「ハングリー」でOK!世界を旅するヒロシの海外食堂の探し方
キャンプ動画と旅番組で活躍中
2004年に「ヒロシです」のネタでブレイクしたヒロシ。現在は大のキャンプ好きという趣味を活かし、“芸人兼ソロキャンプYouTuber”として活動中で、2015年3月に開設したYouTube「ヒロシちゃんねる」では登録者数36万人を誇る人気ぶりだ。
一方テレビでは、“毎回海外の駅前で、ただただ食堂を探して地元の料理を食べる”という番組『迷宮グルメ 異郷の駅前食堂』(BS朝日 毎週火曜23:00~)が人気を集めている。
そこで、今後海外旅行へ行く予定の人、『迷宮グルメ』的な旅をしたいと思っている人に向けてのアドバイス、番組での苦労などを語ってもらった。
――『迷宮グルメ』放送開始から約1年たちました。振り返ってみていかがですか?
「行く国や降りる駅によって街や人が全然違いますからね……。慣れるということがないですね~。う~ん。とにかくスケジュールがハードです……。現地に行ったら、朝からロケしてひたすら歩き続けていますから……。キツい思い出が多いです……」

――ずいぶんと過酷なロケのようですね……。その中で印象的な国はありますか?
「普段、自分の旅行では絶対にいかないような場所ばかりなので全部印象に残っていますけど、おすすめ的な意味ではトルコですね。番組で一番初めに行った国がトルコなんです。僕は全然知らなかったんですけど、トルコは親日国でとてもよかったんですよ。人は優しいし、食べ物もおいしい。最初の国がトルコで本当によかったと思います。現地の人によくしてもらったことが番組を続ける原動力になってると思います」
――ヒロシさんと同じように、旅先で知らない駅でふらっと降りて食堂を探してみたいという人にとってトルコはよさそうですね。
「番組みいたいなことをやってみたいと思ったらトルコはおすすめですよ。優しいし、食べ物の種類も多くておいしいし、気候、安全面をみてもトータルでよいと思います。みんなすぐにチャイを飲ませてくれるし。歩いていても気持ちよかったです。街並みもきれいで気候もよくて」

「グ~」でもいいんじゃないですか。日本語ですけど。
――番組を通じて、おいしい店を選ぶコツは身につきましたか?
「やっぱり人ですよね~。店員さんの対応で店の印象も変わりますからね。顔をしかめられたりしたらそこで食事するのはやめますよ。快く対応してくれる店は雰囲気もいい。店員さんの人柄がお店に出るんですよ」
――“店員さんの人柄が大切”って世界共通なんですね。
「あとは衛生面かな~。心配性なんで、お惣菜を選んで注文するような店だと、ちゃんとガラスケースに入っているかどうかをチェックしますよ。ガラスケース、大事です」

――そこは気になるところですね。現地の人に食堂の場所を聞いたりして店を探しますけど、番組を見ている限りでは意外とスムーズにお店が見つかりますよね。
「いやいやいや! オンエアの100倍は話しかけていますよ……。番組で放送されているのはほんの一部。ずいぶん怪訝な顔されたり、逃げられたりもしています。だって、カメラさんとかスタッフも一緒ですから。突然撮影クルーが迫ってきたら、やっぱり『え? なになに⁉』って警戒されますよ。日本だってそうじゃないですか~」


――そうですねよ……。現地の人とは英語でコミュニケーションをとっていますが、通じるものですか?
「一応英語のつもりなんですけど、僕はまったくしゃべれませんからね……。まぁ、それでもなんとかなるんですよ、これが」
――たしかに、番組を見ていると毎回なんとかなっている印象です。ヒロシさんの経験上、食堂を探すときに役立つ英語を教えてください。
「『ハングリー』です」
――(笑)。たしかにいつもそうやってアピールしていますね。
「『ハングリー』って言えば大概の人はわかってくれます。『ハングリー』じゃなくても、お腹を押さえて『グ~、グ~』(お腹が鳴る音)って言ったりとか。まぁ、『グ~』は日本語の擬音だと思うんですけど、通じますから」
行く方向、レストラン、交渉もヒロシ主導
――番組を見ていても、日本語なのになんとなく通じていることもありますね。現地の料理を食べたい場合は?
「『トラディショナルフード』、『ナンバーワンフード』、『ベストフード』、『グッドフード』でなんとかなります。もうね、日本人はスマートに伝えようとしたり、1回言って伝わらなかったら恥ずかしがったり、あきらめたりするじゃないですか。スマートさはいらないんです。伝わらなかったら何回でも言ったらいいし、紙に書いたっていいんですよ」
――番組でもイマイチ会話がかみ合ってなくても、結果的に地元のおいしいものを食べることができていますもんね。
「国や街によっては同じ料理の店ばかりだったりするので毎回大変ですよ。ヨーロッパだと結局パスタやピザの店が多いんですよ。それだと面白くないでしょう。だから毎回必死でお店を探しているんです。もうね、パスタとかピザでいいじゃないって言ってるんですけど……」

――番組的に毎回パスタではダメでしょう……。お店探しはヒロシさんが主導ですか?
「そうですよ。駅を降りてどっちに行くかとか、すべて自分で決めています」
――生活感あふれる路地とかに平気で入っていきますよね。食堂だけでなく、雑貨店や露店にも立ち寄ったりして。
「それがいいんですよね~。行き当たりばったりな旅が好きなんです。観光地とかどうでもよくて。プライベートの旅行でもそんな感じ。人がいないところを歩いていると、いろいろな発見があって楽しいですよ。町の雑貨店に行けばその場所の暮らしが分かりますし、結構買い物もしてます。そうだ! 大事なことがあって、クロアチアでキャンプ用にと中古のオイルランタンを買ったんですけど、中古だと一度オイルを使っていて危険だからという理由で国外に持ち出せないんですよ。新品だったらOKなんですけど。みなさんも気をつけてください」
――キャンプ好きらしいアドバイス(笑)。番組ではヒロシさんの旅のスタイルがかなり反映されているんですね。
「大学生のときにイギリスとフランスへ、初めて海外旅行に行ったんです。そのときは友人と2人だったんですけど、相手がとにかくスケジュールをぎっしり詰め込んで、いろいろな観光地をめぐりたいタイプだったんです。最初は我慢してたんですけど、だんだん辛くなって、途中から“オレはいいや、一人で行ってきて”って。そこで初めて、自分は人に合わせたり、パックツアーでスケジュール通りに動く旅がまったく向いていないことに気づいたんです。だから番組のような旅は好きなんですよ」
――『迷宮グルメ』のファンはそういうタイプの人が多そうですね。
「僕みたいなタイプだったら番組のような旅は面白いと思います。それに撮影の時は、食堂で『撮影してもいいですか?』という交渉をしていますけど、普通の旅行だったらそんな交渉必要ないですからね。ずいぶん楽ですよ……」
――確かに撮影交渉も自分でやっていますね。
「もう、大変ですよ。まぁ、普通の旅だったら言葉が伝わらないのも醍醐味じゃないですか。それにね、もうひとつ大事なこと。旅先でおいしいものだけ食べようなんて考えは甘いですよ!」
――番組でもおいしくないものを食べていると……?
「詳しくは言いませんが……。おいしいものと同じくらい、マズいものも思い出ですよ。そういうことまで楽しむ心のゆとりがないと、番組のような旅はできません。“マズいものでお腹が満たされていく苦痛”を味わう覚悟があるか! ということです……」
――いろいろな苦労があるようで……。では、逆においしかった思い出の味はなんですか?
「韓国の焼き肉がおいしかったですね~。テジカルビがウマかったな~。あれは我ながらいい店といいメニューを見つけたな、と。それと、トルコのパン! またトルコの話になりますけど、それくらいよかった。安くて大きくて、焼き立てがすごくおいしい。そんなパン屋がいたるところにあるんですよ。トルコに行ったらパンがおすすめです。日本でも近所にあったら毎日食べたいくらい。それと、ミャンマーも食べ物がおいしかったですね。日本人に合う味だと思います」

――番組ではすでに20近い国を旅していますが、これから行ってみたい国はありますか?
「北欧の国に行ってみたいと思っていたのですが……」
――ですが?
「実は先日行われた『第一回サウナ温め選手権 日本大会』で優勝して、フィンランドで7月6日に開催される『サウナ温め選手権 世界大会』に出場できることになったので、北欧に行ってきます」
――そんな大会があるんですね。
「いつも一緒にやっているソロキャンプグループ『焚火会』で出場して優勝しました。本気でフィンランドに行きたかったので、出場することを一切知らせずに集中しましたから」
――芸人なのに告知も露出もなしで……。では、フィンランドでも地元のおいしい食堂探しがんばってください!
「いや……、そこはキャンプしますよ」
――ですよね……。
ヒロシ 1972年生まれ、熊本県出身。2004年に「ヒロシです」のネタでブレイク。近年では、自身が自ら趣味であるソロキャンプ動画の撮影編集を行うYouTube「ヒロシちゃんねる」が人気を博す。「ヒロシです。」「ヒロシです。2」(ともに扶桑社)、「ネガティブに生きる。~ヒロシの自虐的幸福論」(大和書房)、「働き方1.9 君も好きなことだけして生きていける」(講談社)など著書多数。
取材・文:高橋ダイスケ撮影:米沢 耕(インタビュー)