なぜこの日、なぜ少女を…。川崎通り魔男の「犯行計画」
現場取材から分かった岩崎隆一容疑者の"憎しみ"の根源
「朝の7時45分頃だったでしょうか。事件が起きた瞬間、子供たちの叫び声が響いたんです。目の前で友達がメッタ刺しにされていくんだから、それは恐怖ですよね。声にならない悲痛な叫びでした。なかには呆然と立ち尽くしている子や、気が動転してしまった子もいました。現場では、犯人も血を流して倒れていた。黒い半袖とジーパン姿で、イガグリ頭。顔はもう真っ青になって動けない状態でした」(事件を目撃した近隣住民)
その血にまみれた犯行現場には、まるで地獄絵図のような景色が広がっていた。
通学途中の女児や保護者に通り魔が次々と襲い掛かり、11歳の少女と39歳の男性を刺殺。計19人の死傷者を出すという衝撃的な通り魔事件が起きたのは、5月28日のことだった。
犯人は川崎市(神奈川県)に住む岩崎隆一容疑者(51)。彼は包丁で少女らを刺しまくった後、自らの首を切って絶命した。ターゲットにされたのは同市内の私立『カリタス小学校』に通う生徒たち。最寄り駅である小田急線・登戸駅から学校へ向かうスクールバスに乗り込むところで起きた惨劇だった。
岩崎容疑者の自宅は事件現場からわずか5㎞ほどの距離にある。現在は90歳前後の伯父夫妻と同居していたが、その家庭事情は複雑なものだったという。
「彼と一緒に暮らしている伯父夫婦は、隆一君にとって育ての親なんです。というのも彼の実の親は離婚して、小学校に上がる前に伯父夫婦に引き取られていたんです。昔からあの家に住んでいて、よく見かけました。体格はいいけど大人しい子でした。事件の1週間前にも隆一君がコンビニの袋をぶら下げて家に帰るところを見かけました。その時も挨拶することもなく、ボンヤリと歩いていました」(岩崎容疑者宅の近隣住民)
気になるのは、岩崎容疑者の計画性だ。彼は2本の包丁を凶器として使ったが、背負っていたリュックには他にも包丁が2本隠されていた。そして、自宅からの押収物には事件を匂わせるメモが含まれていたという。しかも、事件前日の月曜日、カリタスは運動会による代休日だった。つまり、事件当日は代休明けの登校日というタイミングだったのだ。犯罪ジャーナリストの小川泰平氏はこう語る。
「彼の行動からは人を傷つけ、殺してやろうという強い”殺意”を感じます。4本もの包丁を用意し、しかも被害者の19人は上半身を狙われている。とくにお子さんは集中的に頸部を刺されていますから。襲われた大半の女児は小学校低学年。岩崎容疑者は、絶対に自分には向かってこない”被害弱者”を選んだのでしょう。学校が代休明けの日に事件が起きたのも偶然とは思えません。この日、この場所に凶器を持って現れたということからは、行き当たりばったりの犯罪ではない計画性が感じられます」
幼い少女の将来を一瞬にして奪い、自らも命を絶った岩崎容疑者。本人の口から動機が語られることはなくなったが、徹底的な真相究明をするべきだろう。
『FRIDAY』2019年6月14日号より
撮影:蓮尾真司(岩崎容疑者の自宅)