『沈黙の艦隊』日本初の原潜が挑む壮絶な闘い、超絶の結末とは? | FRIDAYデジタル

『沈黙の艦隊』日本初の原潜が挑む壮絶な闘い、超絶の結末とは?

「平成の名作漫画を振り返る」 人気漫画家かわぐちかいじの「大いなる新境地」が浮上! 

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ハリウッド映画の邦題に”借用”された漫画。国会(内閣委員会)で質疑された漫画。すでに人気作家だった漫画家かわぐちかいじ氏が大ヒット作を産み続ける新ジャンルを開拓した画期的作品ーー。『沈黙の艦隊』には様々な顔がある。

極秘に開発された日本初の「原子力」潜水艦が、政府や自衛隊の指揮下を離脱して独立国「やまと」を宣言する! 海上自衛隊随一の操艦技術を誇る艦長・海江田四郎(かいえだ・しろう)の狙いはいったい何なのか?

祖国・日本の自衛隊に追われるだけでなく、世界最強の米第七艦隊、さらに第三艦隊の巨大な包囲網が待ち受け、ロシア海軍や中国海軍までもが、最新鋭原潜の秘密を奪うべく虎視眈々と狙う。物語の展開と共に、イギリス、フランス、インド海軍までもが“参戦”してくる。

事実上、世界のすべてを敵に回した闘いが、大海原で、深海で、展開されるのだ。

だが、海江田が操艦する「やまと」は追手はもちろん、同乗するクルーの予測、読者の想像を遥かに超えた戦術を繰り出し、絶体絶命の危機を次々と乗り越えて行くーー。

『沈黙の艦隊』は週刊漫画誌「モーニング」で連載。1988年から始まり、1996年に最終回を迎えた。その間、1990年には「第14回 講談社漫画賞 一般部門」を受賞。累計発揮部数は2500万部突破という傑作であり大ヒット作だ。そして漫画の枠を超えた話題も集めた。

ハリウッドのアクションスター、スティーヴン・セガール主演の映画『沈黙の戦艦』(93年日本公開)は、原題が「Under Siege」(包囲下の意)だったが、『沈黙の艦隊』の人気・知名度にあやかって 『沈黙の戦艦』の邦題が付けられた。以後、セガールの作品は設定的に何のつながりがなくても『沈黙の〜』と名付けられることが多く、「沈黙シリーズ」(?)が誕生することになったのだ。

また連載初期の1990年5月29日には国会でも注目を集めた。衆議院内閣委員会で、当時、当選一年目だった山口那津男議員(現・公明党代表)が石川要三防衛庁長官に対して「防衛庁長官はこの作品はお読みになったことございますか」と切り出し、作品の詳細な紹介をしつつ、日本が原子力潜水艦を保有する可能性について質問している。

『沈黙の艦隊』が登場した「第118回国会 内閣委員会 第7号」の議事録を読む ※文書の4分の1ほどのところに記載アリ

作品自体の話に戻ろう。『沈黙の艦隊』では緻密で独創的な戦術、壮絶な戦闘シーンが迫力満点に描かれる。読者はまず、潜水艦戦・艦隊戦をメインとしたミリタリー漫画として、すっかり取り込まれてしまう。

ところが、この作品の面白さと独創性は「戦記物」としての面白さだけに留まらない。海上・海中の闘いと同時に、核戦争の恐怖や国際政治の覇権を巡る熾烈な駆け引きも組み込まれ、描かれる世界はミリタリーものから、ポリティカルサスペンス、さらにスタート時には思いもよらなかった「思考実験」の場へと拡がって行く。

それは、大長編の後半に“浮上”する、海江田四郎の驚くべき「構想」である。

漫画家・かわぐちかいじ氏は、麻雀ものや探偵ものなどの男臭い作品で、すでに人気作家となっていた。この『沈黙の艦隊』では、得意の男臭いキャラクターを続々を登場させつつ、大状況の中に思考実験を盛り込んで「新境地」を開いた。

そして『沈黙〜』後も、太平洋戦争にタイプスリップした海上自衛隊イージス艦の闘いを描いた『ジパング』(全43巻)や、大震災で国土の五分の一を失い、アメリカと中国に分割統治された近未来の日本人を描く『太陽の黙示録』(全26巻)など、かわぐちかいじ氏の独壇場ともいえる作品群が生まれて行ったのだ。

かわぐち氏は今も、自衛隊初の(事実上の)空母「いぶき」と中国軍との闘いを描く『空母いぶき』(原案協力/惠谷治、ビッグコミック連載中、既刊12巻。実写映画が5月24日全国公開)や、最新作『サガラ~Sの同素体~』(モーニング連載中、既刊2巻)では『勇午』や『イサック』で知られる真刈信二とタッグを組んで諜報サスペンスを放ち、エンタメ性とテーマ性が際立つ作品を手がけている。

『沈黙の艦隊』、連載開始時の1988年から世界は激変した。しかし作品が描いた「世界観」は、むしろ切迫度を増している。そして「海江田の壮大な構想」も色あせない。

漫画単行本として全32巻(モーニングKC版)に及んだ本作。連載各回のサブタイトルは「VOYAGE」(航海)と表記されてきた。最終話のサブタイトルを明かそう。「VOYAGE 354  60億の出撃」(今の世界人口を当てはめれば「76億の出撃」)。そこは予測不能の最終寄港地だ。

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  • 羽鳥透

    1965年、東京出身。エディター&ライター

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