本好きの間で話題! 「ポップごと買える書店」を知ってますか?

青森「本のまち八戸」で見つけたユニークな2つの本屋

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ポップはすべて「一点モノ」

減少の一途をたどる全国のリアル書店。アマゾンや電子書籍の普及に押され、2017年には書店のない自治体が2割を超えた。だが、ここ八戸は、長居したくなるユニークな書店が町に2軒もある本好きには幸せな町だ。

昨年夏頃から日本中の本好きの間で話題になっている書店がある。八戸中心街から車で10分ほど。八戸信用金庫や東北銀行の湊支店の並びにある「木村書店」がそれだ。

商店街の中に佇むその店の外観は、昭和の本屋さんそのままジャングルジムみたいな黄色い鉄製の絵本タワーがあり、店構えはちょっと広めで、いろんな本の宣伝ポスターがペタペタと貼ってある。ちょっと重そうなガラス扉がお客さんの足を一瞬、怯ませるところも昭和っぽい。

入ってみると、右半分は学校用の文具が陳列されていて、奥にはけっこうなスペースの学習参考書コーナー…….。このお店の経営が、まず学校の生徒たちで成り立ってきたんだろうということがわかる。

「はい! 私も小さい頃から、ここに参考書を買いに来ていました」

快活な声で話すのは、及川晴香さん(31)。創業90年目にして、同書店を突如、全国区に押し上げたスーパー書店員さんだ。

この書店が一躍、知られるようになったのは

「ポップごと買える本屋」。これである。

販売促進として、いまやどの書店にも一つや二つ、いや10や20はあるポップ。書店員さんがこの本はこんなところが面白いんですよ、と紹介したり、最近では出版社のほうからオススメの新刊につけてほしいポップを書店に送ったりもする。が、それらはいずれも原則として“平積み”の本の上に乗せるためのものだ。

書店に行ったときのことを思い出してもらうとわかるのだが、5冊、10冊と大量に入荷するベストセラーや新刊などは棚の台に積んで置かれている。これが“平積み”。それに対してせいぜい1~2冊程しか搬入しない本は、お客さんに背表紙だけを見せる格好で棚にさしてあり、これを“棚差し”と呼んでいる。スマホほどの大きさがあるポップが、1冊しか置いてない棚差しの本のために作られることはほとんどない。

だが、及川さんの描くポップは、「一冊につき1ポップ」で、本が売れたらそのポップもお持ち帰り、となる。及川さんのお眼鏡にかなった、ポップを描いてもらった本の陳列状況は、こうなのだ。

どうです、このどっさり感。

まるでおもちゃ箱をひっくりかえしたような楽しさは、書店とは言い難い異空間ぶりだ。及川さんいわく、この方式に行き着いたのはお客さんとの会話からだったのだという。

「ある日、お客さまが『どうしてもポップごと欲しいんです』っておっしゃられて、その瞬間は、ちょっと困ったんです。持っていかれてしまうと、また書かないと……と思って。でも熱意に負けてお譲りした後、しばらくしてその方がまた来店されて、この前と同じ本を3冊ください、と。

驚いて『同じ本ですが、よろしいんですか?』と聞きました。その方が言うには、本を買った後も家の本棚にポップごと飾っていたんだそうです。そうしたら本棚を見た人たちが『これと同じ本が欲しい』と言い出したので、また買いに来たんですよ、って」

ポップごと持っていってもらったことで、書店で本を選ぶ時のワクワク感まで別の人に伝わったのだ。

自発的に手にとった本でしかポップは書かない

ポップごと買える本屋さんになったのは、2017年の夏前ごろ。今では常時70〜100枚近いポップが置いてある。じつは及川さん、元々漫画家志望でもなければデザイン事務所などに勤務した経験もないという。

「ここに勤めるようになって、自分でも好きな本を伝えたいなぁと思い立ってから2年間、家に帰ってから落書き帳に絵の練習をしていました(笑)。これなら店頭に出してもいいんじゃないかなって、自分が納得がいくまで。人間を描くのがちょっと苦手なので動物をキャラクターとして描いて、店長さんに出してもいいですか? と許可をいただきました。だから完全な独学です」

ポップの可愛らしさに目がいくが、よく見てみると、ポップのついている書目はかならずしも女性向けの本でもない。自然科学本や『幻獣最強王図鑑』、『ZOMBI』、『嫌われる勇気』なども並んでいる。

以前、お孫さんに本をあげたいというお客さんから「ベストセラーじゃなくて、あなたが面白いと思った本を教えていただきたいんだけれど」と言われたことがポップを書く動機になったというだけに、『フランケンシュタイン』のような往年の名作もチョイスされている。

「あるお客さまから『この本にポップを書いてくれないかしら』と言われて書いたことがあったんですが、それはやめました。ポップを書くためには、その本を読まなければならないし、自発的に手に取った本ではないとやっぱりうまくいかないんです」

地元で徐々に話題になり、その後数ヵ月して「八戸市 木村書店@ポップごと売ってる本屋さん」というツイッターも始め、ポップ担当日記を日々更新することで、全国的に注目されるようになった。いまでは日本中から“ポップごと買いに”来るお客さんが訪れるという。

及川さんは、せっかく足を運んでくれるのだからとツイッターにアップしている絵の原画を店に置き、自由に閲覧してもらっている。

「ポップを作るようになってから、お客さまとの会話はうんと増えました。市内の他の書店員さんとも、お互いみんなに本を読んでもらえるようにがんばろうねと話しています。競争相手というより同志に近い感じなんですよ」

作家になった気分が味わえる書店も

もうひとつのユニークな書店は、町の中心部。そして経営しているのは、市そのものだ。図書館ではなく書店を市が経営するのは珍しい。

現市長が選挙公約として「本を読む人をふやす、本を書く人をふやす、本でまちを盛り上げる」という「本のまち八戸」宣言を掲げて当選。その公約実現の第一歩として2016年12月に「八戸ブックセンター」がオープンした。

市の直営だけに、品揃えは市内の書店さんとなるべくかぶらないように気を遣っている。では何が置いてあるのかといえば、一般書店だと入荷しづらい、ちょっと前に刊行された本や専門書。専門書といっても難しい学術書ではなく、たとえばJAZZの本があったり、人体図鑑や博物館特集があったり。また八戸にゆかりの人が選んだ本、本好きの人たちからテーマを募り、その関連書籍を取り寄せたりもしている。

一般公募でテーマを募り、ベスト10の本を取り寄せるコーナーも
動く本棚の後ろには秘密の読書ルームが

そして、店内にはカフェカウンターあり、動く本棚の後ろに秘密基地のようなスペースあり。さらには、「本を書く人を増やす」という大きな目標も兼ねて、作家になった気分が味わえる“カンヅメ部屋”まであるという。なるほど、カンヅメになって執筆をはじめたら資料の本なんかも必要になるかもしれない。

「木村書店」が一人の書店員さんの情熱と手作り感で人気なら、こちらは「本のある空間」を楽しんでもらおうという大掛かりな仕掛けがさまざまに施されている。

本のために旅をする、そんなことがたまにはあってもいい。

木村書店/青森県八戸市小中野8-12-29 TEL:0178-24-3366  営業時間 9:00~19:00

八戸ブックセンター/青森県八戸市六日町16-2 TEL:0178-20-8368 営業時間 10:00~20:00 https://8book.jp/

  • 取材・文・撮影花房麗子

Photo Gallary9

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