いま高校野球改革が求められる理由 「球数問題」を考える

元メジャーリーガー長谷川滋利が考える高校野球のあるべき姿

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夏の大会では、炎天下に連投が重なり投手にはかなりの負荷がかかっている

第91回選抜高校野球大会、春のセンバツもいよいよクライマックスを迎えます。

今大会、先発投手の球数と継投を中心にテレビ観戦をさせてもらいましたが、手元にあるデータでは1回戦16試合32校の先発投手で、100球を超えた選手が26人。完投を果たした投手が19人、そのうち6投手は延長戦も投げ抜いています。中には170球を投げた投手もいました。プロでもそんな数は投げないのにまだ身体を作っている途上の16歳や17歳が酷使されている現状は目に余ります。

継投を行ったチームも若干、ありましたが、それは先発が打ち込まれたり、乱打戦になったゲームが多く「選手を酷使しない」「投手の肩や肘を守る」という観点での投手交代は、僕の目にはほとんどないように映りました。

これは深く高校野球に根ざしてしまっている深刻な問題です。

そこに一石を投じるべく、昨年12月に新潟県高校野球連盟が1試合につき1投手の上限を「100球を超えたイニングまで」と定める「球数制限」を導入していく動きを見せました。これは日本球界にとって大きな意味を持つ1歩です。

しかし、早ければこの春の県大会から試行される予定だったのですが、日本高等学校野球連盟(高野連)が2月の理事会で「全国で足並みをそろえて検討すべき」と新潟協会に再考を要請。結局、この春の球数制限は見送りとなりました。

個人的にはとても残念な推移ですが、そのような動きがあり、この問題が俎上に乗ること自体はポジティブなことだと捉えています。

高野連はその後、ロッテやメジャーでも活躍した早稲田大学の小宮山悟監督や、ソフトボール女子の元日本代表監督の宇津木妙子さん、新潟県高野連の富樫信浩会長など13人を選んで有識者会議を開くとしています。選手の育成や将来を第一にした有意義な話し合いになってくれることを願います。

そしてそこで大切なのは大きなビジョンで高校野球が語られることです。

例えば、100球の制限を設けたとします。

しかし、現在の勝利至上主義が顕著な高校野球では、待球作戦は当然、カット打法などの小手先の技術が優先されてしまうリスクが大きいと思われます。おのずと初球から思い切りのいいバッティングをするスラッガーは高校では育たなくなりますし、何よりもファウルや四球ばかりを狙う攻防では野球本来の面白さが損なわれてしまいます。

もし球数制限という形を取るのであれば、そのあたりをクリアにするルールを設定しないといけません。イニング制限にするのも一つの手でしょう。そのためには連投を防がないといけない。

あるいは、公式戦は週末のみの開催にするとか、いっそリーグ戦への変更を視野に入れるなど、100年を超える伝統を持つ高校野球ですから、アイデアと可能性はいくらでもあると思います。そういう意味で大きなビジョンを持って、良い改善につながる対策が求められています。

いずれにしても日本の高校野球は一発勝負の色が強いというか、一球入魂を都合よく解釈しているきらいがあります。トーナメント特有のスリルは醍醐味のひとつなのでしょうが、それは育成年代でなくても十分に堪能できますし、そのスリルと選手の将来を天秤にかけていいはずがありません。

また、「すべての選手がプロに行くわけではない」との反論もあるかもしれませんが、逆に言えば「プロに行かない人だったら肘や肩を故障してもいいのか」と僕は思います。実際、プロに行っていないですが肩が上がらないまま、肘が十分に曲がらないまま社会生活を過ごしている元高校球児を僕は何人も知っています。

そんな高校野球の犠牲者をこの先さらに出さないためにも、球数問題だけに限らず、ファンの皆さんが興味を持って高校野球のあり方を考えてくれること、高野連の方針をしっかり見守ってくれることが何よりも大切です。

選抜が終わってまもなく、4月下旬に第一回の有識者委員会が開かれる予定です。そこで交わされる意見にまずは耳を傾けてみましょう。

  • 長谷川滋利

    1968年8月1日兵庫県加古川市生まれ。東洋大姫路高校で春夏甲子園に出場。立命館大学を経て1991年ドラフト1位でオリックス・ブルーウェーブに入団。初年度から12勝を挙げ、新人賞を獲得した。1997年、金銭トレードでアナハイム・エンゼルス(現在のロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム)に移籍。2002年シアトル・マリナーズに移り、2006年現役引退

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