美人保育士刺殺 あなたの近くにも潜む「新型ストーカー」の恐怖
東京杉並発 『恋愛妄想』が爆発したとき、同僚が自宅にナイフを持ってやって来る
惨劇の場となったアパートに、花を供えようとやって来た、照井津久美(つぐみ)さん(32)の高校の同級生はこう語った。
「高校時代の彼女はハンドボール部に所属していました。高校生なのに地に足が着いたしっかり者で、真面目な印象でしたね。当時から、『子供が好きなんだ』と明るく話していて、他人から恨みを買うようなタイプじゃありませんでした」
東京都杉並区のアパートで、乳児院に勤める保育士の照井津久美さんが殺害された事件で、同僚の保育士・松岡佑輔容疑者(31)が殺人容疑で逮捕された。
3月25日の夜、松岡容疑者は照井さんのアパートの屋根をよじ登ってベランダまで伝っていき、部屋の中に侵入。翌日まで部屋に潜伏し、正午ごろ、夜勤を終えて帰宅した照井さんに襲いかかり、包丁で突き刺して深さ約15㎝の致命傷を負わせ、殺害したと見られている。
「取り調べに対し、松岡容疑者は『部屋に入ったが刺していない』などと容疑の一部を否認しています。ただ、乳児院の同僚らには『照井さんに好意がある』という意味のことを洩(も)らしていたようです」(全国紙社会部記者)
神奈川県にある容疑者の実家の近隣住民は、彼のことを「会うと必ず会釈してくれる、おっとりして真面目そうな好青年でしたよ」と戸惑いがちに語った。
一方で、松岡容疑者が現在住んでいるアパートの隣の部屋の住民は、まったく異なる印象を抱いていたという。
「彼の部屋からは週に3日ほどテレビの音が大音量で響いてきて、うるさくて寝付けないほどでした。部屋も汚く、中庭からチラッと見えた彼の部屋は、脱ぎっぱなしの服の上に食べかけの弁当が置いてあり、カップ麺のゴミなどが足の脛(すね)のあたりまで積まれていました」
さらに、同じアパートの別の住民は「少し物音を立てただけでドアをドンドンと叩かれたり、インターフォンを何度も鳴らされたりした」と、彼の暴力的な一面を窺(うかが)わせる証言をしていた。
表面的には無口な好青年、だが実は未熟で自堕落、そして凶暴性を秘めた人格。標的を付け回すこともなく、あるとき、いきなり犯行に及ぶ。”新型ストーカー”とも言うべきこのタイプの犯罪者について、精神科医の片田珠美氏はこう語る。
「容疑者は『恋愛妄想』と言い、告白したわけでもないのに『相手は自分に気があるはず。なぜ応えてくれないのか』と思い込む状態にあったと考えられます。その気持ちが何かのきっかけで怒りに変わり、殺人を犯してしまったのでしょう。彼が通常のストーカーと異なるのは、表立ってストーカー行為をしたり、照井さんに好意を見せたりできないほど自分に自信がなかったこと。逆に言うと、それだけ予兆が見えにくく、防ぐことが難しい犯行だったと言えます」
気配や素振りがなくても、実は命を狙っている――そんな新型ストーカーはあなたのそばにも潜んでいるかもしれない。



撮影:蓮尾真司(送検、事件現場)