モバイル・ペイ)」を

一方、近年のキャッシュレス化によって、社会的弱者にあたる人々が不利益を被ることが発覚しました。

デンマークには「フス・フォービ」という、ホームレスの方を支援するNGOがあります。このNGOに登録している約2600名のホームレスの人たちは、『フス・フォービ』というホームレスの人々の現状など、社会問題を伝える新聞をNGOから安価で購入し、スーパーマーケット前などの街頭で販売して、収入を得ています。

ところが、キャッシュレス化によって、買い物の際に現金を持参しない人が増え、『フス・フォービ』を買って支援したくても購入できないことが多くなり、ホームレスの人たちの収入が減っているという問題が起こりました。

そこで、NGOフス・フォービとダンスケバンクは協働して、フス・フォービに登録しているホームレスが、販売の際の代金受け取りと、収益の引き出し用に、特別の「Mobie Pay(モバイル・ペイ)」番号を付与するプロジェクトを始めました。

「Mobie Pay(モバイル・ペイ)」とは、スマホのアプリから、個人またはお店に、銀行の口座番号を知らせなくても電話番号のみで送金できるサービスで、デンマークで広く普及しています。通常このアカウント開設には、デンマークの銀行に口座を持っていることが条件となり、銀行口座開設には住所や公的な書類などが必要になりますが、このプロジェクトのおかげで、新聞の購入者が「Mobie Pay(モバイル・ペイ)」用の電話番号に送金することができるようになりました。

このように、社会的弱者が、キャッシュレス社会から取り残されることなく、恩恵を受けられる仕組みを構築する取り組みが、デンマークでは始められています。

同じくキャッシュレス先進国のお隣スウェーデンでも、“現金お断り”のお店も珍しくない

デンマークでキャッシュレスが進んだワケ

所得税は所得の半分以上、消費税は25%といったように、納税負担が大きいデンマーク。国民はこの高い税金を自分への福祉として、“必要になったら戻ってくるものだ”という、供託金のような感覚で払っているようです。

そしてデンマークは、王家の人々が1年間に使ったお金の収支報告なども新聞に載るほど経済活動の“透明性”が高く、政治家の汚職なども、世界でもっとも少ない国の一つです。また、「キャッシュレス社会」というのは、個人の経済活動の痕跡があちこちに残り、匿名性がありません。しかしながら、そのような社会的背景もあり、デンマークの人々は自分自身の経済活動がガラス張りになることに慣れているので、キャッシュレス化が進みやすかったのだと思います。

日本の皇室ともゆかりが深いデンマークの王室。デンマークでは、王家の収支報告も新聞に掲載される(2017年6月)

自分がいくら稼いで、どこでなにを買ったかすべてオープンになってしまうことに抵抗がある日本人も多いと思うが、デンマークの人にとって経済活動が透明なのは、子供のころから当たり前。なにしろ王室の経済活動も国民に公開されるというのだから。 

デンマークと並んで、キャッシュレス化が進んでいるスウェーデンでは、10大銀行の全国1400の支店のうち、すでに852か所で現金決済を停止していて、2030年には現金を完全に廃止することが決定しているとか。そのほかの国々でも、キャッシュレス化は加速している。後を追う立場の日本。社会的弱者が不利益を被ることがないよう、これらの国々から学ばなくてはならないことが多そうだ。

ウィンザー庸子さんの「北欧デンマーク観光・プライベートガイド」の案内はコチラ

  • 取材・文ウィンザー庸子

    デンマーク公認ガイド・通訳・コーディネイター。15年前からデンマーク在住。現在、デンマーク人の夫と3人の子どもと暮らしている

  • 写真アフロ

Photo Gallary4

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