西日本豪雨 生死を分けた一瞬の判断

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広島、岡山、愛媛ほか被災者200人超。九死に一生を得た人々の本格的な戦いはこれからだ。

岡山県倉敷市内を流れる小田川が決壊し大規模な冠水が起きた同市真備(まび)町。同町の死者約50人の8割が溺死だ

「介護施設に水が浸入し始めた!」

愛媛県大洲(おおず)市に住むケアマネージャーの福島美咲さん(仮名、50代)の携帯電話に緊急連絡が入ったのは、7月6日の明け方4時ごろだ。福島さんがすぐに施設に向かうと、1階の床上20cmほどが浸水していた。福島さんが振り返る。

「職員の中には『寝たきりの高齢者も多く、動かすのは危険だから様子をみよう』と言う人もいました。ただ雨は『ゴーゴー』と不気味な音をたてて降り続き、弱まる気配がありません。責任者の男性は『すぐに全員を移動させましょう』と、20人ほどの高齢者を2階へ移すことを決定しました。おんぶしたり、タオルケットを何枚も重ね担架代わりにして搬送。やっと全員を移し終えた直後、『バリバリバリッ!』とガラス窓を割ってさらに水が浸入してきたんです。くるぶしほどだった水位は、ものの数分で腰の高さまでに。雨がおさまるのを待っていたら、高齢者全員が溺死していたかもしれません。今考えてもゾッとします」

西日本を襲った「平成30年7月豪雨」の死者・行方不明者は、広島、岡山、愛媛を中心に200人を超える。生死を分けたのは一瞬の判断だった。広島県・熊野町に住む北田昭紀氏(32)は大雨の中、広島市内で仕事を終えた妹を車で迎えに行った直後に惨事にみまわれた。

「市内から熊野町に戻るには、峠を越えなければなりません。山道にさしかかると渋滞になり、車列はまったく動かなくなりました。すると5分ほどで水位が上がり、タイヤの半分が水没。その場にとどまることに危険を感じた私は、慌ててUターンしました。これが幸いしたんです。振り向くと、元いた場所は茶色い濁流にのまれ多くの車が押し流されていました。しかし雨で視界が悪く運転困難で、後方の車が追突。車体がガンガン揺れます。一緒に乗っていた幼い息子はハァハァと過呼吸状態になり、私は夢中でハンドルを握った。道が上り坂にさしかかると、ようやく視界もいくぶん良くなりました。ただ迂回しようとして選んだ道も陥没で通行不能に。激しい雨が窓に打ちつける中、車を路肩に寄せ眠れない一夜を明かしたんです。翌日には雨もあがり昼には道路が開通したため、自宅に戻ることができました」

コンビニおにぎりが生命線

九死に一生を得た被災地の人々も、食料や衣料などの物資不足に悩まされている。土砂崩れや崩落で、山陽自動車道など多くの道路が通行止め。鉄道もJR西日本の伯備線や山陽線などが運休し、路線を利用していた貨物列車も434本がストップしたため、各企業が営業できない状態が続いているのだ(7月9日現在)。ヤマト運輸の広報担当者が話す。

「6府県(京都、岡山、広島、島根、山口、愛媛)の一部の地域ですべての荷受けを停止しています。多くの道で復旧にメドが立たず、お届けするのをお約束できない状態にあるからです」

コンビニエンスストア大手、セブン&アイ・ホールディングスも厳しい状況だ。

「5県(岡山、広島、山口、福岡、愛媛)の17店舗が休業中です。工場自体に被害はありません。ただ岡山と広島の幹線道路が寸断され原材料を届けられず、おにぎりやお弁当などの商品が製造できない状況にあります」(広報センター)

独自の方法で、被災地に物資を運んでいる企業もある。流通大手のイオンだ。

「弊社は全国約830の自治体と、災害における物資支援協定を結んでいます。今回の豪雨では21の自治体から要請を受け、水や衛生用品など7万8539点を届けました(7月10日時点)。幹線道路が通れないため、弊社専門の物流会社が下道などでの最短ルートを調べ、自治体の指定場所まで物資を運んでいるんです」(コーポレート・コミュニケーション部)

被災地の人々も、様々な工夫をしている。愛媛県八幡浜(やわたはま)市の会社員、小林恵理さん(仮名、40代)が語る。

「大雨発生当初は松山自動車道が寸断され、スーパーやコンビニの棚はガラガラでした。特にお弁当やおにぎりなど、食料品が品薄。泥まみれになった家の清掃作業などで忙しく、料理を作っている時間がないので、食事はできればコンビニの商品ですませたい。棚に商品を見つけた時は、これで今日も生きていけると心から嬉しくなりました。今は住民同士助け合うために、あの店には何時ごろ何が納品されるかという情報を共有するようにしています。購入量も自主的に制限している。例えば水なら2ℓを6本までなどです。最近は道路の復旧などで、少しずつ商品も増えてきました」

気温の上昇する真夏を迎え、被災者たちの本格的な戦いはこれから始まる。

広島県・熊野町の様子。大量の雨水が濁流となり道路を流れ車や家屋、そして人間を押し流してしまった

小雨の降り続く中、道路の中央で水没した車を移動しようとする人々。7月9日に真備町内で撮影された

崩落した土砂や樹木が道路に大量に流れこみ、上下線ともに通行止めとなった広島市東区の山陽自動車道

線路内に土砂が流入し脱線したJR筑肥線の車両。佐賀県唐津市で。西日本を中心に23路線で被害が出た

商品がほとんどなくなった広島県・熊野町にあるスーパーの陳列棚

写真:読売新聞/アフロ 共同通信社 時事通信社

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