新元号「令和」で始まる混沌社会の「その時」
政権交代や消費税増税問題など、騒乱の時代が幕を開けた
新元号で政治が、経済が動き出す
4月1日11時半が近くなってくると、日本各地の屋外ビジョンに、家電量販店の展示テレビに、人々が集まり始めた。菅義偉(よしひで)官房長官によって新元号「令和」が発表されると、ボードが映されたテレビ画面前で自撮りする姿も見られた。
一方、異常な騒動となったのが新元号発表から30分あまり後に発生した有楽町と新橋駅前の「号外新聞奪い合い」。1000人近い人々が号外を配ろうとする係員に殺到し、複数人がつかみ合った挙げ句、号外はビリビリに。新橋では押し寄せる群衆の中で若い女性が押し倒されて怪我を負う始末。新元号の和やかな意味からはほど遠い光景が繰り広げられた。
「平成」の新元号発表は、昭和天皇の崩御した午前6時33分から8時間後の午後2時36分。人々が右往左往している中での新元号の発表は、いわば第二報扱いだった。それから考えれば、今回のビッグニュース扱いは新潮流といえるだろう。ジャーナリストの大谷昭宏氏が言う。
「昭和天皇崩御の時は、こういう元号はつけにくかったでしょう。大伴旅人らが梅見の宴をしていたら風に乗って花の香りが漂ってきた。そのいい心持ちを詠んだ一節なわけです。それだと喪に服す心情にはそぐいません。陛下が、生前退位されるからこそつけられた元号ですね。
ただ、花見の下で令和と書いて万歳している人がいましたね。その風潮を政府も煽っている面がありますが、それは違うのではないでしょうか。政府は東京五輪しかり万博しかり、単発的な打ち上げ花火みたいなイベントで盛り上げて国民の目線をおめでたいほうに逸らせたい。それに乗っかっているようでは、山積している問題を立て直せず、いずれ打ち上げ花火の火は消えてしまいますよ」
これから政治も経済も新時代に向けて動き出す。安倍政権も永遠に続くわけではない。騒乱の時代が幕を開けそうだ。
東京
大阪
名古屋
ハロウィーンみたいに浮かれる人びと
改元初体験の「平成生まれ」が闊歩する町・渋谷。ここで元号発表を待つ若者たちは明らかにイベント狙いだった。スクランブル交差点では、あわよくば目立ってやろうとする者が行ったり来たりを繰り返すうち、群衆の数が膨れ上がった。ハロウィーンのお祭り騒ぎさながらの様子に、号外を配布する予定だった新聞社が配布を取りやめたほどだったのだ。
また新元号発表後、さっそく動物園や水族館、あるいはイベント会場では「書き初め」が始まった。オタリアに「令和」と書かせた飼育員は「画数の多い字ならカタカナにしようかと思っていた」とか。お調子者が「令和」の空気を作り出す!?
- 撮影:小松寛之(有楽町)、結束武郎(新宿)、川柳まさ裕(名古屋)、加藤慶(大阪)、鬼怒川毅(兜町)、蓮尾真司(有楽町)、船元康子(渋谷)
- 写真:時事通信、つのだよしお/AFLO(横浜)、御代替わり奉祝実行委員会提供/時事通信(高千穂)