異端のサッカー日本代表・小林祐希「どこでも生き延びる雑草魂」

スペシャルインタビュー@オランダ

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オランダのシンボルであるアムステルダムの運河をバックに。来季は新たなクラブでプレーする。「食文化を考えると、スペインなんていいですね」(小林)

心地よいジャズをBGMに、サッカー日本代表MFの小林祐希(ゆうき)(27)はポロねぎのスープ、にんじんとレバーパテのサラダ、鴨ロースの赤ビーツ煮、焼きメシを次々と口に運んだ。オランダ一部リーグ『SCヘーレンフェーン』の本拠地、アベ・レンストラ・スタディオンにほど近い自宅マンションで、小林は日々、専属シェフによるコース料理を堪能している。

「今年2月から管理栄養士のアドバイスのもと、作ってもらっているんですが、これまでとは明らかに疲労感が違う。いつでもエネルギーに満ちている感じがするし、脳が冴(さ)えている気がする」

身体がキレて、脳が冴えることが、ピッチでの好パフォーマンスにつながっている。今年3月、約1年半ぶりに日本代表に返り咲いた小林は、コロンビア戦(3月22日 ●0-1)の後半途中からピッチに立つと、得意の左足で精度の高いパスを繰り出し、CKでチャンスを演出。続くボリビア戦(同26日 〇1-0)もボランチで先発し、長短織り交ぜたパスでゲームをコントロールするなど、久々の代表戦とは思えないほどチームにフィットした。3年目を迎えたヘーレンフェーンでも、今季ここまで28試合に出場し、チームトップの8アシストを記録している(5月14日現在)。

「顔を上げ、視野を広く確保しながらプレーできる回数が3倍くらいに増えましたね。明らかにミスが減ったし、パスミスしたあとの対応も早くなった」

小林は宇佐美貴史(27・デュッセルドルフ)や柴崎岳(26・ヘタフェ)と同じ’92年生まれ。いわゆるプラチナ世代のプレイヤーだが、これまでけっして順風満帆ではなかった。東京ヴェルディのユースチームで鍛えられ、’11年に18歳でトップチームに昇格。19歳で主将に任命されるも、鳴かず飛ばず。シーズン途中でジュビロ磐田に放出され、構想外となった挙げ句、2部降格の憂き目を見た。だが、小林はJ2にいながらも、「日本代表に入り、W杯を目指す」と言い続けた。司令塔として40試合に出場した’15年のシーズン最終節、大分トリニータ戦の終了間際に決勝弾を放ち、チームをJ1に導いた。翌’16年、見事に日本代表入りを果たした彼は、こんな小林節ですっかりファンに”ビッグマウス”認定された。

「5年くらい遅れていますよね。幼稚園のときに立てた目標では19歳でA代表に入る予定だったので」

「香川真司さんと直接、話をしておきたい。後々、(香川の)10番をつけたいので」

小林本人は「人がどう思うかは勝手」と一笑に付す。

「髪型は奇抜だし、タトゥーは入っているし、ツイッターで絡まれたら言い返しちゃったりするし、俺は突っ込みどころ満載だからね(笑)。ネットで絡んでくる人って、何か不満を抱えた、人生がうまくいってない人なんだと思います。そういう気持ちも理解できなくはないし、”アンチ小林祐希”を集めたイベントを開いてくれたら、帰るころには全員に”小林大好き”って言わせる自信、ありますよ」

森保ジャパンに足りないもの

J1の実績がほとんどない中での代表入りも異例だが、実業家との二刀流プレイヤーであることも異例だ。小林は’17年にヴェルディのユースの同期、高野光司と会社を立ち上げ、山形県南陽市の農家が作る有機栽培米『夢ごこち』の販売を開始。’18年には、オランダ・アムステルダムで美容サロンをオープンさせている。

「ビジネスを始めたキッカケは、光司の引退です。『引退したらサヨウナラ』じゃ、寂しいじゃないですか。仕事があれば、今後も仲間でいられますから。美容サロンを始めたのも同じ理由。『サッカー選手はサッカーだけやってろよ!』って意見もあるだろうけど、ビジネスをしていたって、サッカーには集中できる。俺は人と話すのが好きだから、むしろいい気分転換になっています。海外にいると、米の入手が意外に大変です。でも、日本人ってやっぱり、米を食べないとエネルギーが出ない。そんな経緯があって、オフに日本の農家を巡るなかで出会ったのが『夢ごこち』だった。日本の地方には本当に美味しいものがある。そんな日本の食材をほかの選手にも提供できるシステムを作れないかなと思っています。一生サッカー選手でいられるわけじゃない。引退後の人生のほうが長い。いろんな人や物事に触れて人間としての幅を広げたいんです」

思ったことは口にする性格で、見た目も奇抜だが、小林の根底にあるのは人間愛。事実、プレースタイルは献身的で、ピッチを離れれば裏表なく、面倒見のいい人柄の彼を慕う仲間は多い。

森保ジャパンは一見すると、一体感があり、品行方正なチームだが、一方で毒がなく対戦相手に与える脅威という点では物足りないようにも映る。そんななか、プレーだけでなく、言葉でも主張できる小林は、チームのアクセントになる可能性を秘めている。

「前の代表には圭佑くん(本田)や佑都くん(長友)、長谷部さん(誠)がいて、ピリピリ感があった。久々に代表に行ったら、みんな温厚で『話し合いながらチームを作っていこう』という感じだった。ただ、W杯で勝つには、遠慮せず主張し合うことも大事だと思う。俺はピッチの内外で気づいたことがあればドンドン口に出す。時にはガツンと言いますよ」

先ごろ、小林はヘーレンフェーンを今季限りで退団すると発表した。移籍市場に名前を売るためにも、日本代表が20年ぶりに招待参加する6月14日開幕のコパ・アメリカは大事な大会になる。

「グループリーグからウルグアイ、チリ、エクアドルとガチンコ勝負できるのは魅力だし、個人的には負ける気はしない。3月に代表に呼ばれたときは、周囲とのバランスを考えながらプレーしたので、自分を抑えていた部分があった。もし次、呼ばれたら、一味違うところを見せたい。本来は全員ドリブルで抜いて決めちゃいたいタイプだからね」

小林の強さは、アスファルトを突き破る雑草の逞(たくま)しさを備えていることだろう。

3月22日のコロンビア戦で得意の左足を振りぬく小林。森保一監督は高い技術と的確なポジショニングを評価
毎年、オフには『夢ごこち』を栽培する山形・南陽市の農家を訪問する。「タメになる話ばかりです」(小林)
自宅で専属シェフと。

『FRIDAY』2019年5月31日号より

  • 取材・文栗原正夫写真(コロンビア戦)Getty Images取材協力(株)こもれび

Photo Gallary4

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