この時期だけの奇跡の絶景! 新緑が眩しい初夏の鉄道風景5

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若葉が芽吹く季節。気候もよく、旅をするのに絶好の季節だ。飛行機で目的地へひとっ飛びするのもいいけれど、たまには列車に乗って旅したい。列車を利用すれば、移動中そのものが旅。土地の名物を楽しみながら、車窓の景色をゆっくり眺める。初夏だからこその列車旅の絶景を、鉄道写真家の村上悠太さんに紹介してもらった。

JR東日本 秋田新幹線

緑の中を走り抜ける真っ赤な新幹線。このあたりから徐々に峠に入り、川越えも始まる

在来線をゆっくり走る新幹線。新緑に染まる山間を赤いボディが峠越え

スタイリッシュな赤いボディで、日本最速時速320㎞で走る秋田新幹線「こまち」。盛岡駅で東北新幹線「はやぶさ」と別れ、秋田に向かう。

「ここからが楽しいんです。奥羽本線の一部と田沢湖線の線路は新幹線用のレール幅になっていて、新幹線が在来線を、しかも単線を走るんです。ふつう、新幹線の線路の両脇には防音壁が立てられていて、少し下の方の景色が見づらいことがありますが、この区間は在来線を走るので防音壁がないんです。北東北の山々や田んぼを眺めていると、だんだん山の中に入っていく。5月中旬から下旬にかけて新緑が楽しめます。

それまで時速320㎞でかっとばしていた新幹線が、とたんにゆっくりになるんです。仙岩峠に入ると、さらにゆっくりになって、新幹線が峠越えをする。その間、何度も川を渡ったりもします。こんな楽しみ方ができるのは、秋田新幹線の大きな魅力です」(村上さん 以下同)

盛岡から一気に秋田まで行ってもいいけれど、途中田沢湖駅で降り、温泉を楽しむのも一興。田沢湖駅は乳頭温泉などの温泉への玄関口。温泉でゆっくりして、翌日また新緑の中を走るのも楽しい。

JR北海道 根室本線

厚岸湖に沿って走る1両だけの列車。「自然の中にどこまでも続くレール。これも北海道だけの景色です」

厚岸湖に浮かぶ緑の小島。日本離れしたスケール感のある景色が広がる

釧路~根室間を走る根室本線。絶景が広がるのは、厚岸駅を出てしばらくしてからだ。

「釧路からはずっと内陸を走るんですけど、厚岸駅を出発してしばらく走ると、突然目の前に厚岸湖が現れる。5月下旬ぐらいになると、雪が溶けて、湖に浮かぶ小島の木々が芽吹き始めるんです。湖の青と小島の緑が本当にきれい。その景色がしばらく続く。ここが日本だと思えないスケール感です」

厚岸はカキの産地として有名。厚岸の駅前には「氏家待合所」という“カキめし弁当”販売所があり、到着2時間前までに電話をすると、ひとつでも駅弁をホームまで届けてくれる。

「それを食べながら景色を眺めてもいいし、厚岸駅で降りて、駅の近くにある道の駅でカキ料理を楽しむのもおすすめです」

JR九州 肥薩線

球磨川沿いを走る「かわせみ やませみ」。「このときは珍しくまったく風がなく、水鏡の景色を撮ることができました」

鏡のように周囲の景色を写す球磨川。川霧も出てロマンチック

名前のとおり熊本県(肥後)の八代と鹿児島県(薩摩)の隼人を結ぶ路線。

「全線見どころ満載で、山の風景も川の風景も楽しめる。途中、矢岳(やたけ)高原県立自然公園の近くを走るときには、日本三大車窓の一つ、“えびの盆地と霧島連山”の景色も楽しめます。山を越えるループ線やスイッチバックもあるし、古い駅舎もたくさん残っていて、全線乗りとおすだけで楽しい」

そんな絶景満載の肥薩線の中でも、村上さんおすすめのエリアは、八代から人吉の間の球磨川沿いの景色だ。

「5月は新緑が美しく、始発に乗ると川霧が出るんです。朝は風が吹くことが少なく、球磨川の川面が水鏡のようになる。車窓から、新緑を写す水鏡を楽しむことができます。

八代駅に『鮎屋三代』という駅弁があるのですが、これをぜひ食べてほしい。アユが1尾丸ごと乗っているんです。そして球磨焼酎を飲みながら、球磨川を眺める。最高ですね」

JR西日本 本四備讃線(瀬戸大橋線)

高松に向かって走る快速マリンライナー。「指定席をとるときは、線路越しの景色にならない進行方向左側がおすすめです」

海の上を走る唯一の路線。多島美を堪能しつつ、海を赤く染める夕景も

岡山―高松間にかかる瀬戸大橋を走る路線。海の上を走るのは、日本全国でこの路線だけだ。

「海の景色は1年中すばらしいんですけど、とくに太陽の位置が高くなる夏至近くになる5月下旬から6月ごろは、海の青さの深さが違う。“多島美”というのは、瀬戸内海などの島がたくさんある場所の美しさを表す言葉ですけど、瀬戸大橋の上から眺めるので、“多島美”も堪能できる。夕方に乗ると、夕陽に海面がきらめいて、とてもきれいです」

瀬戸大橋を走るのは、「快速マリンライナー」と、寝台列車「サンライズ瀬戸」。「サンライズ瀬戸」は東京―高松を結ぶ寝台列車で、瀬戸大橋を通るのは朝か夜になる。夕景を眺めるなら、「快速マリンライナー」がおすすめだ。

「『快速マリンライナー』は、通勤列車としても使われているので、混んでいると座れないこともあります。車両の一部は2階建てになっていて、運転席の後ろの席と2階がグリーン車。ちょっとゴージャスに景色を楽しめるグリーン車もおすすめです」

「サンライズ瀬戸」で朝の風景を眺めながら高松へ行き、夕方まで高松を観光し、「快速マリンライナー」で夕景を見るという方法もある。

「高松に行ったら、ぜひ“うどん”と“骨付き鶏”を食べてほしい。“骨付き鶏”には、ヒナ鶏と親鶏があって、親鶏は肉がちょっと硬いんですが、その硬さとビールがよく合うんです。岡山は“まつり寿司”をぜひ!」

津軽鉄道

駅前の芦野公園でさくらまつりを楽しむ人々。今年は4月27日から5月6日に予定されている

桜のトンネルをくぐり、芦野公園駅で桜まつりに参加して東北の春を満喫

津軽五所川原~津軽中里間を走る津軽鉄道。冬の間、ストーブ列車が走る路線としても知られている。東北の桜が咲き始めるのは4月下旬から。桜の季節になると、芦野公園駅近くの路線は桜のトンネルで覆われ、列車は桜の中を走る。

「東北の冬は厳しい。とくにこのへんは地吹雪が起こり、撮影に行っても雪で列車が見えなくなるほど。雪が溶けて、春が来るのをみんな待ちわびている。桜が咲き始めるころになると、『春が来た!』という喜びが爆発する。そんな東北の人々と触れ合うのが、僕はとても好きなんです」

芦野公園駅の前には芦野公園があり、毎年“さくらまつり”が開かれる。

「駅や公園周辺には1500本の桜の木があって、そこに屋台がたくさん出て、みんなが笑顔で写真を撮り合っている。そこにいるだけで幸せな気持ちになれる場所も、僕にとって絶景。ぜひ、その絶景に触れてほしいと思います」

五所川原は、絶景路線として有名な五能線の発着駅でもある。新幹線で新青森まで行き、新青森から「リゾートしらかみ」に乗って五所川原へ。そこから津軽鉄道に乗り換えれば、さまざまな絶景を楽しむことができる。

ここで紹介した写真はすべてドローンを使わず、丘の上に登ったり、川に足をつけながら撮影したもの。車窓からも、写真と同じような景色が眺められるという。あちこち観光地を巡るのも楽しいが、たまにはゆっくり車窓からの景色を楽しむ旅もいいかもしれない。

村上悠太 鉄道写真家。高校時代に毎夏に北海道東川町で開催されている「写真甲子園」に出場。日本大学芸術学部写真学科卒業。2017年に独立し、フリーランスの鉄道写真家として、鉄道誌、旅行誌、カメラ誌を中心に活躍。『鉄道ダイヤ情報』で「突撃!ユータアニキ 鉄道英雄完全密着」連載中!

  • 取材・文中川いづみ撮影村上悠太

Photo Gallary5

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