卑劣な手口が明らかに これが「アポ電詐欺」犯行マニュアルだ!
マニュアルは水溶紙に書かれ、電話の横には常にバケツが用意されている
「アポ電詐欺グループのマニュアルは、手書きが多い。パソコンで打ったのでは作成履歴が残ってしまうからね。しかも、水溶紙に書き、電話の横に水の入ったバケツを用意しておいて、何かあった場合はすぐに溶かしてしまう。このマニュアルも、元は水溶性の紙に書いてあったものをコピーした」
詐欺グループと接点がある暴力団関係者のA氏が明かす。
2月28日、東京・江東区の自宅マンションで加藤邦子さん(80)が殺害された。強盗殺人容疑で逮捕された小松園竜飛(こまつぞのたつみ)容疑者(27)ら3人組は、加藤さん宅に現金があることを電話で確かめた上で押し入る「アポ電」強盗だったことで注目を浴びている。「アポ電」という言葉は盛んに報じられているが、その内容は一体どのようなものなのだろう。本誌は、ある詐欺グループがアポ電に使用している「犯行マニュアル」を入手。そこには被害者との電話応対が詳しく書かれていた。
【こちら○○銀行犯罪対策課の□□です。××さんのお電話で間違いないでしょうか(本人確認!! 名前の漢字、住所、生年月日など)。△月△日付で××さんの銀行口座が凍結の恐れがございます。
(間を空ける。相手:え? なんで?)
××さんの銀行口座が流出している可能性しか考えられませんね!!(強く押す)】
銀行員を装って電話をかけ、「口座が凍結される」と嘘をつく。注意する点や強調する点が細かく挙げてある。
【今すぐ預金を引き出して対策を取っていただきたく……(すべての銀行、信金、ゆうちょなどの確認)。それでは私の方でどの口座が流出しているのか確認いたしますので、電話を切らずにお待ちいただけますか(パソコンをわざとたたく)】
作業音まで入れて相手に信用させ、いよいよ本題へと話は移る。
【ご自宅に金庫など現金を置いておける場所はありますでしょうか?】
このような質問を繰り返しながら、現金の保管場所がどこか聞き出すのだ。
「連日、アポ電の報道が流れているため、正体不明の電話は警戒される。だから相手に振り込め詐欺を連想させないことが重要だ。マニュアル通りにやれば、通報されないことも多いと聞いた」(前出・A氏)
元警視庁刑事・吉川祐二氏が話す。
「こうしたマニュアルが外部に流出するのは非常に珍しい。一見すると走り書きで雑な印象を持ってしまうかもしれませんが、作り込まれた、実に巧妙なマニュアルです。ゴチャゴチャして見えるのは、おそらく追記を重ねているからだと思います。詐欺をしながら、出てきた改善点、効果的な言い回しなど、フィードバックをしているのでしょう」
今では、詐欺グループは拠点を設けずキャンピングカーで常に移動しながら電話をかけるケースが多いという。犯罪者たちの手口は巧妙化する一方。それに対抗するためには、彼らの手口を曝(さら)して騙されないようにするほかない。


撮影:蓮尾真司(1枚目写真)、結束武郎(2枚目)