中森 明夫

【ひとりKinKi Kidsとの呼び声も】滝沢秀明を「小さなジャニーさん」にした衝撃の生い立ち

【KinKi Kidsの行く末】ジャニー喜多川の魂が『硝子の少年』とともに砕け散る日

欲望のジャニーズ論

<figure id="attachment_379674" aria-describedby="caption-attachment-379674" style="width: 766px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="29416ebc"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/705242863cc2cd3bcee7b3e348feaaac.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-379674" class="wp-caption-text">今年、Number_iのメンバーは初めて『Coachella』の舞台に立った</figcaption></figure>
<p>４月15日、世界最大級の音楽フェスティバル『Coachella（コーチェラ）』のステージに３人の日本人青年が立った。</p>
<p><span class="strongInContent">「We are Number_i !」</span></p>
<p>そう叫ぶと、挑発的なラップのスタイルから激しいダンスナンバーへ。会場が大いに沸く。</p>
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<p>圧巻のパフォーマンスだった。</p>
<p>歴史的瞬間を見た、と思った。</p>
<p>あの人は、どう見ただろうか？</p>
<p>コーチェラはアメリカ・カリフォルニア州の南部に広がる大平原である。同じカリフォルニア州の西海岸、ロサンゼルスで93年前に産声を上げた、あの人。John Hiromu Kitagawa……そう、ジャニー喜多川である。</p>
<p>日本の芸能界を変革した伝説の男だ。誰もがその名前を知っているのに、誰もその姿を見たことがない。遂に一度もテレビ画面に出なかった。しかし、生涯ただ一度だけラジオ番組に出演している（’15年１月放送『蜷川幸雄のクロスオーバートーク』NHKラジオ）。</p>
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<p>ジャニーは旧知の蜷川幸雄を相手に気さくに語っている。そうして冒頭、一つの曲をリクエストした。ナレーターが紹介する。</p>
<p><span class="strongInContent">――ここでジャニーさんの思い出の曲をお届けしましょう。世界各国に多くのファンを擁するスターを抱えるジャニーズ事務所ですが、50年前にも全米１位を獲得したかもしれない１曲があったそうです。&#8217;64年にレコード・デビューしたジャニーズ事務所の初代アイドル・ジャニーズは２年後の&#8217;66年に本格的なダンスレッスンをするためアメリカに渡ります。その時、ジャニーさんの友人である、ドン・アドリシとディック・アドリシ兄弟からジャニーズが歌ってはどうか、と彼らが作った曲を渡されます。その曲を聴いた瞬間、ジャニーさんは「絶対、売れる！」と確信したそうですが、結局、話が頓挫し、翌年、別のグループが発表します。それが、アソシエーションが歌った『Never My Love』。全米１位を獲得した曲です。</span></p>
<p>そこでジャニー喜多川の発言が紹介された。</p>
<p><span class="strongInContent">「本当はこれ、ジャニーズの曲なんだよ。ジャニーズが全米１位になっていたかもしれない曲」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="ジャニー喜多川の「ルーツ」"></div>
<h2>視線の先には「故国」アメリカが……</h2>
<figure id="attachment_380655" aria-describedby="caption-attachment-380655" style="width: 1417px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="df0ab725"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/600c80c957d9c26bd03180aa8b09072a.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-380655" class="wp-caption-text">ジャニー喜多川の視線は常にアメリカを向いていた</figcaption></figure>
<p>もしそうだったら、どうなっていただろう？　歴史の大いなる「if」だ。</p>
<p>『Never My Love』は、その後、フォーリーブス（&#8217;72年）、あおい輝彦（&#8217;77年）、少年隊（&#8217;96年）らによってカバーされている。ジャニー喜多川にとって、生涯の桎梏となった曲なのだ。ことに’13年、A.B.C-Zによってカバーされたそれは、格別のものであろう。</p>
<p>初代ジャニーズの誕生50年を記念した舞台『ジャニーズ伝説』でA.B.C-Zがジャニーズに扮して歌った曲なのだ。時にジャニー喜多川、82歳。死の５年前にして、彼は半世紀も昔の「青春の夢」に回帰しようとしていた。</p>
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<p>ジャニー喜多川の87年の生涯とは、何だったのか？　彼はいったい、どこへ行こうとしていたのだろう？　音楽家で批評家の大谷能生はこんな発言をしている（速水健朗・矢野利裕共著『ジャニ研！』＜原書房＞、’12年刊）。</p>
<p><span class="strongInContent">〈それはジャニーさんが外国人だから。つまりそもそも日本に根付く気がない。恐らく未だに彼は日本のことを外国、もっと言うとアメリカの植民地だと思っている。ジャパンは彼にとってファンタジックなおとぎの国であって、いずれは夢から覚めてアメリカに帰らなくてはならない、と思っているんじゃないだろうか（笑）〉</span></p>
<p>ジャニー喜多川は、アメリカに帰らなくてはならない！　これは暗示的な言葉である。結果的に、そうはならなかった。’19年７月、87歳で死去。東京ドームで盛大なお別れ会が開かれ、さながら「国民的に」追悼された。遂に故国アメリカへと帰還することなく、遠い日本の地で永遠の眠りについたのだ。</p>
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<p>その後、いったい何が起こったか？かつての偉大なるレジェンドは、「人類史上最悪の性加害者」と指弾されている。そうして、遂にジャニーズ事務所は消滅するに至ったのだ。ジャニー喜多川が、その生涯の最後にデビューさせたグループ――。それが、King &amp; Princeである。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="平野紫耀は「ジャニーさんごめんねー！」"></div>
<h2>「かなわぬ愛」の相手とは</h2>
<figure id="attachment_380663" aria-describedby="caption-attachment-380663" style="width: 1000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="94fcbed7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/31795ae8b4d697ee5317eece6e262dd6.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-380663" class="wp-caption-text">ジャニー喜多川の遺影を手にする滝沢</figcaption></figure>
<p>’15年春に６人組で結成され、’18年春に『シンデレラガール』でデビューした。メンバーの一人、岩橋玄樹は長期休養の末に脱退する。ジャニー喜多川の死後、岸優太、平野紫耀、神宮寺勇太の３人もグループを離れた。なぜだろう？</p>
<p>メンバーらが海外で活躍したいという夢を持っていたが、事務所サイドによって阻まれたからだといわれている。平野紫耀は退所直前に、最後の公式ブログでこう記した。</p>
<p><span class="strongInContent">〈ジャニーさんごめんねー！　目標届かなかった！！　ただできないと言われたら仕方がない！！！　もし天国で会ったら怒られるんだろうなー笑〉</span></p>
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<p>しかし、King &amp; Princeを脱退してジャニーズ事務所を離れた３人は、後に合流して他の事務所からデビューを果たす。それが、Number_iだ。</p>
<p>デビュー曲『GOAT』のMVは公開３日で1000万回再生、世界１位を獲得した。iTunesのヒップホップチャートでも、全米トップに輝く。’60年代半ば、初代ジャニーズが歌って全米１位になったかもしれない曲、『Never My Love』。その邦題は、〈かなわぬ恋〉と訳されている。ジャニー喜多川にとって〈かなわぬ恋〉の相手とは、そう、アメリカなのだ。</p>
<p>しかし、それから半世紀あまりを経て、ジャニーの遺伝子を継ぐかつてのKing &amp; Prince、後のNumber_iの３人の若者たちが、遂に〈かなわぬ恋〉をかなえたのだ。そう、ジャニー喜多川の故国アメリカ、生誕の地・カリフォルニア州の輝くステージに立って。誰がそれを実現させたのだろう？</p>
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<p>そうだ、あの男だ。５年前の葬儀の日、霊柩車のフロント助手席に座り、ジャニー喜多川の遺影をしっかりと胸に抱いていた。</p>
<p>――滝沢秀明である。</p>
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<p>次の記事『<a href="https://friday.kodansha.co.jp/article/379213">【ひとりKinKi Kidsとの呼び声も】滝沢秀明を「小さなジャニーさん」にした衝撃の生い立ち</a>』では、滝沢秀明が東山紀之、KinKi Kidsらといった先輩アイドルらの特性をどう受け継いでいったのか詳報する。</p>
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中森明夫

中村和彦、原一平、近藤裕介、結束武郎

4月15日、世界最大級の音楽フェスティバル『Coachella(コーチェラ)』のステージにNumber_iが立った。これは、故・ジャニー喜多川がなしえようとして実現できなかったことだ。

【ジャニーズを全米１位に…】死から５年…滝沢秀明が実現したジャニー喜多川の「かなわぬ恋」

連載記事

【KinKi Kidsの行く末】ジャニー喜多川の魂が『硝子の少年』とともに砕け散る日

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