「超ド級の自分好き」木嶋佳苗は3度目の獄中結婚を維持できるか? | FRIDAYデジタル

「超ド級の自分好き」木嶋佳苗は3度目の獄中結婚を維持できるか?

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『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)などの著作があり、「平成の毒婦」木嶋佳苗を公判で見続けてきたライターの高橋ユキ氏が、先日報道された3度目の獄中結婚についてレポートする。

首都圏で発生した連続不審死事件で3件の殺人罪のほか、詐欺罪や窃盗罪などに問われ、2017年5月に死刑判決が確定した木嶋佳苗死刑囚(44)。彼女が3度目となる獄中結婚をしていたこと、そしてその相手が『週刊新潮』(新潮社)のデスク・X氏であることを4月24日発売の『週刊文春』(文藝春秋)が報じた。しかし、私が法廷で見た木嶋死刑囚は、結婚を人生のゴールとは捉えていない女性だった。あくまでも金を得るために「結婚」をちらつかせていたにすぎない。彼女はいかなる思いで今回の獄中結婚に至ったのか。

逮捕以前から、周りで男性が次々と亡くなる“疑惑の女”として、長くメディアを騒がせてきた木嶋死刑囚が、被害者となる男性たちを探していたのはある婚活サイト。ここで何人もの男性にコンタクトを取っては、結婚をチラつかせて金を騙し取り、またそのうち3人の男性に関しては、練炭自殺に見せかけて殺害したのだ。彼女は一部の詐欺や窃盗を除き、一貫して犯行を否認していたが、これらは公判で事実であると認定されている。

婚活サイトを舞台として何人もの男性を手玉に取った稀代の婚活詐欺師……そんなパブリックイメージが出来上がっていた木嶋死刑囚、逮捕前から自ずとその容姿に注目が集まっていた。2012年1月からさいたま地裁で開かれた一審公判でも、記者らは木嶋死刑囚の服装や髪型、仕草に至るまでを目に焼き付けようと、傍聴席から身を乗り出し、その様子を凝視していた。

この一審初公判で、彼女はブルーのニットカーディガンにベージュのスカートで法廷に現れたものの、午後には服を着替えて登場するという前代未聞の“お色直し”を見せ、記者らを驚かせた。その風貌は、逮捕前にテレビ等で見ていた写真とは若干異なり、艶のある美しい肌とぷっくりした唇、そして、どのようにセットしたのか不明だが、常に内巻きカールで整えられたボブヘアーが印象的な「地味ながらも清潔感のある可愛らしい女性」であった。穢れを知らない少女のような声も印象深かったが、彼女はそんな無垢な声で際どい発言を繰り返した。

「具体的には……テクニックというよりも本来持っている機能が高いという事で」

「……私は……セックスによって……長時間、快感を持続させながらトリップするという世界観を、大事にしていました」

100日裁判とも言われたこの一審公判においての彼女の主張は、被告人質問終盤、裁判長からの質問に対する答えに集約されている。

「19歳のときに初めて、愛人契約を結んだ男性がキッカケで、私は一般の女性とは違う……これはセックスのことです……違う世界を男性に与える事ができると分かってきてぇ~。……いろいろ研究していくうちに~、性の奥義を極めたいと思うようになって、どんどんエスカレートしていきました。受け取る額も大きくなっていって、付き合う男性のクラスも上がっていきました。そこで、癒しや活力を与えることを、自分の中で仕事のように感じるようになり、一般の女性にできないことなら、私はこの分野で受け取るのは正当な報酬なのだと思うようになりました。ですから、セックスの対価としてお金を受け取るのは、それなりの努力をしていたので、正当な報酬だと思っていました」

自分には特別な性的魅力があり、そのために男性からお金を受け取ることが当然。そのため、数々の男性から金をだまし取ることに罪悪感を感じていなかったというのが彼女の主張だ。

その手口はほぼ一貫していた。

まず婚活サイトでの木嶋死刑囚の設定は“学生”。出会った男性らに「学校の授業料が賄えない」ことを切々とアピールして支援を申し込む。その合間には「私は介護の仕事をしており……」と堅実に仕事をしていること、そして「教育ローンも申し込みました……」などと、自身も金策に奔走している様子を伝える。これらはもちろん嘘である。その上でこう踏み込む。

「私はサイトで、遊び相手や恋人を探しているのではなく、旦那様を探しているということもあり、どうしてもその相手との生活を考えてしまいます」

と、セックス目的ではなく、あくまでも結婚相手を探すために婚活サイトを利用していることを相手に念押しする。その一方、肉体関係については、そこまでに“時間をかけなくてもいい”ことを匂わせるのだ。

「男女のことですのでもう一つ伝えておきたいことは肉体関係のことです。私は、お付き合いしていて長い時間が経たないと、そういう関係になってはいけない、という思いはありません。お互い好意があるなら、長く交際しなくても、早い時間にそうなることは不自然ではないと考えています……」

この方法は木嶋死刑囚が編み出した「結婚を視野に入れている男性を婚活サイトで落とすための最適解」であろう。こうして彼女は、何人もの男性から“学費”を振り込み送金させることに成功。また男性らと肉体関係を結ぶためにホテルや自宅で過ごしたおり、飲食物に睡眠薬を混ぜて寝入らせた隙に金を盗んだり、男性らのクレジットカードなどを不正に使用し金を引き出すなどしていた。時に手料理を持って男性宅を訪れ、アロマオイルを用いてマッサージを施すなど、マメさも目立つ。起訴分だけでも彼女が被害男性らから得た金額は2907万円。一連の事件の直前に不審な死を遂げたものの事件化されなかったFさん(当時70)からは約7350万円。その他合計約1億3756万円以上を得ている。

初公判の罪状認否ではあくまでも「私は結婚を真剣に考えていました」と主張していたが、これは公判を勝ち抜くための彼女の戦術であろう。「結婚」はあくまで男性を落とすために使った方便でしかない。

一方の男性たちは、証人尋問で「結婚するのであれば、夢を応援したい」と、やはり将来的に木嶋死刑囚と結婚する可能性があるならば、彼女の求める「支援」に応じても良いと考えていたことを述べていた。だが、男性らの家族から疑いの目を向けられるや否や「あなたの個人情報を削除しました」などとメールを送り、木嶋死刑囚はすぐに男性の目の前から姿を消すのである。この引き際の早さからも、彼女の結婚への執着のなさが見てとれる。

このように、木嶋死刑囚は男性らから多額の現金を得て生活していたが、生活は決して楽ではなく、カードローンの返済に追われていた。無理もない、彼女は逮捕前からブログを頻繁に更新していたことも知られており、そこには受講料が高額な料理学校へ通い、ベンツを乗り回し、ブランド物のバッグを多数所有するなど、セレブな生活を謳歌する様子が綴られていたからだ。

彼女は男性らと結婚し共に生活を送るよりも、皆が羨むような生活をブログでアピールすることに命をかけていた「超ド級の自分好き」なのである。

彼女が詐欺容疑で逮捕されたのは2009年9月25日。同月9日までこのブログの更新は続けられていた。ゆえに、勾留生活を送ろうともブログでその生活の様子を発信することは、木嶋死刑囚にとってはごく自然なことでいわば“通常運転”。だが、勾留中とはいえセレブを演じることができなければ、発信する意味がない。皆が哀れむような生活を送ることは彼女にとって「死」を意味する。2015年、60代の男性支援者と最初の獄中結婚を果たしたが、これは金銭的な支援と、外部交通権を得てブログの更新の手伝いをしてもらうというダブルの目的があったにちがいない。

今回、3度目の獄中結婚相手である“王子”は、かねてより彼女の拘置所ブログに頻繁に登場していた。結婚前の2017年5月末、木嶋死刑囚は王子についてブログでこう言及している。

「王子への思いがエロスであるとハッキリ自覚したのは今年になってから。盲愛しているというよりは、王子の変態性を観察し、愛でているのです。私と気が合うくらいですがら、王子は普通の男じゃありませんのよ。変態なのに普通のフリもできるお利口さんです。

美しい容姿を持つ、理知的で英邁な人傑の王子とのお付き合いが、いかに私の心の安寧に寄与しているか! 王子の変態性とウイットが、いかに私を癒やし慰められているか!」(ブログから引用、文字ママ。以下同)

この燃え上がりっぶりから見るに、おそらく木嶋死刑囚は、これまで彼女が騙した、または殺害した男性たちとは異なり、王子に対して特別な思いを持っているように見受けられる。3度目の結婚では、これまでと同様、確定後の外部交通権の確保に加え、恋愛感情の充足を求めていたのではないか。大きな変化ではある。

だが今回の結婚後、彼女に更なる変化が訪れた。昨年5月以降、ブログが更新されないのだ。最後の更新「ラブリー」には気になる記述がいくつか見受けられる。

「執筆に関しては、夫からの抑圧度合いが酷くて、表現の自由はないですね」

「まさか夫が私の書くものに強い制限をするとは想定外のことで、それだけはかなりしんどいですね」

「今の夫は、資力やサポートスキルで選んだわけではないのです。元夫との婚姻関係を続けていれば生活に何の不自由もありませんでしたから」

結婚で愛には満たされているが、ブログを更新するというライフワークを続けることができていない。それは愛する夫に止められていると彼女は言う。愛を取るか、自分自身を取るか。木嶋死刑囚は愛する男性に抑圧され続けることにいつまで耐えられるのか。

  • 取材・文高橋ユキ

    傍聴人。フリーライター。『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)、古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など殺人事件の取材や公判傍聴などを元にした著作多数。

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