″姫″を実家の両親に紹介して…お盆に女性客たちを連れて帰省するホストたち | FRIDAYデジタル
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″姫″を実家の両親に紹介して…お盆に女性客たちを連れて帰省するホストたち

両親と担当ホストと、お盆の食卓を囲むユウコ。彼とは互いの実家を行き来する仲だ
両親と担当ホストと、お盆の食卓を囲むユウコ。彼とは互いの実家を行き来する仲だ

お盆休みが終わり、先祖の霊は霊界へ、会社員は普段の生活に戻っていく。そんななか、歌舞伎町の夏休みは世間より1週間ほど遅れて始まる。ホストのタケル(仮名・29)は、帰省する際、とくに服装に気を使っているという。

「あえてハイブランドの服やいい時計を身に着けていきます。『お前らが昔バカにしたホストって職業で、お前らの年収の何倍も稼いでるけど?』って見せつけてやりたい。あとは親孝行にお金を使います。地元を出てこの仕事選んでよかったなって思うために帰省してますね。

ただ、年々、帰省してもつまらなくなりました。地元の同級生はほとんど結婚して、家族優先で会う時間が減っていく。それでも会ってくれるヤツはいますが、仕事や家庭のしょうもない愚痴ばかりで張り合いがないです」

ホストたちの間では、Instagramで「しばらく帰省します」と投稿して、夏季休業を宣言するのがセオリーだ。お気に入りのホストがいる風俗嬢のミユリ(仮名・26)が本音を語る。

「実家で楽しそうにしてる担当ホストを見ると正直イラつく(笑)。私は実家に言えない仕事までして支えてんのに、私が貢(みつ)いだ金で親孝行かよって」

担当ホストに会えないことでヤキモキした気持ちを抱える女性が多いからこそ、ホストにとってお盆は″姫″たちに特別感を与えるチャンスだ。

「昔、お盆休みに、担当ホストの実家に連れて行かれて『俺の彼女で将来を考えている人』って紹介されたことがあったんです。彼の親の前で一緒に将来の話とかして、ゆくゆくはホストをやめて幸せになりたいって。でも後から、同じように実家に連れて行かれたって女の子が何人もいることを知りました(笑)。

当時私は19歳だったし、ホストがここまでするなんて知らなかった。その後、彼の誕生日には700万円ほど使いました。結局、帰省も売り上げのためだった。彼の親もグルだったんじゃないかって疑っちゃいますよね。実家に連れて行かれたら、さすがに真剣交際だと思うじゃないですか」(ラム・仮名・23)

ホストと実家に帰省

ホストに大金を使う″エース″レベルになると、ホスト側の身内に会うことは度々あるという。ホストとしての側面だけではなく、大事なプライベートな時間まで一緒に過ごすと「疑似恋愛」として割り切れなくなるのも理解できる。

ラムの場合とは反対に、女性客が自らの実家にホストを連れて行く場合もあるという。昨年から担当ホストと実家に帰省するようになったホス狂いのユウコ(仮名・25)が話す。

「担当と一緒に私の実家に帰省して、両親とホストと私の4人で仲良くスーパーに買い物に行きました。彼が作った惣菜を並べて食卓を囲んだり……。両親には『一応お付き合いの体裁を取っているが、ホストと客の関係で、彼のお店に行ってお金を使っています』と説明してあるんですけどね(笑)。胆力があるというか、懐(ふところ)が深いというか……。

最近では、帰省する度に両親から担当ホストと仲良くやってるか訊かれます。娘が一人でいるよりは良いと思っているのかも。私自身、こういう歌舞伎町スタイルの男女交際しか経験したことがないんです」

歌舞伎町での非日常的な人間関係が現実世界に織り込まれていく。男と女、ホストと客、色恋営業と本当の恋愛――。虚構を演出するために現実を利用し、境界を曖昧にしてしまう。歌舞伎町にはそういったカラクリが存在する。

ドラマ『新宿野戦病院』(フジテレビ系)に撮影協力で参加中、
佐々木チワワ著『ホスト!立ちんぼ!トー横!オーバードーズな人たち』(講談社)が好評発売中!

『FRIDAY』2024年9月6日・13日合併号より

佐々木 チワワ

ライター

’00年、東京生まれ。小学校から高校まで都内の一貫校に通った後、慶應義塾大に進学。15歳から歌舞伎町に通っており、大学ではフィールドワークと自身のアクションリサーチを基に”歌舞伎町の社会学”を研究。主な著書に「歌舞伎町モラトリアム」(KADOKAWA/'22年)、「『ぴえん』という病 SNS世代の消費と承認」 (扶桑社新書/’21年)がある。また、ドラマ「新宿野戦病院」(フジテレビ系)など歌舞伎町をテーマとした作品の監修・撮影協力も行っている。 『FRIDAY』本誌の連載が書籍化、「ホスト!立ちんぼ!トー横! オーバードーズな人たち ~慶應女子大生が歌舞伎町で暮らした700日間~」(講談社/'24年)が好評発売中。

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