豊洲市場の「無法地帯化」が止まらない。二人乗り、スピード超過…
18年10月に開場して以来、死亡事故が2件発生している豊洲市場だが
死亡事故が2件も起きたのに、いったいなぜ……。豊洲市場(江東区)の”無法地帯化”が止まらない。
本誌は4月下旬、仲卸業者が店舗を構えて作業する水産仲卸売場棟の1階フロアに潜入。記者の眼前に広がる光景は、信じがたいものだった。
「ウィーン」というモーター音がしたかと思えば、小型運搬車ターレが記者の近くを猛スピードで走り抜ける。しかもなかには、二人乗りをしている者も少なくない。
昨年11月に発生した1件目の死亡事故は、ターレ三人乗りが原因である。カーブを曲がる際に、荷台に乗っていた女性が振り落とされたのだ。二人乗りは市場内のルールで厳格に禁じられているはずだが、なぜ一向になくならないのか。東京魚市場卸協同組合(通称・東卸)の三浦進理事がため息混じりに語る。
「理由は単純で、急いでいるからですよ。同じ方向にターレで向かう仲間がいたら、『ちょっと乗せてくれ』という感じです。私も最初は見かけるたびに注意していたんですが、多すぎてもう諦めました」
危険な禁止行為はほかにもある。市場内には毎日、海産物が入った発泡スチロールなどの荷物が大量に届くが、それらの荷物が所定のスペースをはみ出し、通路にうずたかく積まれているのだ。
「これが一番の問題です。本来は各々の店舗内のスペースで荷ほどきなどの作業をしなければならないんですが、狭すぎてどうしても通路にはみ出してしまう。大手の業者もはみ出しているので、みんな『俺たちもいいだろ』と勝手な場所に荷物を置いている。この積まれた荷物の間を縫うように、ターレが走り回っているんです」(前出・三浦氏)
この言葉通り、無法地帯化の要因は、業者のマナー意識の低さだけにあるわけではない。市場の”現場事情”を考慮しない東京都にも責任はある。
「業者のなかには、バイクや自転車で通勤している者も多いですが、場内には駐輪場が少ないんです。仕方なく、みんな駐輪禁止のスペースに無理やり停めているのが現状です」(同前)
ターレの二人乗り、荷物の散乱、違法駐輪……。これらの状況について、市場を管轄する東京都中央卸売市場管理部総務課の担当者は次のように答えた。
「都としては使い勝手がいい、良い市場にするために努力しなければいけないと思っております。そのためにルールの徹底や周知をしっかりやっていく必要があると考えております」
次の重大事故が起きてからでは、対策は遅い。
『FRIDAY』2019年5月24日号より
- 撮影:三好健志