全国で頻発!暴走する高齢ドライバー事故を止めろ | FRIDAYデジタル

全国で頻発!暴走する高齢ドライバー事故を止めろ

東京・池袋では87歳元高級官僚が母子をひき殺す惨劇が発生

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東京・池袋の事故現場。右上が大破した加害者のプリウス。松永真菜さん(31)と莉子ちゃん(3)の母子が亡くなった。二人が乗っていた自転車が無残に壊れている
東京・池袋の事故現場。右上が大破した加害者のプリウス。松永真菜さん(31)と莉子ちゃん(3)の母子が亡くなった。二人が乗っていた自転車が無残に壊れている

「高齢者は運転歴が長いため、自分は大丈夫だと過信している人が多い。若い頃に事故を起こしていなければ、なおさらです。本人は、視野が狭くなり注意力が落ちていることに気づいていない。自動車学校の先生によると、高齢者が『(標識などを)確認している』と言っても、実際には認識していないことがほとんどだそうです。特に公共交通機関の少ない地方では、高齢者が車を運転する機会が多く事故のリスクが高まっています」

こう語るのは、運転行動が専門の名城大学理工学部・中野倫明(ともあき)教授だ。

4月19日、東京・池袋の交差点で惨劇が起きた。車が150mにわたり暴走し母子2人をひき殺し、8人が重軽傷を負ったのだ。目撃した20代の男性が話す。

「グレーのプリウスが、ものスゴいスピードで走ってきたんです。『ドーン!』という凄まじい音を立てゴミ収集車と激突。はずみでスピンしながら横断歩道に突っ込むと、歩行者を次々となぎ倒していきました。黒い自転車に乗っていた若い女性と小さな女の子が、6mぐらい吹っ飛ばされたのを覚えています」

プリウスに乗っていたのは、旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長。87歳だ。自宅(東京都板橋区)近くの住民が話す。

「1年ほど前から右脚を引きずり、杖をついてヨロヨロと歩いていました。『脚の関節を痛めて通院しているんだ』と話していた。それでも運転を止めようとしないので『危ないな』と思っていました」

飯塚氏は警察の調べに対し、「アクセルが戻らなくなった」と説明。事故現場にはブレーキ痕がなく、スピードを上げ続けていたとみられる――。

加害者家族も賠償1億円

高齢ドライバーの事故が後を絶たない(下表参照)。警察庁によると、75歳以上の運転免許証保有者数は約560万人。10年前の2倍近くに増えている。また昨年死亡事故を起こした高齢ドライバーは、前年比42人増の460人に急増。全体に占める割合は約15%と過去最高なのだ。前出の中野教授が解説する。

「高齢者が交通事故を起こす原因は、大きく三つあります。一つは目の問題。視野が狭まり、対向車や歩行者を見逃してしまうのです。二つ目が判断力の問題。ブレーキとアクセルを踏み間違えても、自分が間違えたと気づくまで時間がかかります。間違いに気づいても、ブレーキに踏みかえなければという判断が遅れてしまうんです。三つ目が思い込み。7割の高齢者が、運転に自信を持っているという調査結果もあります」

事故を起こせば、高齢者といえども責任は免れない。交通事故を多く扱う、藤原寿人(ひさと)弁護士が語る。

「加害者本人(運転手)が、責任を負うのが原則です。ただ認知症などで責任能力が認められなければ、加害者の監督者(家族)が責任を負うこともありえます。賠償額は数千万円から1億円ほど。被害者が事故に遭わなかったら、その後の人生でいくら稼いでいたかという試算で金額が違ってきます。被害者に寝たきりになるほどの障害が残れば、死亡と同等か、それ以上の賠償額が必要になる。治療費や介護費用などが加算されるからです」

東京地検特捜部長などを歴任した、弁護士の石川達紘(たつひろ)氏(80)も運転中に死亡事故を起こしている。

「昨年2月、東京都港区の金物店に石川氏の運転するレクサスが時速100㎞以上で突っ込んだんです。歩道を歩いていた37歳の男性が、ボンネットと店のシャッターに挟まれ亡くなりました。取り調べに対し石川氏は『車が勝手に暴走した』と話していましたが、車体に異常がなかったことが判明。今年3月に在宅起訴されました」(全国紙社会部記者)

事故の多発で警察庁は、高齢ドライバーに免許証を返納するようにうながしている。前出の中野教授が話す。

「’17年1月に開かれた高齢ドライバーの交通事故に関する有識者会議では、免許更新か返納かの二者択一ではなく、運転できる時間や地域に制約を設ける限定免許の導入を検討しています。また高齢ドライバー事故を止める、新しい機能も開発されている。間違えてアクセルを踏んでも急発進しない加速抑制装置や、脚の力の弱い人のためのブレーキアシストなどです。高齢者には、こうした機能を取り入れることを推奨します」

池袋の事故現場には犠牲者を悼(いた)み、多くの花や飲み物が捧げられていた。

事故の翌日からは現場に多くの花が捧げられた。女児のためにか中には玩具やジュースも
事故の翌日からは現場に多くの花が捧げられた。女児のためにか中には玩具やジュースも
加害者の飯塚氏。東京大学を卒業後、’53年に通産省入省。’17年に免許証を更新したという
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’16年11月。東京都立川市の病院敷地内で83歳の女性が運転する車が暴走。見舞いに来ていた男女2人が死亡
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’18年3月。本誌カメラマンが目撃した事故現場。70代の男性が運転するタクシーが歩行者をはね飛ばした
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’18年2月。当時78歳の元東京地検特捜部長・石川氏(下写真)の運転する車が金物店に。逮捕されずに今年3月在宅起訴となった
’18年2月。当時78歳の元東京地検特捜部長・石川氏(下写真)の運転する車が金物店に。逮捕されずに今年3月在宅起訴となった

『FRIDAY』2019年5月10・17日号より

  • 写真結束武郎、濱﨑慎治、時事通信社

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