大阪・西成ホームレス排除のウラに「あの世界的イベント」の影 | FRIDAYデジタル

大阪・西成ホームレス排除のウラに「あの世界的イベント」の影

「あいりん総合センター」が3月末で閉鎖され

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32歳から37年間、あいりん地区で暮らしている男性。「追い出されたら行き場がない」と力なく語った
32歳から37年間、あいりん地区で暮らしている男性。「追い出されたら行き場がない」と力なく語った

「令和? 何やそれ。新元号が発表されたことも知らんかった。俺らは毎日生きるのに精一杯。ここを追い出されたら、もう生活できへんで」(「あいりん総合センター」で寝泊まりする60代男性)

大阪市西成区の”象徴”と呼ばれた「あいりん総合センター」が3月31日、老朽化により閉鎖された。同施設には職業安定所などのほか、娯楽室やシャワー室などが入っており、定住先を持たない日雇い労働者のたまり場となっていた。

自分たちのオアシスを潰させるものかと、31日には100人ほどが集まり、閉鎖に猛抗議。本誌は今回、センターに潜入し、現在も抗議を続ける彼らのナマの声を聞いた。

「日雇いはほとんどないし、あっても日給9000円の肉体労働。しかも、ピンハネがキツイから稼ぎはほとんどない」

そう語るのは、19歳で西成にきて50年以上暮らしているという70代の男性。記者が渡したタバコをうまそうに吸いながら、彼はこう続けた。

「生活保護? もらえへん。住所がないから。本籍地だけではアカンのやって」

ホームレスたちが口をそろえるのは、「行き場がない」という言葉だ。

「ここ(総合センター)だったら、パンツ一枚でウロウロしてても何も言われへん。ボロボロの格好でよその公園に行ってみ? すぐ通報されるで」(60代男性)

「西成には他にも施設があるけど、朝早く追い出されたり、整理券を貰わんと入れんとこばかり。結局、ここしかないんや」(年齢不詳の男性)

「あいりん総合センター」を管轄する大阪府商工労働部雇用推進室労政課の担当者は、「(抗議している人たちと)話し合いを続けていく」と言うが、他に行き場がないから、彼らが応じる気配はない。

「いま抗議を続けているのは30人くらいでしょうか。実際に取り壊しが始まるのは2年後くらいになる予定です。とはいえ、耐震の問題があり、建物内にいれば危険があります。一刻も早くシャッターを閉めたいのですが……」(担当者)

「あいりん総合センター」の閉鎖は、行政が推し進める”西成浄化作戦”の第一歩に過ぎない。今後、ますますホームレス排除の動きは加速するだろう。背景にあるのはもちろん、昨年11月に開催が決定した’25年の大阪万博だ。

『貧困と地域』の著書がある桃山学院大学社会学部准教授の白波瀬達也氏が言う。

「’25年大阪万博に向けて街が整備されるのは良いことですが、開発が進みすぎると生活困窮者の行き場を奪うことにもなりかねない。あいりん地区は様々な背景を持った人たちを包み込んできた。他の地域で排除されがちな人たちを受け入れてきた歴史があるのです。今後、彼らの暮らしをどう支えていくのか。行政や地域が一体になって対策を講じていく必要があるでしょう」

どこにワシらを受け入れてくれる街があるっていうんや――本誌の取材に力なくそう答えた男性の言葉が、彼らの置かれた実状を物語っていた。

「あいりん総合センター」閉鎖に抗議する人々。連日炊き出しも行われ、その時間にはホームレスが溢れる
「あいりん総合センター」閉鎖に抗議する人々。連日炊き出しも行われ、その時間にはホームレスが溢れる

『FRIDAY』2019年4月26日号より

  • 写真加藤慶

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