「暗闇ボクシングジム」で22億稼ぐ20代姉妹はどう育てられた?

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照明を落とした暗闇の中、大音量で流れるアップテンポな音楽。汗を飛び散らしながら目の前のサンドバッグを無心で打ち込む人たちーー。クラブで踊るような感覚でトレーニングが楽しめる「b-monster」は、新感覚の「暗闇ボクシング・フィットネス」として2016年東京・銀座に誕生して以来、今なお注目を集める旬スポットだ。

設立してからものの3年足らずで、国内に8スタジオ、上海に2スタジオと急スピードで店舗数を増やし、昨年度の売上高はなんと22億円という大躍進! 飛ぶ鳥を落とす勢いでフィットネス界を揺るがすのは、「b-monster」社長の塚田美樹氏(25歳)と、大学を中退して経営に参画する塚田眞琴氏(24歳)。20代前半で起業した姉妹の素顔とは? 

向かって左が、姉の塚田美樹さん。右が妹の塚田眞琴さん

ーー「b-monster」を立ち上げる前は学生だったおふたりですが、「起業したい」という思いはもともとあったのでしょうか?

美樹 母が脱毛サロンを経営しているのですが、大学3年のとき、親の会社を継ぐか継がないかの選択を迫られたとき、「会社を継がない」という選択をしたとしても、「誰かの下で働く」ということが想像できなかったんです。あと、ずっと女子校育ちだったのもあって、「女性ばかりの世界はもういいや」と。そんな理由から、「働くなら起業したい」という気持ちはありましたね。

眞琴 私は、「起業したい」というよりは、その時々にハマっていることを仕事にしたくなる傾向があって。中学生の頃はお笑いが大好きで、漫才師になるためネットで相方を探してコンビを組んで、大会に出場したこともありました。テレビ制作にも興味がありましたね。お笑い番組が好き過ぎて、番組についての感想や改善点などをノートにぎっしり書いていたり(笑)。

美樹 私は大学1年のとき、「普段着のレンタルサービス」をやっていました。Facebookに専用ページを作って、合コン用ドレスのレンタルサービスをスタート。その後、“恋人と夜ご飯に行くとき用”などの普段着の貸し出しもするようになって。1泊2日で1着1500~3000円くらいが相場だったかな。友だち周りで細々とやっていたのですが……ビジネスとして成立せず辞めることに。その後、「アマチュアカメラマンと旅行者のマッチングサービス」をはじめました。友だちと旅行に行ったとき、自然な姿を写真におさめてくれるカメラマンがいたらいいなと思って。1回のマッチングで仲介料は500円。自宅で黙々とやっていたのですが、「ビジネスとして成り立っていない、ボランティアと同じだ」と親にバカにされて……一生懸命やっていたので結構傷つきました。

ーーやはりふたりとも学生時代から、「起業」の前兆とも呼べるような行動はされていたんですね。「b-monster」を立ち上げるきっかけとなったのは?

美樹 うちの家族は、お正月に必ず「今年の抱負」を語るんですが、その年は、私も妹も「ボクシングジムで5kg痩せる」ことだったんです。それで、ふたりで近所のボクシングジムに行ったら、思っていたのと全然違って。「女性歓迎!」と謳っているわりに、ロッカールームが充実していなかったり、シャワールームが清潔じゃなかったり。あと、パンチのフォームを重視し過ぎて、その日のトライアルでは汗もかかずゆっくりジャブをやるだけ。「これじゃいつまで経っても速いパンチは打たせてもらえないな」と。

眞琴 私は鏡ごしに姉と目が合うのが気まずいというか、自分の頑張っている姿を、見られるのが嫌でしたね。それは姉じゃなくても同じこと。プライベートな空間が欲しいと思いました。

美樹 そんな出来事をSNSに書いて投稿したら、NYに住む友人から「NYでは暗闇ボクシングが流行ってるよ」という情報をもらって。ちょうどNY旅行の予定があったので、後日、そのジムに行ってみたんです。青い照明だけがポーンポーンと点滅するだけの暗闇の中、ガンガンに音楽が流れていて……! パンチのフォームなんてめちゃくちゃだったけど、周りの視線を気にすることなく夢中で身体を動かすのがとにかく気持ちよくて。終わったあとの達成感と爽快感に感動しました。

眞琴 それで「これを日本に持ち帰ってふたりでやろう!」となったんです。

ーーとはいえ、実現するのは簡単なことではないですよね。しかも当時、眞琴さんは、まだ学生だったとか?

眞琴 そうです。ちょうど3年のときだったのですが、将来のビジョンが見えず、学校に通う意味も見いだせなくなっていた時期で。だったらもう辞めちゃおうかなとちょうど思っていたんです。

美樹 私も、とくにやりたい仕事がなかったので、社会勉強のつもりで親の会社に入るつもりでいました。ただ、望んでいた道ではなかったので、やっと「やりたいことが見つかった!」と、うれしい気持ちでいっぱいでした。やると決まってからは早かったですね。その翌月には会社を立ち上げて、その3ヵ月後には1店舗目を銀座にオープンさせました。「b-monster」に通うことが、その人のステイタスになるようなジムにしたかったので、女性の憧れであり、おしゃれな街がいい。となると、やっぱり「銀座」かなって。

ーー店舗を作るにも多額な資本金が必要ですよね。しかも、銀座となるとなおさら……。不安はなかったでしょうか?

眞琴 銀座はとくに土地が高いので、1店舗作るのにだいたい2億円くらいかかるのですが、不思議と不安はなかったですね。「絶対コレだ!」という確信があったので、上手くいかないという発想はびっくりするほどなかった。資本金を出資してもらうには、まずいちばんに会社としての信頼が必要ですが、親の会社のグループ会社にしたので……その選択はかなり大きな利点になりました。

ジムの名前は私が考えたのですが、モハメド・アリの有名な言葉「Float like a Butterfly, sting like a Bee(蝶のように舞い、蜂のように刺す)」にあやかっての「B」。そして、会社もジムに来る人たちもみんな、「怪物(monster)=想像を超えた存在であれ!」という思いを込めて「b-monster」にしました。

ーーインストラクターはどのようにして集められたのでしょう?

美樹 インストラクターは「b-monster」いちばんの強みでもあるのですが、はじめは、フィットネス・インストラクター専門の転職サイトに求人広告を出してそこから集めた10人からのスタートでした。でも、それ以降なかなか良いめぐり逢いがなくて。「なぜだろう?」と考えたとき、気づいたんです。私たちが作りたいのは、従来のフィットネスジムとは違う、エンターテイメントなスタジオ。フィットネス経験者だと、そもそもリズムの取り方からして違う……。そこで、求人広告を出すサイトを変えて、「未経験者OK!」「クラブ好き大歓迎!」と打ち出したんです。そしたら、それが大正解! ダンサーやアパレル出身者など、いわゆるフィットネス・インストラクターではない、まさに私たちが求めるエンターテイメント性にぴったりの人たちが見つかったんです。そうして選び抜いたのが、今のインストラクターたちです。

眞琴 ボクシングのフォームは4種類あるのですが、まずそれをマスターすれば、あとはリズム感というか、その人が持つセンスがすべて。すでにそこが備わっている人ならば、インストラクター未経験でもだいたい1ヵ月くらいでデビューできます。

美樹 あとはもう口頭で説明するのにも限界があるので、「私たちがやりたいのはこういうことです!」というのを理解してもらうために、初期メンバーの10人には、私たちが「b-monster」を立ち上げるきっかけとなったNYのジムに行き、実際に体感してもらいました。

ーービジネスをするうえで、大切にしていることは?

眞琴 スピード感ですね。これは経営者でもある父の教えでもあるのですが、「思い立ったらすぐ実行する」というのは、ビジネスに関わらず大切にしています。例えば、「テニスを習おうと思うんだよね」と話したら、「なんでやらないの? 習ってから報告してくれれば良いのに」なんてことを、幼い頃からよく言われていました。なので、高校生のときも、誰にも相談せず勝手に留学の斡旋会社に行き、「1ヵ月後に行くから!」と、あとは親のサインをもらうだけの契約書を渡したことも(笑)。

経営者(両親)が身近にいるというのは、すごくありがたい環境だと思います。私たちが当たり前のことだと思ってやってきたことが、経営に関わる重要なことだったとあとで知ることも多いので。

美樹 経営にまつわる本などに、よく「社員を家族のように考える」と書いてあるけれど、正直、きれいごとだと思ってました。でも、それを体現する両親と会社のスタッフたちを見ていると、そこにはしっかりと信頼が築かれていて。見習うべきことがたくさんあります。

ーー今後の目標はありますか?

眞琴 いつかNYに店舗を出したいですね。3年前、私たちの人生を変えるきかけとなったNYのボクシングジムに、あれから2~3回行ったのですが、2店舗目をオープンさせてはいるものの、内装も音楽もあまり変わっていなくて。

美樹 私たちは、それを日本で進化させたという自負があります。これまでやってきたことがNYで受け入れられるのか挑戦してみたい!

「実はリズム感が全然ないんです」と笑うのは、おっとり口調の姉・美樹さん。意見の食い違いがあるときは、「姉は頑固なので、だいたい私が折れます」と、妹の眞琴さん。性格は正反対だというふたり。起業してたったの3年で、年商22億円を達成した彼女たちのこと、NY進出の夢もあっさりと叶えてしまうに違いない。

  • 取材・文大森奈奈撮影田中祐介

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