県立高校を選んだ163キロ佐々木朗希投手「復興への思い」

強豪校のスカウトを断った「被災地の絆」

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4月6日のU18合宿紅白戦に登板。高校最速163㎞の剛速球で全6打者から三振を奪った

「手から離れた瞬間に、ボールが捕手のミットに収まっているイメージです。あれだけ速いボールを投げ、球筋のキレイな高校生を見たのは初めて。松坂大輔やダルビッシュ有に匹敵する、10年に一人の逸材であることは間違いありません」 

こう話すのは、大リーグ・ロイヤルズの国際スカウト・大屋博行氏だ。

大屋氏が絶賛するのは岩手県立大船渡(おおふなと)高のエース、佐々木朗希(ろうき)(17)である。4月6日に行われたU18日本代表候補研修合宿で、大谷翔平が記録した160㎞を上回る高校最速の163㎞を計測。甲子園出場経験のない投手の快挙に、日米12球団44人のスカウトが感嘆の声をあげた。この合宿を視察した前出の大屋氏が語る。

「佐々木君が注目されるようになったのは、昨秋の県大会で150㎞を連発するようになってから。あれほどの投手が、フツウの公立校にいるとは驚きです」

大船渡高が甲子園に出場したのは、’84年春と夏の2度だけ。昨夏の県予選では3回戦で敗退している。日米のスカウトが注目する佐々木が、無名の県立校を選んだのには深い理由があるのだ――。

「佐々木が生まれ育ったのは、岩手県沿岸部の陸前高田市でした。’11年3月の東日本大震災で、壊滅的な被害を受けた場所です。佐々木のお父さんの功太さんも、津波にのまれ37歳の若さで亡くなっています。小学3年生だった佐々木は、ショックでしばらく家族とも会話ができなかったそうです。

自宅を流された佐々木の一家は大船渡市に移住。そこで入団したのが、陸前高田や大船渡など被災地の野球少年で構成される『オール気仙』というチームです。選手たちは『地元の高校に進学し野球で被災地を盛り上げよう』と約束しました。

佐々木は大阪桐蔭など、他県の強豪校から声が掛かりましたが一切拒否。大船渡高へ進学当初は、『復興のために将来は市役所で働く』と話していたそうです」(スポーツ紙記者)

佐々木の才能を伸ばしたのは、3歳年上の兄・琉希(りゅうき)氏だ。大船渡高の野球部OBで、4番を任されたこともある。

「佐々木の負けん気の強さを見抜き、『お前レベルの選手は大勢いる』とあえて突き放していたそうです。兄に認められたいと佐々木は猛練習。

携帯電話の待ち受けにしたのは、同学年でU15日本代表にも選出された及川(およかわ)雅貴(現・横浜高。最速153㎞の左腕)の投球写真。周囲には、その理由について『会ったことがないが中学時代から有名だった。負けたくない気持ちを忘れたくないから』と話していたとか。この頃からプロを意識するようになったそうです」(前出・記者)

岩手の無名校から、世界で活躍する剛速球投手が出てきたのだ。

昨年7月の岩手県大会で大船渡高は3回戦敗退。右端が佐々木。190㎝の長身でひときわ目立つ
大阪府で行われたU18日本代表候補研修合宿で、国際試合でのマナーなどについて講義を受ける

『FRIDAY』2019年4月26日号より

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