『海獣の子供』は映像×音楽の新世界 112分全てクライマックス

キャスト・スタッフ・映像・音楽 すべてが渾身の力作!

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アニメ映画が大豊作の令和元年。そんななか、圧倒的なクオリティで一足早い“夏”を届けてくれるのが、6月7日公開の『海獣の子供』だ。

©2019 五十嵐大介・小学館/「海獣の子供」製作委員会
©2019 五十嵐大介・小学館/「海獣の子供」製作委員会

試写を見た人々からは既にSNS上で絶賛の声が相次いでおり、米津玄師が手掛けた主題歌『海の幽霊』は予告編公開の時点で「名曲」との呼び声も高く、5月28日にミュージックビデオ(MV)がフルバージョンで公開されるや否や、わずか4日間で1,000万再生を突破した。これは大ヒットした同氏の『Lemon』を上回るペースである。

映画本編の映像を惜しみなく使用していることも話題となっている『海の幽霊』MVだが、すごいのは、これが映画の予告編などでよくある「一番良いとこだけ取り」のダイジェスト映像ではないという点だ。MVで確認できるクオリティと同等、いや、これ以上の美麗な映像が、映画本編中112分間ずっと続いていくと思ってもらって間違いはない。まさに「最初から最後までクライマックス」といった圧巻の作品に仕上がっているのだ。

五十嵐大介による同名原作漫画は、繊細な線と、緻密な描きこみが特徴的な作品だ。映画ではその原作画の魅力が最大限に活かされており、まつ毛の一本一本まで描きこまれたキャラクターたちや、海洋生物たちの生き生きと泳ぐ姿が素晴らしいのはもちろんのこと、夏の日差しや温度、潮風の匂いや、水の冷たさといった空気感まで伝わってくるおそろしく密度が高い映像で、その圧倒的な美しさはとにかく「凄まじい」の一言しか出ない。

©2019 五十嵐大介・小学館/「海獣の子供」製作委員会

それもその筈、本作のアニメーション制作を手掛けるのは、ハイクオリティな映像で世界的にも評価の高いSTUDIO4℃だ。同社の代表作である『マインド・ゲーム』『鉄コン筋クリート』などの評判の高さは、アニメ好きでなくとも一度は聞いたことがあるだろう。

また、監督を務めるのは『おばあちゃんの思い出』『ドラえもん のび太の恐竜2006』など、劇場版『ドラえもん』で感動作をいくつも手掛けてきた渡辺歩

海のすべての生き物が集うという「祭り」、魚が発光しながら消えていく現象、ジュゴンに育てられたという不思議な兄弟“(そら)と(うみ)”と、その秘密に群がる様々な人々の思惑――といった原作の壮大な世界観やミステリアスさはしっかり踏襲しつつ、ややもすると難解になりそうなストーリーを、14歳という多感な年ごろの少女・琉花(るか)の視点に寄り添うことで爽やかなジュヴナイルとしてまとめあげてくれた。

原作を読んだことのない人も、熱烈なファンも、どちらも楽しめる一本となっているのだ。

©2019 五十嵐大介・小学館/「海獣の子供」製作委員会

等身大のキャストたちをがっちり支える実力派俳優陣

©2019 五十嵐大介・小学館/「海獣の子供」製作委員会

主人公の琉花を演じるのは映画『パシフィック・リム』(2013年)でハリウッド・デビューもはたしている芦田愛菜。気持ちを言葉にするのが苦手で、人とうまくコミュニケーションを取れない多感な中学生を、瑞々しさあふれる演技で真っ直ぐに演じきっている。 “” (うみ)役の石橋陽彩(いしばし ひいろ)は純真無垢で溌剌としていて、琉花が「“海”くん」と呼んで慕うのも納得の魅力。そんな“海”とは対照的に、クールな印象を受ける“”(そら)を演じる浦上晟周(うらがみ せいしゅう)は、大人びた部分と時折見せる少年らしさとのバランスが絶妙だ。

フレッシュな上記メインキャストたちを支える、実力派俳優陣の演技は流石の一言。特に、“空と海” を保護・研究している海洋学者・ジム役の田中泯と、「海のなんでも屋」を名乗る老婆・デデ役の富司純子の存在感は格別だ。

若き天才海洋学者・アングラードを演じる森崎ウィンも、登場シーンがそこまで多いわけではないのにしっかりと印象を残していく。琉花の父・安海正明(あづみまさあき)役の稲垣吾郎には「こういう父親いそうだな~」という現実感があり、母・安海加奈子(あづみかなこ)役の蒼井優は、『鉄コン筋クリート』で見せたエモーショナルな声の演技とは、また異なる一面を見せている。

なにかと議論の的になりやすい芸能人の声優起用だが、本作に関しては主要キャスティングがうまくハマっており、違和感を覚えることなく物語にのめりこむことができる。圧倒的な映像に負けることなく、しっかりと作品世界の一部となっているキャスト陣の魅力を堪能してほしい。

音が紡ぐ『ひと夏の体験』

©2019 五十嵐大介・小学館/「海獣の子供」製作委員会

スペクタクルな映像とともに観客を呑み込み、海中世界へと連れて行ってくれるのが久石譲の音楽だ。本作で久石譲は、自身の原点でもあるミニマル・ミュージックのスタイルを貫くというアプローチをしており、ジブリ作品でのイメージに慣れ親しんでいる人は、劇場で大いに驚かされるだろう。

「映画音楽としてはかなりチャレンジをした」と久石本人もインタビューで語っているそのサウンドは、「気付いたら鳴っている」ほど微かなさざ波の様な時もあれば、イワシの群れが泳ぐような速度で一気に押し寄せてくる時もあり、映像との相乗効果も相まって、どこかに流されていくような感覚を覚える。

劇伴と映像に揉みくちゃにされながら連れて行かれた未知の地点で、観客を迎え、包み込んでくれるのが、米津玄師の主題歌『海の幽霊』だ。主人公・琉花の特別な夏をスクリーンを通して共に体験すれば、「大切なことは言葉にならない」という歌詞が、鑑賞前より更に深く心に染み入るに違いない。

©2019 五十嵐大介・小学館/「海獣の子供」製作委員会

今年はアニメ映画が空前のラッシュで、既に原恵一監督の『バースデー・ワンダーランド』、TVアニメ『天元突破グレンラガン』で知られる今石洋之監督×中島かずきタッグの『プロメア』が劇場公開され、どちらも高い評価を得ている。

更に6月には湯浅政明監督の『きみと、波にのれたら』、7月には新海誠監督の『天気の子』、そして10月には『あの日見た花を僕達はまだ知らない』で知られる脚本家・岡田麿里の初監督作品『さよならの朝に約束の花をかざろう』が公開予定と、名だたる監督らの最新作が続々と控えている状況だ。

そんな「アニメ映画の当たり年」となりそうな令和元年の中でも、『海獣の子供』は他ではできない映像体験を観客に届けてくれる、特別な一本だと言える。ぜひ、映画館の大スクリーンで、美麗な映像と音が産み出す海洋スペクタクルを体感してほしい。

映画『海獣の子供』 フォトギャラリー

©2019 五十嵐大介・小学館/「海獣の子供」製作委員会
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Photo Gallary15

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