先発でもリリーフでも好成績 「クレバーな投手」前田健太が進む道

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昨年はシーズン8勝と苦しんだが、今年はすでに5勝。昨年、一昨年とワールドシリーズではリリーフとして活躍した

ロサンゼルス・ドジャースに所属する前田健太投手が先日、5勝目を挙げました。

5月20日現在(現地時間/以下同)、メジャーに在籍する日本人でもっとも勝っている投手であり、好調を維持しています。開幕からローテションに組み込まれ、9試合の登板機会で51回と1/3イニングを投げ5勝2敗、防御率は3.51という成績です。自打球の影響でDL(故障者リスト)入りもしましたが、これは大事をとるためですので、大丈夫でしょう。一度、ローテーションを飛ばすだけで戻ってくると思います。良好なチーム状態を示しているとも言い換えることもできます。

彼とは昨シーズンの秋頃に話す機会がありました。とてもクレバーな投手だなという印象です。

決して口数が多いわけではないのですが、口にする言葉は的確で、まとまった分かりやすい話をしてくれました。こっちの言いたいことを理解した上で、自分の意見をしっかり言える。そのあたりの資質はメジャーリーガーに必要なものですが、彼の場合、その能力が特に高い。もう4年目ですから当然といえば当然なのですが、そもそも地頭がいいのでしょう。話してて楽しかったですね。

ピッチングにも随所にそのインテリジェンスが感じられます。先日のサンディエゴ(・パドレス)とのゲームのように、テンポよくカウントを整えてスライダーで空振りを取る、自信を持ったスタイルが確立しつつありますし、その一方で調子が悪ければ悪いなりに試合中でも修正し、ゲームを作る能力も備わってきたように思えます。

そのあたりに昨季、一昨季と共にポストシーズンになるとブルペンに回る理由もあると僕は考えています。日本ではブルペン転向について、降格や先発失格といったネガティブなイメージを抱くファンがいるかもしれません。確かにそういう側面も一部ではあります。

ただ、前田投手の場合は必ずしもそうではありません。先ほども紹介したようにとても器用で賢明な野球選手ですので、スターターとして自分でゲームを作ることも、ワンポイントやセットアップといった他人が生んだシチュエーションで仕事をこなすことも、彼の場合は両方、可能なんです。決して器用貧乏なのではなく、高いレベルで両立していると言えます。

例えば、ドジャースの今季のスターターを並べてみると、クレイトン・カーショー投手が問答無用のエースで、韓国球界を代表する柳賢振投手が2枚目でしょうか。前田選手は序列としては3番目かもしれません。

しかし、カーショー、柳は素晴らしい投手ですが、ブルペンに回る器用さを持ち合わせているかと言えば、ノーです。リリーフの経験は野球人生でもほとんどないでしょうし、シチュエーションごとに打開する能力が備わっているかは未知数です。

また、今のメジャーのセットアッパーやクローザーの投球傾向は、早い、あるいは重い4シームで押してカウントを稼いでから、鋭く滑るボールか、激しく止まり落ちるボールでフィニッシュという、ある意味ではパターン化している傾向があります。さほど組み立てが必要だったり、緻密なコントロールを求められる投球ではありません。

しかし、前田投手はパワーもコントロールもある。現在の継投のパターンをいい意味で崩せるスタッフがブルペンにいると、状況と相手に応じて采配の幅も出るので非常に重宝されるはずです。実際、2年連続でワールドシリーズという大舞台のマウンドを経験し、ヒューストン(・アストロズ)やボストン(・レッドソックス)といった超スター軍団に真っ向から挑んで一定の仕事を果たしました。

短い時間の立ち話でしたし、シーズン中でしたので本人には「スタートとブルペン、どっちがやりたいの?」とデリケートかもしれない質問をぶつけることはできませんでした。しかし、まずは自分がどちらの仕事にこだわるか、やりがいがあるかを感じているかは大切です。

先発にこだわるなら、長いイニングを意識して先日のサンディエゴ戦のようなパフォーマンスを維持すること。特に野球で「エース」と呼ばれる人々は3巡目、ゲームの後半までしっかり相手打線を抑えることが求められます。3巡目を技で切り抜けることができるようになれば、序列も上がって「エース」と呼ばれる日が来るかもしれません。

逆に3巡目から相手打線に対峙する、ブルペンでチームを支える選択も悪くはありません。先述のように心技体の資質は十分ですし、実績も積んできた。あとはブルペンピッチャーのほうが身体にかかる負担は小さい。器用なブルペンピッチャーは引く手数多ですから、長く選手を続けられる可能性も大きくなってきます。

どちらが良いという優劣の話ではなく、どちらがやりたいか。そしてどちらにメリットがあるのか。先発でエースを目指すか、究極の便利屋としてチームに貢献し長く野球を楽しむのか。今すぐに決めないといけないわけではないですが、前田投手は31歳。キャリアやサラリーなども含めて自分の選手生活を大きなビジョンで考え出してもいい時期です。いい決断をして、いい結果を残して欲しいですね。

  • 長谷川滋利

    1968年8月1日兵庫県加古川市生まれ。東洋大姫路高校で春夏甲子園に出場。立命館大学を経て1991年ドラフト1位でオリックス・ブルーウェーブに入団。初年度から12勝を挙げ、新人賞を獲得した。1997年、金銭トレードでアナハイム・エンゼルス(現在のロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム)に移籍。2002年シアトル・マリナーズに移り、2006年現役引退

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