「もしかして私、発達障害?」悩みを抱える当事者の告白

『発達障害グレーゾーン』の著者・姫野桂さん特別寄稿

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昨年12月末、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)を刊行した。ありがたいことに、発売後約1ヵ月で4刷りになるほど話題作となっている。この本を発売してから約3ヵ月が経過した。「発達障害グレーゾーン」をネット上で検索してみると、Twitterのアカウント名やプロフィール欄に「発達障害グレーゾーン」と表明している人が見受けられ、この言葉が今までより浸透したよう実感している。そこで今回は、発売後の発達障害グレーゾーンの現状を探ってみた。

と、その前にまず、発達障害について軽く説明したい。発達障害とは、生まれつきの脳の特性の偏りで、できることとできないことの差が大きな障害であり、治ることはない。主に障害の種類は以下の3つ。

ADHD(注意欠陥・多動性障害)・・・不注意が多く忘れ物、ケアレスミスが多かったり、衝動的な言動が多いためトラブルにつながる。

ASD(自閉スペクトラム症)・・・言葉の裏を読めずそのまま受け止めてしまったり、比喩や冗談が通じなかったりと、コミュニケーションに問題が生じる。また、特定の分野に異常なほどのこだわりを持っているケースもある(電車の時刻表や世界地図を全て正確に覚えているなど)

LD(学習障害)・・・知的な問題がないにもかかわらず、読み書きや簡単な計算に困難が生じる。

発達障害の症状はグラデーション状であり「ここから先が発達障害でここまでが健常者」という線引きがない。だから、発達障害を疑って医療機関を受診しても「傾向は見られるけど診断までは降りない」というグレーゾーン層が生まれる。また、医師によっても見解が異なるケースが多く、何軒かクリニックを渡り歩いた末、「発達障害」の診断をもらったという当事者もいた。

ちなみに、拙著『発達障害グレーゾーン』の中では「傾向は見られるものの診断は降りなかった」「発達障害らしき症状はあるけど受診はしていない」層をグレーと定義している。

さて、グレーゾーンという言葉を生み出したことで、社会に影響を与えた例を二点ご紹介したい。まず、それまでは都内でしか開催されていなかったグレーゾーンの当事者会が関西でも第一回目が開催されたことだ。発達障害グレーゾーンに特化した当事者会は、これまではOMgray事務局(『発達障害グレーゾーン』の特別協力団体)が開催する会だけだった。OMgray事務局が主催する会は昨年立ち上がり、約1年ほどの間に200人以上が参加してきた。

そんな発達障害グレーゾーン向けの当事者会が、今では関西にも普及している。関西でのグレーゾーンの当事者会を主催した、ハンドルネーム・はるまきさんに第一回目の模様をうかがった。

「参加者は11名でした。年齢層は20〜30代、40代と思われる方もおり、世代はそれぞれでした。皆さんから次々と発達障害グレーゾーンならではの悩みが語られていきました。『振る舞いが社交的なので仕事ができそうに思われるが、実際は人よりできなくてがっかりされる』『遺伝するかもしれないので子どもを生むか悩む』『悩みを打ち明けてもよくあることだと言われる』『自分の困りごとが障害なのか、性格を障害のせいにしているのかわからなくなる』といった、みなさん様々な悩みを抱えてらっしゃいました。置かれている環境も違うので、グレーゾーンの受け止め方も人それぞれだと感じました」

はるまきさんは当初、自分もグレーゾーンなので軽い気持ちで会を開催したところ、思った以上に反応があって驚いたとのこと。また、はるまきさん自身は生きづらさに説明がついてスッキリした反面、障害という言葉を重く感じることがあるという。今後も定期的に会を続けていきたいとのこと。

続いてご紹介するのは、発達障害グレーゾーン当事者で社会福祉士の、ハンドルネーム・とむさん。彼女はグレーゾーンYouTuberとしてYouTubeで情報を発信している。人間関係の構築に苦労した過去の話や、衝動性の特性から衝動買いを抑止する工夫といったことまで、役立つ情報を配信している。

とむさんは幼少期から片付けが苦手で忘れ物も多かった。そして、社会人になってからは仕事についていけないだけでなく、周りとうまくコミュニケーションが取れず二次障害でうつを発症し休職。療養中に出会ったのがYouTubeと拙著『発達障害グレーゾーン』だった。そして、YouTubeを通してメッセージを発信することを決めた。

「当初、周りからは『YouTubeで配信することは負担ではないのか?』と反対されました。今までの自分なら諦めていたかもしれませんが、私の体験談を通じて一人でも多くの当事者や関係者へメッセージを届けたいんです。反対していた友人や家族も、今は応援してくれています。それまではADHDの特性が出るたび『自分はダメだ』と落ち込んでいたのですが、情報を発信することで自分の特性を振り返って受け入れることができ、前向きな姿勢へと変化しています。心のこもったメッセージをいただくこともあり、自分の人生には仲間がいるという、うれしい発見がありました」(とむさん)

視聴者からは「当事者の体験談や工夫について触れられる動画を待っていました!」「私も同じ症状がありますが、深刻になり過ぎず生きたいと思いました」といった肯定的な意見が多いという。

しかし、中には「発達障害を持つとつらい人生を送ってしまう」「遺伝の可能性があるので、発達障害者は出産を控えたほうがいい」といった悲しい感想もあると、とむさんは言う。また、「発達障害とグレーゾーンは違うので一緒にしないでほしい」という意見もあるが、「医療の面では確かに違うかもしれませんが、生きづらさを抱えている点では共通しているので、お互いの考えを共有し、生きやすい工夫を作っていくことが大切だと感じています」と語る。

とむさんは動画を作成するにあたり、実に細かな台本と資料、そして動画編集のためのマニュアルを作成している。また、「ゆっくり話す」「ここは気持ち早めに読む」といった手書メモの入った台本も見せてくれた。ここまで丁寧に作られた動画だからこそ、当事者やその関係者、また当事者以外の人にもその熱い想いが届くのだろう。

グレーゾーンの会の開催や発達障害グレーゾーンYouTuberなどの登場からわかるよう、現在「グレーゾーン」という言葉が徐々に広まりつつある。数年前からはLGBTの問題が多様性の一つとして話題となっているが、発達障害及びグレーゾーンもそれと同じように今後はもっと理解が深まり、困りごと解決の緒が見えてくるのではないだろうか。

  • 姫野桂

    フリーライター。1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをし、編集業務を学ぶ。卒業後は一般企業に就職。25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やウェブなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)趣味はサウナと読書、飲酒。

  • 写真アフロ

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