’75年、三重県生まれ。『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」』で第９回開高健ノンフィクション賞を受賞。最新刊は『ルポ　国際ロマンス詐欺』。ウクライナ戦争など世界各地で取材活動を行う

水谷 竹秀

<p><span class="strongInContent">〈日本を震撼させた『ルフィ』などを名乗る特殊詐欺グループによる広域強盗事件。主犯格の渡辺優樹容疑者らが日本に送還されてから1年半が経過したが、現地には今もなお、その残党が蠢いている。取材を通して見えてきたのは、「逃亡斡旋業者」なる謎の男の存在と、東南アジアが犯行グループの巣窟となり続けている実態だった〉</span></p>
<figure id="attachment_383599" aria-describedby="caption-attachment-383599" style="width: 628px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="02fe1648"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/a16fe58ac7f7c5cbc6c01ea15dc0b345.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-383599" class="wp-caption-text">現地当局の捜査員らに取り押さえられる日本人特殊詐欺グループの面々。東南アジアを中心に暗躍する彼らの最新事情とは……</figcaption></figure>
<p>カンボジアを拠点とする特殊詐欺グループの日本人の男たちがフィリピンへ一斉逃亡していた–––––。</p>
<p>フィリピン入国管理局は７月17日、首都マニラで日本人の男４人を入国管理法違反の容疑で拘束した。４人は今年１月、特殊詐欺の拠点だったカンボジアから入国していた。近く、日本へ強制送還される見通し。同局によると、カンボジアから入国したのはこの４人のほかに日本人の男６人がいて、現在もフィリピン国内に潜伏しているという。全部で10人がカンボジアから逃げてきたということだ。その逃亡をフィリピン側で手引きしていた謎の人物の存在も浮かび上がった。</p>
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<p>同局によると、拘束されたのは清原淳(29)、鈴木清二(29)、上田鴻志(27)、澤田昌哉(43)の４容疑者。このうち澤田容疑者はマニラ国際空港で、残りの３容疑者は、マニラの中心部から少し離れた住宅街『BFホームズ』でそれぞれ拘束された。同局幹部が語る。</p>
<p><span class="strongInContent">「４人はカンボジアの捜査当局から逃れるためにフィリピンへ渡ったが、潜伏していた住宅街にオフィスを構え、新たな特殊詐欺をはたらこうとしていた。</span><span class="strongInContent">４人からは犯行に使われたとみられるスマホも押収している。証拠品として今後、日本の警察に引き渡す予定だ」</span></p>
<p>４人は今年５月、日本の大宮簡易裁判所から詐欺容疑で逮捕状が出されていた。残りの６人は現在、マニラかセブ島に潜伏しているとみて引き続き捜査を続けている。</p>
<p>この10人が今年１月、カンボジアからマニラ国際空港に順次到着した。フライトを分散させていた。その経緯について、同局幹部は、裏で手引きしていた“謎のフィリピン人ハーフ”の存在を指摘する。</p>
<p><span class="strongInContent">「日本人とフィリピン人のハーフの男性が、この10人のフィリピンにおける居場所を確保したりと、逃亡に向けた手助けをしていた。ハーフの男性はかつて日本に滞在して強盗事件に関与し、実刑判決を受けている。その日本滞在時に10人と知り合ったようだ」</span></p>
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<div data-friday-nextpage-lead="逮捕で全てが終わりではない"></div>
<figure id="attachment_383600" aria-describedby="caption-attachment-383600" style="width: 634px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="56461597"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/642c97116fffb74526c03020f95b90d7.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-383600" class="wp-caption-text">拘束され、道路にうつ伏せにさせられる容疑者たち。白昼の住宅街で行われた逮捕劇だった</figcaption></figure>
<p>このハーフの男性は30代前半。日本語とタガログ語に堪能で、現地事情にも詳しいことから「逃亡斡旋業者」としてカンボジア側と連絡を取り合っていたという。現在もフィリピンに滞在中だ。</p>
<p>カンボジアでは昨年１月、南部の港湾都市にあるリゾートホテルに滞在していた日本人19人が特殊詐欺に関与したとして現地捜査当局に拘束された。同年９月には首都プノンペンでアパートを拠点に特殊詐欺を繰り返していたとして日本人25人が拘束されており、今回の10人を含め、特殊詐欺グループにとってカンボジアは新たな拠点になっている。</p>
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<p>一方のフィリピンには、「ルフィ」などと名乗って日本国内で広域強盗事件を起こした特殊詐欺グループが暗躍していた。幹部らを含めすでに大勢が日本へ強制送還されたが、その残党は今もフィリピン国内に潜伏しており、数十人はいるとみられる。同局によると、今回、拘束された４人と『ルフィ・グループ』とのつながりはないという。『ルフィ・グループ』のメンバーとしてフィリピンでかけ子をやっていた20代の日本人男性に、４人の写真を見せると、こんな反応が返ってきた。</p>
<p><span class="strongInContent">「いずれの顔も見たことがありません。ルフィ・グループの人間ならほぼほぼ知っているので、その４人は別のグループかと思います」</span></p>
<p>４人が収容されているのは、『ルフィ・グループ』が特殊詐欺の拠点にしていた入国管理局の外国人収容施設（通称・ビクータン）だ。ここには現在、『JPドラゴン』と呼ばれる不良邦人組織の幹部、小山智広容疑者(50)が収容されている。小山は今年２月、フィリピン警察に詐欺容疑で逮捕された後、収容施設に移送されていた。現地で事件の審理が続いているため、日本への強制送還ができない状態とみられる。</p>
<p>『JPドラゴン』は『ルフィ・グループ』と接点があり、日本人高齢者を標的にした特殊詐欺を結託して行っていた。このため施設内で４人が小山と接触すれば、カンボジアとフィピンの犯行グループが接点を持つきっかけとなり、特殊詐欺グループの組織図がさらに複雑化する可能性が出てきた。日本の捜査権限が及ばない異国の地での犯行に、事態は混迷を極めつつある。</p>
<figure id="attachment_383601" aria-describedby="caption-attachment-383601" style="width: 1514px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f3d5a306"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/45f2a2d92217d98ebe71cb3b1af5bcff.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-383601" class="wp-caption-text">今回逮捕されたのは４人。この特殊詐欺グループのメンバーは他にも６人いると見られているが、彼らはいまだにフィリピンに潜伏している。犯罪グループを撲滅すべく、現地では捜査が続いている</figcaption></figure>
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<div data-friday-nextpage-lead="逮捕された特殊詐欺グループ「戦慄の素顔写真」"></div>
<figure id="attachment_383603" aria-describedby="caption-attachment-383603" style="width: 630px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6eddae56"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/b7092163bed6d705bdd3726e2c1ce6ec.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-383603" class="wp-caption-text">逮捕された特殊詐欺グループの面々は、『ルフィ・グループ』の渡辺容疑者らも収監されていた外国人収容施設に入っている</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_383604" aria-describedby="caption-attachment-383604" style="width: 950px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="8150abbe"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/cd8d1385d5952615c1c8f9593efb5427.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-383604" class="wp-caption-text">紙には「FRAUD＝詐欺」と書かれている。これは日本から出された逮捕状に書かれている罪状だ</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_383605" aria-describedby="caption-attachment-383605" style="width: 624px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="268473c0"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/68ede9ea9cac34db06bf1b243b790212.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-383605" class="wp-caption-text">逮捕された４人のうち、３人は20代だった。いまだに多くの若者が、海外で犯罪行為に手を染めている</figcaption></figure>
<figure id="attachment_383606" aria-describedby="caption-attachment-383606" style="width: 936px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="79a9140a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/d64ad600ab2d1622ad7c2fcf364f6cf4.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-383606" class="wp-caption-text">最年長の澤田容疑者は唯一の40代だった。彼ら４人は、現地当局での手続きが終わり次第、日本へ強制送還される見込みだ</figcaption></figure>


水谷竹秀

日本中を震撼させた「ルフィ」を名乗る特殊詐欺グループの犯行から、1年半以上が経過した。しかし、いまだに東南アジアでは特殊詐欺を行う日本人グループが活動を続けている。その最新事情に迫る。

【緊迫の逮捕写真も】新たに日本人４人が逮捕…特殊詐欺グループと共に暗躍する“謎の斡旋業者“の存在

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