「不安なのにな~んにもしてない」女子が今始めるべき3つの投資術
「このまま独身だったら将来どうしよう」
「いい加減、ちゃんと貯金しないとヤバい!」
迫り来る老後に不安を抱いているわりに、人気レストランでの食事においしいワイン、アンチエイジングのためのエステやブランドの服や靴など目前の誘惑にあっさり負けてしまっている方も多いのではないでしょうか? そんな、結果「なんにもしてない」30代女子のみなさん。そろそろ老後の生活に向け、お金の準備を進めませんか?
ということで、不安なのになんにもしてない30代女子代表・ライターAが、『「不安なのにな~んにもしてない」女子のお金入門』の著者・ファイナンシャルプランナー荒木千秋さんにガチ相談。「こんなひどい人はなかなか……」と苦笑されたレベルでも「今からやっておけばなんとかなる」という3つの投資術を教わった。
ライターA 「はじめまして。まずは私の自己紹介から。職業はフリーランスのライター。39歳独身。その年によって変動はありますが、年収はだいたい650万円程度。家賃は13万円。車はなし。貯金は『してます!』と胸をはって言えないレベル。一応彼氏はいますが、結婚の予定は今のところありません」
荒木さん 「はじめまして。まずはAさんが日本の平均寿命の80歳まで生きるとして、どれくらい貯金があったら安心か計算していきましょう。とはいえ、人それぞれ理想の生活は違うので、まずはAさんの現在の生活レベルを知るためにも、年間支出から教えてください」
ライターA 「家賃は13万円なので、年間156万円。あとは、食費、洋服、趣味……えっといくらくらいだろう。ん~」
全く把握していないので数字が出てこない汗。荒木さん、早くも失笑……。
ライターA 「食費はたぶん月10万くらい。その他は月20~30万くらいでしょうか」
荒木 「その他を自由に使えるお金=雑費として月20万円としましょう。となると、年間、家賃156万円+食費120万円+雑費240万円=516万円の支出があります。Aさんの収入額から計算すると、ざっと年間84万円は貯金ができているはずです。いかがですか?」
ライターA 「……。たぶん年間50万はしているとは思うのですが、口座から引き出したり、また戻したりして、増えたり減ったりを繰り返しています」
自分がいくら貯金しているか把握していない……。ほんとヤバイ。
荒木 「例えば、今の生活を60歳まで送るとして、年間50万円ずつ貯金をし続けたとしたら、60歳で約1000万円貯まります」
ライターA 「おぉ~」
「1000万円」という金額を聞けて、根拠なくちょっとうれしい。ようやく頬を緩ませる私に、周囲が若干引いてる!? あれ?
荒木 「仮に60歳まで働くとしますよね。そしたら60歳からは当然収入はゼロ。まず、年金は20歳~60歳まできちんと払っていることを前提に、65歳からは年間78万円の基礎年金がもらえます。会社員の人は、厚生年金なのでもう少しもらえるのですが、Aさんはフリーランスなので78万円になります。今は食費に年間120万円かけていますが、60歳のときはその7割程度になるとして年間84万円。どうでしょう? 78万円の年金では明らかに暮らせませんよね?
つまり、Aさんの今の生活をこのまま続けて、80歳まで生きるとして計算すると、安心して暮らせるための貯金は60歳の時点で約1億円ないといけません」
ライターA 「1億円!? へ~」
金額があまりに大きすぎてショックすら受けていないどころか、まるで他人事のような反応をする私。
荒木 「(優しく諭すように)余裕のある暮らしを送っている夫婦で、生活にかかる全ての支出が毎月27万円と言われているんですよ。年間324万円くらいですね。その場合、60歳までに3000万円の貯金があれば安心です。一方で、Aさんは支出が年間516万円くらいなので、必要貯金額は1億円。現状、ほぼ1億円の赤字ということになりますね」
ライターA 「ひとりなのに……。先生、どうしましょう!」
ようやく状況を飲み込み、その途方もない金額に泣きそうになる私。
荒木 「そこで見直さないといけないのが住居費。もし実家が持ち家ならば、ゆくゆくは住居費をゼロにできるケースもあります。60歳からの住居費をゼロとして計算すると、1億円の赤字が7000万円まで抑えられます。高齢者になったときの住居については、よく考えておいたほうが良いですね」
ライターA 「それでも、7000万円の赤字……。い、今からでも生活を見直したら、なんとかなるんでしょうか?」
荒木 「もちろん。大丈夫ですので安心してください。でも、ただ毎月貯金をしていくだけではダメ。毎月の貯金に加え、+αの蓄えが必要となってきます。そこで、今すぐ始めていただきたい3つの投資術をお教えしましょう」
その1 2000円で返礼品がもらえる楽しい制度「ふるさと納税」
「なんにもしていない人に、まず始めていただきたいのが『ふるさと納税』。“納税”と聞くだけで難しそうに捉えられがちですが、実はとても楽しくておトクな制度なんです。地方自治体に寄付したお金の分だけ、支払うべき税金が安くなる上、お返しの品としてその自治体の特産品を受け取ることがきます。最低自己負担として2000円は支払いますが、返礼品の価格を考えれば断然おトク。例えば、沖縄県の浦添市に1万円の寄付をすれば、オリオンビール1ダースの返礼品がもらえます。そして、その翌年に確定申告をすれば、寄付金額分から自己負担金2000円(年間)を差し引いた8000円が還付金として戻ってきます。つまり、実質2000円で1ダースのオリオンビールがもらえるということ。Aさんの年収なら、大体7万7000円まで寄付できるので、自己負担2000円だけで、オリオンビール7ダースは確実にもらえますね(笑)。返礼品は、お肉や野菜、お酒のほかに、温泉宿の宿泊券や調理器具など種類はさまざま。寄付金額は、年収によって上限があるので、『ふるさと納税』の各サイトにあるシミュレーションで、自分の上限寄付金額を調べてみてください」(ファイナンシャルプランナー荒木千秋さん 以下同)
その2 持ち金を減らさずに節税できるおいしい年金「iDeCo(イデコ)」
「20歳から60歳まで毎月支払う公的年金とは別に、自分で年金を積み立てて、そのお金を定期預金や投資信託などで運用する制度『iDeCo』とは、『個人型確定拠出年金』のこと。お金が貯まるだけじゃなく、年金として拠出したお金は、全額『所得控除』の対象になるので、所得税と翌年の住民税が軽減される節税効果がいちばんの魅力です。Aさんのようにフリーランスの人は、拠出金額(掛け金)が6万8000円までと決まっています。なので、毎月6万8000円の積み立てを60歳まであと20年続けて定期預金で運用すると、約1600万円貯まります。さらに、Aさんの所得税が10%だとしたら、年間で約16万円(所得税10%分+住民税10%分)の税金が戻ってくる。これなら、80歳まで生きるとすれば、60歳から毎月6万円支給される計算になります。このように定期預金ができて税還付だけがもらえる元本確保型のほかに、将来受け取れる金額が増える可能性のある投資信託で運用する元本変動型もあります。不安な人は、掛け金の8割を元本確保、2割を投資信託と組み合わせることもできます」
その3 誰でも簡単にできる初心者向けの投資制度「NISA(ニーサ)」
「一般的に投資と呼ばれるものは、利益が出ると利益に対して約20%の税金がかかります。でも、NISAなら利益に対してかかる税金はゼロ。例えば1万円の利益が出た場合、本来ならば2000円差し引かれるところが、1万円まるまる受け取れるということ。20%の税金と聞いてピンと来ない人も多いかもしれませんが、実はこれってめちゃくちゃ大きな魅力なんです。非課税期間が最大20年間の『つみたてNISA』と5年間の『一般NISA』の2種類があるので、タイプによってその内容は大きく変わってきます。
例えば、長期の積み立てを前提とする前者は、対象商品が投資信託・ETFのみ。投資対象があらかじめラインナップされていて選びやすいのと、毎月決まった金額で買い続けられるので、相場が上がっても下がっても投資のタイミングがずらせるため、リスクが軽減できるという利点があります。はじめから毎月の投資額を3万円とかにすると心理的な負担が大きいと思うので、まずは1000円、5000円単位からはじめて、慣れてきたところで金額をアップすることが可能です。
一方で後者の『一般NISA』は、投資の対象商品の種類が幅広く、一括で買うことも、積み立てを利用することもでき、自分のタイミングで自由に投資ができるのがポイントです。いずれにせよ利益に対して税金はかかりませんし、少額からスタートできるので初心者にはうってつけの投資制度です」
まとめ
へらへらと笑いながらインタビュー(という名の相談)に挑んだはずが、中盤からその笑顔は消え深刻な面持ちに変わったライターA。「今までのどんぶり勘定を1回だけ頑張って精算してみてください。自分が一体どれだけのお金を使っているのか、数字で見ることで、これからのお金の使い方は全然変わってくると思います。まずは支出を把握することが大切です。これからでもまだ間に合いますのでがんばってくださいね!」という荒木さんの優しい言葉に、最後は救われた気になり取材は終了。とはいえ、これは“ピンピンコロリ”の場合。3つの投資術を取り入れつつも、もしものときのために、自分でコツコツ貯金をしておくことと、健康であることが何よりも重要なのだと気づかされる。
「なんにもしてない」30代女子のみなさん、1回のディナーにかける1万円を「ふるさと納税」に、1回のエステにかける1万円を「iDeCo」に。余裕があれば1回の飲み代を「NISA」へまわしてみるのはどうだろう。あと20年、30年後に迫り来る“老後”のためにーー。
荒木千秋 荒木FP事務所代表。ファイナンシャルプランナー。1983年生
- 写真:アフロ