漫画『わたし、いい人やめました』が働く女子の共感を集めるワケ | FRIDAYデジタル

漫画『わたし、いい人やめました』が働く女子の共感を集めるワケ

【①・②話無料試し読み】著者・カマンベール☆はる坊さんに聞く、「いい人」をやめてみて解ったこと

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『ここで言ういい人とは、人格者としてのいい人でなく、社会規範を気にしすぎる人のことです』

こんな注釈から始まる『わたし、いい人やめました』は、そのタイトル通り、「いい人」をやめるという決意をした著者・カマンベール☆はる坊さんによる実験的エッセイ漫画だ。

「いい人」をやめるに至った経緯や、実際に「いい人」をやめてみてどう変わったかが綴られた本作は、SNSで多くの人々の共感を呼び、アラサー向け人気女性誌「BAILA(バイラ)」2月号でも特集が組まれるなど大きな注目を集めている。

『わたし、いい人やめました』①・②話を今すぐ読む!

「もともと、沢山の人に読んでもらいたいというよりは、『私と似ている人に届けばいい』と思って描いたものなので、バズったりしなくていいけど『その人達には絶対届けなきゃ』と思っていました。連載が始まったのも、最初の担当さんがTwitterで私が呟いていた愚痴ツイートを見ていて、『ああいう感じのやりませんか?』と提案してくださったのがきっかけだったので……。だから本当に『愚痴』なんですよ、やっていることは(笑)。それが、想像以上にツイッターで反応があったんです。10話が公開された時には『何にも変わってないじゃん!』ってすごく怒ってきた方もいたりして。確かにそう捉える人もいるな、もっとスッキリする方法もある、と自分でも思って、単行本で別バージョンエンドを描き下ろしたりもしたんです。こういう風にいろんな方の意見が聞けたのは、ウェブでスタートして良かったと思った点ですね」(著者・カマンベール☆はる坊さん 以下「はる坊」さん)

なんとなく「うまくやれそうだから」という理由でもめ事を避け、穏やかにスルスル生きてきたというはる坊さん。これからもずっと、うまくやっていけるんだろうなと思いながら会社員として働いてきたが、ある時職場の飲み会であったショッキングな出来事をきっかけに、生まれて初めて「いい人」のレールを外れてみる――というエピソードから本作はスタートする。

ここから、はる坊さんの「いい人をやめてみる」毎日が始まるわけだが、本作は決して単なる「愚痴」だけに留まらない。はる坊さん自身がいったいどんなやり方で「いい人」な自分と向き合いどう対処していったのか、それによってどんな変化があったのか、というプロセスが、はる坊さん自身の体験を交え、非常に理性的に語られていくのである。複雑な心理を分析し、どうしたら解決できるのかを探り、実践してみるその過程と結果を描く本作は、まさしく“実験的エッセイ漫画”だ。

「本作で描いたことは、全部『言えばいいじゃん』で終わっちゃう話かもしれないんですけど、そう思えるまでには大きな壁があるんですよね。『言えばいいのに言えない自分』っていうのをちゃんと見つめ、考えなくちゃいけないっていうことに気づいて、その壁を乗り越えるまでのプロセスを描きました。描くことによって客観的に見えてきて、私自身も気持ちのデトックスが出来たし、『気を使ってマイルドな言葉を使うと、余計こじれるんだな』など、沢山の気づきがありました」

「頭にくることを言われたのに、場の空気を読んで笑ってやり過ごしてしまった」「モヤッとした気持ちをどう解消していいか解らず、ずっと引きずってしまう」……こんな経験を1回でもしたことのある人にとって、はる坊さんの実験記には目から鱗な部分が多いのではないかと思う。

特に作中に出てくる「呪いのラップ」は、ご機嫌なビートに乗せた自作のラップ(もちろん韻も踏んでいる)によって恨みや負の感情を思いっきり吐き出し、創作物に昇華するという斬新なモヤモヤ解消法だ。

本邦初公開となる、カマンベール☆はる坊さん直筆の「呪いのラップ」完全版。ほとばしる“激おこ”な気持ちを、HIP HOPのビートに乗せて思いっきり紙面に叩きつける

「私はたまたまラップだったんですが、『感情を出す』方法は人それぞれなんでも良いと思うんです。想いを伝えたり、怒ったりしなきゃいけない時、その人が感情を乗せやすい言葉ややり方でやればいいと思います。

2話でも書きましたが、私には『うまく怒れない』という悩みがある一方、旦那は“不機嫌”をすごく解りやすく表に出してくるタイプだったんです。不機嫌で人をコントロールしちゃいけないっていうことを解っていなくて、頑なに謝らない。でも、この漫画を描くうちに『そうじゃない、そうは思わない』っていう自分の考えや、言いたいことがハッキリ言えるようになり、結果夫婦仲が良くなったのが本当にうれしかったです」

本書が素晴らしいと思うのは、決して「いい人をやめるべき!」という主張の作品でない点だ。あとがきでも語られているが、「あくまで自分がやってみたらこうだったという話」であって、「いい人」のことを否定していない。作中で描かれる、はる坊さんに対して様々な暴言を吐いていくる相手ですら、完全な「悪者」としては描かれていないのだ。

「単純に、描くうえのマナーとして『絶対に本人に迷惑がかからないように描く』って思ってるのもあるんですが、なるべく『この人だけが悪い』ってならないように描いています。向こうだって、あちらの正しさで生きてますから」

と、言葉を真剣に選びながらこう言うカマンベール☆はる坊さんに、思わず「優しいですよね」と筆者が本書を読んでずっと思っていたことを口にすると、「そうですか?  自分ではあんまりそうは思わないんですけど」と驚かれたあと、「いやぁでも、優しい人になりたいですねぇ……」としみじみ頷く姿に人柄がにじみ出る。

会社員として働き、友人たちと飲み会で語り合い、時にはSNSで愚痴を吐き出しつつ人間関係に悩むはる坊さんの姿は、今を生きる私たちアラサー女子となんら変わらない。「自分と似た人に届いてほしい」とはる坊さんは言っていたが、同じような悩みを抱えた人は勿論、そうでない人にだって是非読んでみてほしい。


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①・②話試し読み公開中! ↓

『わたし、いい人やめました』①・②話

  • 取材・文大門磨央

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