<figure id="attachment_376290" aria-describedby="caption-attachment-376290" style="width: 4560px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="8e72d0b5"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/bdabd26ecebe27ad66cad5a30c4a7bed.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-376290" class="wp-caption-text">インタビューに応じる安野さん（撮影：小松寛之）</figcaption></figure>
<h3>スタイリストの育ての親は小泉今日子！？</h3>
<p>俳優の役所広司や松坂慶子、長澤まさみ、満島ひかりらのスタイリストとして活躍する一方で、元フィギュアスケート選手の浅田真央の衣装デザインも担当した。表舞台に立つ人の輝きの陰には、ジュエリーブランド「CASUCA（カスカ）」の主宰を務めるファッションクリエーター安野ともこさん（65）がいた。</p>
<p><span class="strongInContent">「私は最初からスタイリストとして仕事を始めたわけではないんです。声をかけていただいて、これまで経験したこともないことなのに、見様見真似でやらせてもらったことで今があり、スタイリストとして小泉今日子さんに道を切りひらいてもらったと思っています」</span></p>
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<p>実家は芸能界とは縁のない仕事をしていた安野さんが、どのような経緯から数多くの著名人を輝かせる裏方になったのだろうか。</p>
<p>1959年、埼玉県で生まれた安野さんの両親は店の仕事で忙しく、祖母と過ごす時間が多かった。裁縫好きな祖母の周りには、端切れやフェルトなどの手芸材料があふれていたという。</p>
<p><span class="strongInContent">「祖母がフェルトでブローチを作って、洋服や帽子にいつもつけてくれたのがうれしかった」</span></p>
<p>祖母の姿を見て育った安野さんは、いつしか針仕事が好きになっていた。</p>
<p><span class="strongInContent">「針仕事は母より上手になってね。リメイクなど、手作りの楽しさを知ったのはおばあちゃんのおかげかもしれません」</span></p>
<figure id="attachment_376226" aria-describedby="caption-attachment-376226" style="width: 517px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="77921d2d"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/9f8c2ff38d969dfdf8127ffef05c731e.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-376226" class="wp-caption-text">幼少期の安野さん</figcaption></figure>
<figure id="attachment_376227" aria-describedby="caption-attachment-376227" style="width: 531px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="62f12cc8"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/7653f06816dd03aab760331c5de360a0.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-376227" class="wp-caption-text">安野さんの祖母・清水とみさん（写真提供：清水健一さん）</figcaption></figure>
<p>高校時代は、<span class="strongInContent">「早く大人の世界に入りたかった」</span>という。西武百貨店に就職し、ショップを担当。洋服を扱ううちに、ファッションを勉強したくなり、バンタンデザイン研究所に入学。そのころ、現在はイラストレーターであり、エッセイストのこぐれひでこさんがデザインする服の存在を知り、その世界観に魅了され、影響を受けた。行動の人である安野さんは、憧れと熱い意志を抱いてこぐれさんのアトリエの門をたたいた。</p>
<p>ファッションブランド「２CV HIDEKO KOGURE（ドゥーシヴォー ヒデココグレ）」に勤務しながら、いろいろな人脈を育んでいくことになる。ファッション雑誌『Olive』や『an・an』でモデルをしたり、1984年には歌手デビューを果たしたりもした。</p>
<p><span class="strongInContent">「その後はスーパーエディターの秋山道男さんの手伝いをして、コラムを書いて、小さなページで連載などしていたんです」</span></p>
<p>秋山さんは当時、７人組ロックバンド・チェッカーズや小泉今日子のプロデュースをするほかに、編集者やクリエーティブディレクターなど、多領域で活躍していた。安野さんは、秋山さんからさまざまな機会を与えられた。</p>
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<p>秋山さんの下では、季刊誌『活人』で、衣装製作にもかかわった。このころ、写真集の仕事で小泉今日子に出会った。その後、秋山さん企画のCMに小泉が出る時に、友だちと仲良くしゃべっているシーンがあった。画面には映っていないが、その友だち役を務めたのが安野さんだった。</p>
<p><span class="strongInContent">「せっかくいるのだったら、衣装も集めてきてほしい」</span></p>
<p>当時、スタイリストではなかった安野さんは秋山さんの要望に応える形で、似合うと思う衣装を集めた。すると、ある日、<span class="strongInContent">「小泉さんから、衣装を頼んでもいいのでしょうか？　と声を掛けられたんです」。</span></p>
<p>それまでアシスタント経験もなかったため、簡素な携帯用の裁縫道具しか持参していなかった。時には他の人からはさみや道具を借りながらも、一つひとつの仕事を何とか成立させた無我夢中の日々から厚い信頼を寄せられることになった。小泉は『なんてったってアイドル』が大ヒットした直後の20歳前後、安野さんは26歳ごろのことだ。</p>
<figure id="attachment_376219" aria-describedby="caption-attachment-376219" style="width: 734px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ea723745"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/2accacf396e250d4cd9c327a271b4cab.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-376219" class="wp-caption-text">小泉今日子（右）のスタイリストとしてスタートしたころの安野さん（写真：秋山道男）</figcaption></figure>
<div data-friday-nextpage-lead="役所広司、浅田真央とどう出会ったのか"></div>
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<figure id="attachment_376305" aria-describedby="caption-attachment-376305" style="width: 701px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="05d67da5"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/69319888973664ea65886b5653c28369.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-376305" class="wp-caption-text">ソチ五輪で、安野さんが手がけたデザインの衣装で演技する浅田真央（写真：共同通信）</figcaption></figure>
<p>その後、小泉のスタイリストとしての仕事は10年ほど続いた。この経験が他のアーティストや多方面のスタイリストの仕事へ広がっていった。</p>
<p>1994年には、スタイリスト事務所「CORAZON（コラソン）」を設立。ともさかりえ、井川遥、永作博美、持田香織（ELT）、フォークデュオの「ゆず」、小林聡美、長澤まさみ、のちに役所広司や松坂慶子のスタイリングを手掛けていくことになる。</p>
<p>また、’14年に開催されたソチ五輪の際には、フィギュアスケートの浅田真央選手のコスチュームデザインを手がけ、繊細で優美な衣装が話題になった。</p>
<p><span class="strongInContent">「魂は細部に宿る、という言葉がありますよね。大味なものよりも、私の中ではいつも細部が気になるんです。年齢を重ねれば重ねるほど、皆ジュエリーに助けていただきたい気持ちもあるのでしょうか、大ぶりなものを好む方が多い印象がありますが、私は、繊細に輝くものを重ねづけしたほうが、肌がきれいに見えて、ご本人の魅力が増すと感じています」</span></p>
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<p>浅田とはCMの仕事で出会った。その衣装を着た浅田に「競技の時にも着られるかも」と言われ、それがきっかけでコスチュームを手掛けることになったのだった。</p>
<p><span class="strongInContent">「真央さんの場合は、儚い透明感やフワッとしながらもエネルギーにあふれる感じをどう表現するかということを考えました」</span></p>
<p>紫色が好きだという浅田の希望を受けて、ショートプログラム用には、紫系で２種類のデザインを考えた。柔らかさが表現できる絹素材を使い、生地をスミレ色のグラデーションに染め上げ、大小のスパンコールを無数にちりばめたコスチュームは、演技に輝きを添え、見る者の心をつかんだ。</p>
<p><a href="#" data-ident_hash="eb551259"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/eabe77e4db8ff36298854f50a4dd2201.jpg" alt=""></a></p>
<figure id="attachment_376221" aria-describedby="caption-attachment-376221" style="width: 768px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="8242cd0c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/8caa295251f447ee18fdc8c686a155d3.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-376221" class="wp-caption-text">ソチ五輪ショートプログラム用に製作した衣装とデザイン画＝’14年２月（写真：伊島薫）</figcaption></figure>
<p>世界的に話題になった映画『PERFECT DAYS』で主演をつとめた役所広司とは、14年ほどのつきあい。衣装として映画に参加してはいないが、カンヌ国際映画祭やアカデミー賞発表の際にはチームに同行するほどの信頼を得ている間柄だ。</p>
<p>スタイリングをする際には、<span class="strongInContent">「役所さんはとてもセンスのよい方。最終的にはご自分でチョイスされますが、スタイリングではその漂う色気を消さないように、どこかしどけなさが残るように気を配っています」</span>と言う。具体的には、<span class="strongInContent">「同年代の方が好まれるラインよりも、若者が見てもいいな！　と思ってもらえるラインを意識してスタイリングしています」</span>と続けた。</p>
<figure id="attachment_376222" aria-describedby="caption-attachment-376222" style="width: 767px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="3cd1edf0"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/572742ef67d983da02c0f587a4cef9cb-1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-376222" class="wp-caption-text">役所広司とフランス・カンヌで＝’24年５月（写真：安野さん提供）</figcaption></figure>
<p><span class="strongInContent">「スタイリングの際には、その人の持ち味を生かしつつ、より素敵に輝かせられるように願いながらスタイリングしています」</span></p>
<p>スタイリストの仕事は人を輝かせること。人を輝かせるには、観察眼、発想力、チャレンジ精神、流行をとらえる力などが必要。答えのない世界で、その人らしさを失わずに輝かせるセンスを日々、磨いている。</p>
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<div data-friday-nextpage-lead="小泉今日子らと始めたプロジェクト"></div>
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<figure id="attachment_376223" aria-describedby="caption-attachment-376223" style="width: 2048px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b0383a0e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/a0f73b86bdadd3a1b54eeb914b5b4235.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-376223" class="wp-caption-text">「東京ヴィンテージガールズ」のメンバー。左から安野ともこ、小泉今日子、きしくり（写真撮影：土屋貴章）</figcaption></figure>
<h3>「東京ヴィンテージガールズ」プロジェクト始動</h3>
<p>仕事がどんどん広がっていく中、「スタイリストになるきっかけをくれた」小泉とは、仕事で一緒になることはほとんどなかったが、昨年末、再び朗読劇の仕事でオファーをされ、約30年ぶりに濃いつながりが復活した。</p>
<p><span class="strongInContent">「コロナの時期にサステナブルな、アップサイクルのファッションショーを開催したいと考え、配信でやってみました」</span></p>
<p>アップサイクルとは、別の用途に作り替えて付加価値を与えること。安野さんは、まさにSDGsの時代に即した思いを胸に秘め、さらに大々的な開催を構想していた。どうやって、どんなメンバーで、そのファッションショーを実現するか……と、考えを巡らせていた。</p>
<p>音楽プロデューサーでDJの高木完さんにその話をした時、「いいね！　変わってないね！　ヴィンテージガールズだね」という高木さんからもらった一言が、動き始めるきっかけになった。</p>
<p>高木さんは、「モデルやスタッフは、1980年代に活躍していた伝説の女性たちだとかっこいいんじゃない」と提案。二人は意気投合。早速、アーティストの小泉今日子に声をかけたという。</p>
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<p>具体的に動き出したのは、今年１月。安野さんは元日に発生した能登半島地震の被災地支援活動で支援物資を集め、その仕分け作業を小泉と画家のきしくりさんが手伝っていた。</p>
<p><span class="strongInContent">「シニア世代が、ますます元気に楽しく余生を過ごしていくための促進剤になれたら。いきなりファッションショーはできないけれど、まずはこの３人で社会貢献につながることしない？」</span></p>
<p>二人は安野さんの提案に賛同。こうして「東京ヴィンテージガールズ」が結成された。</p>
<p>まずはYouTube配信をすることからプロジェクトがスタートし、CASUCA表参道本店で、売上金の一部を能登半島地震の被災地や中東のガザ地区へ送るチャリティーフリマを開催した。</p>
<h3>大切にしている言葉</h3>
<p><span class="strongInContent">「私の今までは、すべて一言声をかけてもらったところから始まっていると思うんです。事の始まりは覚えていたいなって……。ですから、その一言声をかけてもらったということに感謝を忘れないでいることを意味する『一言芳恩』という言葉を大切にしています」</span></p>
<p>その言葉通りに生きてきたからこそ、多くの人たちからの信頼を得て、みんなに愛されてきたのだろう。</p>
<p>自らが主宰するジュエリーブランドが、店舗を６月に表参道から目黒に移し、「CASUCA HISTORIA（カスカ イストリア）」として、10日にオープンした。その記念として作ったジュエリーのモチーフは、「ブルーブッシュ」。表参道本店のシンボルツリーからイメージしたという。すべての人やモノへの感謝の気持ちを忘れない安野さんの姿がここにも見てとれる。</p>
<p>目黒の地、歴史ある洋館で、新たにどんな物語が生まれていくか、安野さんの人を輝かせるための挑戦はこれからも続く。（文中敬称略）</p>
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<figure id="attachment_376228" aria-describedby="caption-attachment-376228" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="52494b99"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/c0235c4d984cd794a82def31d0ee20a5.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-376228" class="wp-caption-text">新作ブルーブッシュ（写真：安野さん提供）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_376229" aria-describedby="caption-attachment-376229" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="8b6e81ca"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/2a1508d6cd94dac38c25e62a2a5585d8.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-376229" class="wp-caption-text">表参道本店の前に置いていたブルーブッシュ</figcaption></figure>
<p><a href="https://casuca.jp/">◆CASUCA（カスカ）公式HP</a></p>
<figure id="attachment_376293" aria-describedby="caption-attachment-376293" style="width: 1000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="e065d925"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/220381f5374d1e4b8f5e2496595da6e3.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-376293" class="wp-caption-text">目黒にある新店舗で</figcaption></figure>
<p>【プロフィール】</p>
<p><a href="#" data-ident_hash="9e282fbd"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/7d85b1914a5d88c9645416516a72c4e2.jpg" alt=""></a></p>
<p>1959年、埼玉県生まれ。スタイリスト、衣装デザイナー、ジュエリーデザイナー、スタイリスト事務所CORAZON／ジュエリーブランドCASUCA主宰。</p>
<div class="expapp-no-provided-scope expapp-no-provided-scope-end"></div>


平松利津子

小松寛之（１、12、13枚目）

俳優の役所広司のスタイリスト、元フィギュアスケート選手の浅田真央の衣装デザインを担当した女性は他の多くの著名人も陰で輝かせてきた。多種多彩なつながりを得た彼女には大切にしている信条があった。


役所広司、浅田真央……多数の著名人を輝かせたファッションクリエーターが明かす「人生の輝かせ方」

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