尾畠春夫さん スーパーボランティアは貯金ゼロでも豊かな暮らし
収入は2ヵ月1度の年金11万円だけ 社会のためにやりたいことがある!
「昨年の8月に、行方不明になった男の子を見つけ出して以来、有名になったのは実感してます。どこに行っても声をかけられますし、全国から食料や衣類など大量のモノも送られてくる。住所番地なしで、〈大分県スーパーボランティア宛〉で届くんですよ(笑)。感謝しかありません。でも、有名になっても私の生活は何も変わりません」
スーパーボランティアこと尾畠(おばた)春夫さん(79)は、相変わらず元気だった。
今年1月18日、東京都練馬区の中学校で講演をした尾畠さんは、大分県日出町の自宅までの約1100㎞を徒歩で帰ることにした。しかし連日、マスコミや見物人が大挙して押しかけ、渋滞が起きたり、パトカーが出動したりと、大騒動に。事故を懸念した尾畠さんは、2月23日に徒歩帰宅を断念した。
「飲み物をもらったり、一輪車をもらったり、本当にありがたかった。最後まで歩きたかったですが、仕方ありません」
大分県内で鮮魚店「魚春」を営んでいた尾畠さんは、65歳のときに店を畳んでボランティア生活に入った。収入は2ヵ月に1度の年金11万円だけで、貯金はゼロ。しかしそれでも、生活は豊かだ。
「いまは地元の由布岳登山道の整備のボランティアをしながら、気ままに暮らしています。毎朝8㎞走って、畑をやったり、温泉に入ったり。健康で元気に生きるには、食事も大切。私は昔から”うまいもの”は食べないようにしている。庭に生えているドクダミやヨモギ、シロツメクサを鍋で湯がいて食べています。ボランティアのときは、パックのメシに梅干しをのっけて水をかけて食べます。昔は浴びるようにのんでいた酒もタバコも一切やめました。
暮らしにカネはほとんどかかりません。ロープやら何やら、ボランティア道具はほとんど、拾い物から作りました。そうそう、クルマはダイハツから去年の年末にもらったものなんですよ。ボロボロの軽に乗っていたのを見かねて、最新式を無料でくれたんです。ただ、ガソリンがもったいないから、まだほとんど乗っていません(笑)」
尾畠さんは今年10月12日に、傘寿を迎える。しかしまだまだ、社会のためにやりたいことがあるようだ。
「いつか、沖縄のガマ(洞窟)に残された戦死者の遺骨を収集したい。綺麗に洗って、埋葬の手配をしてあげたいんです。もちろん、いつどこで大きな災害が起きるとも限らない。そん時には、すぐにでも飛んで行って自分にできることをやらせてもらいたい」
スーパーボランティア・尾畠さんの旅は、まだまだ続く。







『FRIDAY』2019年5月10・17日号より
撮影:濱﨑慎治