日本上陸!クリムト「世界最高のエロス」と戯れられる”幸せ”
ウイーンから運ばれた『ユディットⅠ』最高の「運搬と警備」
「グスタフ・クリムトは生涯に残した作品が少ない作家です。その黄金期に描かれた『ユディトⅠ』は官能美の頂点。世紀末ウィーンが生んだ世界最高のエロスと言っていいでしょう」(成城大学名誉教授・千足伸行氏)
19世紀末の画家、クリムトが描いた『ユディトⅠ』。ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館所蔵の至宝が、『クリムト展 ウィーンと日本1900』のために、東京・上野の東京都美術館にやってきたのだ。
「長年にわたる調整を経て、多額の保険をかけ、細心の配慮と警備で搬入された作品を、最後にここで専門家が厳密にチェックし、引き渡します」(東京都美術館関係者)
今回、本誌のカメラが、その「最終点検」の現場に入った。
『ベルヴェデーレ』から作品とともに来日した主任修復家のステファニー・ヤーン氏と、東京側の修復家・森直義氏のふたりが、詳細なメモをもとに作品の細かな傷や表面の状態、額縁まで念入りに見ていく。展示室の張り詰めた雰囲気は、カメラのシャッター音もためらわれるほどだ。すべての状態を確認しあって、引き渡しが完了した。
点検のため、むきだしの状態でテーブルに載っていた作品は、特製のケースに収められ作業チームの手で展示室の壁に掛けられた。この掛け金の形状すら、防犯上の理由で機密事項だという。
世界最高のエロス『ユディトⅠ』が海外に持ち出されるのは稀なこと。日本国内でこの作品の生の輝きに会えるのは、これが最後かもしれない。
グスタフ・クリムトの「愛と官能」を息がかかるほどの間近で点検する





世界史に刻まれる西洋絵画の至宝はプロフェッショナルの手に委ねられ東京都美術館の展示室に掛けられた

『FRIDAY』2019年5月24日号より
撮影:福岡耕造