パパ活やセクハラなど社会問題を描く漫画に注目が集まるワケ

作者・ももち麗子さんインタビュー 8年ぶりとなる「問題提起シリーズ」はどのように復活したのか?

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ハラスメント問題のニュースが絶えない。つい先日も、特撮ヒーローショーの聖地「シアターGロッソ」でのセクハラ問題がファンを騒然とさせ、東映と東映エージェンシーがセクハラを認める公式謝罪文を7月6日に発表した。本件のきっかけとなったのは、被害女性によるTwitter上での訴えだった。

「#MeToo」ムーブメントの後押しやSNSの普及により、被害者の声は昔よりも世間に届きやすくなっている。しかし、「声を上げるより我慢する」という道を選び、泣き寝入りする人も多いに違いない。

「その程度のことで騒ぎ立てるんだったら辞めてもらうよ?」「それが上司にお願いする態度か?」と信じられない言葉を投げつけられながら、セクハラと闘い、叫びをあげることを選んだ女性を描いたのが、ももち麗子の漫画『大人の問題提起シリーズ さけび』である。

『大人の問題提起シリーズ さけび』&『かわき』を今すぐ読む

『問題提起シリーズ』は、雑誌「デザート」で1997年から2008年まで不定期連載されていた漫画作品。いじめや援助交際、レイプ、ドラッグ、万引きといった社会問題をテーマにし、多くの読者から反響を呼んだ。2001年には、ドラマ『R-17』の原案にもなっている。

一世を風靡したその『問題提起シリーズ』が、“大人編”として復活を遂げたのが『大人の問題提起シリーズ』だ。8年ぶりの復活の経緯を、作者のももち麗子さんはこの様に語ってくれた。

「『Kiss』編集部の当時の編集長より、企画のオファーを受けました。問題提起シリーズは、自分的には描き切った感はなかったのですが、別のジャンルで勝負してみたい気持ちもあり、少しの間封印していました。でも気がつけばまた、問題提起作品熱が再燃していました」(ももち麗子)

 

『大人の問題提起シリーズ かわき』収録話『もがき』より。婚活沼にハマりこんでしまった主人公・サクラ。あちこちのパーティーを渡り歩き、ハイスペック男性を狙う「婚活スパイダー女」としてネットにさらされてしまう

第1弾の『大人の問題提起シリーズ かわき』(全1巻)には、「体のカンケーを持たずに金銭的援助を受けれる」という誘いに惹かれ「パパ活」を始めた女性や、「婚活沼」にハマり、高望みしすぎてパーティを渡り歩く“婚活スパイダー女”と化してしまう女性の物語が収録されている。以前の『問題提起シリーズ』は10代の少女を主人公とした話がほとんどだったが、今回の“大人編”では、大人の女性だからこその悩みや問題が描かれていく。

「テーマについては、打ち合わせで最近のトピックスを話していく中で、自然と決まっていきました。『かわき』の“パパ活”“婚活”については、実際にやっている方が身近にいて、取材がしやすかったというのもあります。パパ活は、イメージが先行していて実態はあまり知られていないので、読者から驚きの声も届きました」(ももち)

 

『大人の問題提起シリーズ かわき』より。生活費が厳しいと愚痴る主人公・マイに「パパ活オススメですよ」と勧めたエリカ。「オヤジとSEXなんて生理的に無理。そこは絶対死守」とパパ活の先輩としてマイにも助言し、うまく立ち回っていたのだが……

第2弾となる『さけび』では、派遣社員として働く女性が派遣先の上司からセクハラを受け、精神的に追い詰められていく姿が怖いほどリアルに描かれる。「二人きりで温泉に行こう」と執拗に誘われ、それを拒否すれば、今度はわざと全員の前でミスを叱責されるなど、職場での嫌がらせが始まる。

派遣会社に相談しても、「派遣先の上司を怒らせるなんて問題だ」と話にならず、派遣先の労働組合では「気に入られてるってことだし、悪くないんじゃない?」と全く守ってもらえない。「会社にとっての厄介者は、私の方なんだ」と心が折れ、会社を去って心機一転しようとしても、立ち直ることができず社会復帰すらままならない――。

『大人の問題提起シリーズ さけび』主人公の山口さつきは、信頼していた上司・堂林からセクハラを受ける。さりげないボディタッチから始まり、こっそり手を握ったり、温泉旅行に誘ったりと、堂林の行為はエスカレートしていく

余りに過酷で読んでいて苦しくなってくるほどの内容だが、これには本作を監修している佐藤かおりさんの体験が大きく反映されているのだという。

「『さけび』は、監修していただいている佐藤かおりさんサイドから『自分の体験をベースにした漫画が出来ないか』と提案を受けたんです。ですので、『さけび』の内容は佐藤さんの体験をかなり反映したものになっています。

まずは函館にある、『ウィメンズ・テラス』(※『さけび』作中に登場する、女性の駆け込みシェルター)のモデルにもなっている事務所を取材させていただきました。セクハラ・パワハラの実態については、想像を超えるものでした。受けた精神的ダメージは、完全には癒えることのない苦しみなのだと知りました。

佐藤さんは『世に知ってもらいたい。少しでも状況を良くしたい』という使命感を持った方で、辛い体験も、当時の資料を見せてくれながら詳細に話してくれたんです。私は当時の状況、心情をできるだけ正確に伝えることを心がけました。リアルに感じていただけたなら、それはすべて佐藤さんのおかげです」(ももち)

 

「誰も信じてくれないかもしれない」「会社に知られたら、職を失うかもしれない」と周りに助けを求められないさつき。セクハラ相手は派遣先の上司(正社員)で、自分は派遣社員、という立場から生じる葛藤がリアルだ

読者からは、セクハラ・パワハラ被害が理解されない現状に対する怒りの声や、「自分に起こった時どう対処すればいいのか? と考えさせられる」という意見が多く寄せられているという。「私自身も、読者の皆さんと同じような気持ちでテーマに取り組んでいることが多いです」とももちさんは言う。

「どんなテーマを伝えるにも『物語』が大切だと思います。まず、リアルな感情を持ったキャラクターを作ること。そして、どんなふうに描けば伝えたいテーマが読者に届くのか? その為には……言い方が難しいのですが、『物語性のある、強度の高い作品』を描かなければならないと思います。実話ベースであればあるほど『良い物語』を見つけなくてはならないと」(ももち)

7月13日発売の『さけび』2巻では、女性支援団体「ウィメンズ・テラス」の仲間たちのサポートを得て、主人公が訴訟に踏み出す姿が描かれる。ハラスメント被害は簡単には無くならない、という現実問題を冷静に直視しながらも、少しずつ社会が、人々の意識が変わっていっている、という希望も見いだせる、爽やかなラストだ。

ももちさんは現在、新作の準備に入っているという。「今、取材中です。テーマはまだ明かせないのですが、『かわき』『さけび』とはまた違ったテイストの作品になると思います。是非期待してください」とのこと。

『問題提起シリーズ』は、自ら足を運んで取材をし、リアルな感情を読者に伝えようとするももちさんだからこそ描ける物語なのだろう。

 

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『大人の問題提起シリーズ さけび』(全2巻) 購入はコチラ

『大人の問題提起シリーズ』かわき&さけび 1話公開中

  • 取材・文大門磨央

    石川県出身。雑誌やWEBを中心に漫画、アニメ、映画などのコラムを執筆中

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