「矢沢な店はいい店だ」説を実証。人情カレーと絶品担々麺の2店 | FRIDAYデジタル

「矢沢な店はいい店だ」説を実証。人情カレーと絶品担々麺の2店

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矢沢永吉ファンの店主に悪い人はいない!

これまでいくつかの飲食系雑誌に携わってきましたが、取材をする中でちょっとした法則があることに気付きました。

それは、「矢沢な店(=店主が矢沢永吉ファンの店)に悪い店はない」という説です。 

私がこれまでにいた京都のタウン誌でも、北海道の地方紙でも、東京の街歩き雑誌でも、だいたい取材先で「あっ、ここ矢沢だっ」と発覚した店は、いい店が多いのです。かなりの確率で。

「永吉」

でもそれもそのはずです。矢沢永吉をリスペクトしているということは、矢沢永吉の生き様に憧れ、矢沢永吉に恥じぬ商売をしているということ。ファンでない私だって矢沢の凄さは分かります。

それに気付いた私は「矢沢な店特集しようよ!」と企画を出したのですが、いずれも「店主が面倒くさそう」「ファンがうるさそう」という理由でことごとく却下され、実現に至りませんでした。

その鬱憤を晴らす時がとうとう訪れました。と言っても、矢沢な店をたくさん取材するのも体力消耗しそうなので、「そこまでハードじゃない矢沢な店」を2軒厳選し、その魅力をご紹介します。

あ、「矢沢」と呼び捨てしていますが、記事の特性上です。くれぐれもファンの皆様、ディスっているわけではないのでクレームをお寄せにならないでください。

永ちゃん×メルヘンチックな店内のギャップがハンパない店「ラハイナ」

「ラハイナ」

板橋区、都営地下鉄三田線の本蓮沼と志村坂上の間という微妙な立地に構える「ラハイナ」。

家でしょ!と思ったのですが、後で聞いたら自宅は別にあるとのことだったので、いろいろ驚きました。

店名でピンとくる人も多いと思いますが、矢沢永吉のヒット曲からです。

店の前からもうファンシー感が漂っています。まさかこの店が「矢沢な店」とは誰も想像しないでしょう。

ファンシーと矢沢がせめぎ合う店内

「ラハイナ」

まるで家のような店内ですね。最初訪れた時は、奥が居間なのかと思っていました。

「ラハイナ」佐々木さん。矢沢パネルの隣でキメ顔してくれました
佐々木さん。矢沢パネルの隣でキメ顔してくれました

店主の佐々木敏男さんはなんでも中学時代からの矢沢ファンで、リーゼントも当時からとのこと(!)

もちろん毎年の武道館ライブには出向き、お茶ノ水でレコードもこまめに買っているそう(プレーヤーは不所持)。

「矢沢な店はいい店だ」の確証①:見た目に反してソフトな対応

「ラハイナ」

さぞかしとんがってるんだろうな〜と思いましたが、佐々木さん、ものすごく腰が低い……。令和の東京にまだこんな人がいたのかと思うほどソフトタッチです。

そしてこのファンシーな店内。フェルトの小物に覆い尽くされています。

「ラハイナ」

「ラハイナ」

「ラハイナ」

矢沢、フェルト、ぬいぐるみ、矢沢、フェルトとまとまりないことこの上なし。

ちなみに巨大パネルはファンクラブのイベントで行われた抽選で貰ったそう。

「矢沢な店はいい店だ」の確証②:値段を上げられない

「ラハイナ」

肝心のカレーですが、二度見するほど安いです。

ビーフカレー480円、オムレツカレー600円、カツカレーですら650円です。

「値段上げたほうがいいですよ」と心配しましたら、「上げるタイミング逃しちゃって…でへへ」と苦笑いしていました。開店当時の20年前から据え置きだそうです。原材料費も消費税も上がったってのに!

「ラハイナ」

しかもドリンク&サラダセット850円はご飯大盛りも無料です。

冬は豚汁セット900円があり、この豚汁がまた激ウマなのですが、10月〜3月の限定です。

「ラハイナ」

これがオムレツカレーのセットです。食べ盛りなので大盛りにしました。

「ラハイナ」ふんわりオムレツの中にとろ〜りチーズ入り
ふんわりオムレツの中にとろ〜りチーズ入り

カレーの前に!

「ラハイナ」

このポテトサラダがかなりハイレベルなのです。ジャガイモのしっとり感、キュウリのシャキシャキ感、ほのかな塩加減。ポテサラ選手権で上位入賞できると思います。

「ラハイナ」

野菜サラダかポテトサラダを選べるのですが、私は断然ポテサラですね!

完璧なハートマーク

「ラハイナ」

キュートなハートマーク。矢沢への愛でしょうか。と思いましたら、ハートを描いているのは奥様の美津子様でした。なんとなくホッ。

「ラハイナ」

お気づきかもしれませんが店内のファンシーな小物たちは、美津子さんのお手製です。佐々木さんが夜な夜な作っていたらちょっぴり不気味ですよね。

「矢沢な店はいい店だ」の確証③:果てしなく手間をかける

「ラハイナ」

このカレー具がねえじゃねえか!なんて怒らないでください。実は、玉ねぎなどの野菜、りんごやバナナなどのフルーツを炒めたりミキサーで砕いたりして、形がなくなるまで煮込んでいるんです。

カレーも10種ほどのスパイスを配合して粉から手作り。

「ラハイナ」辛さを調整するスパイスも自分で配合
辛さを調整するスパイスも自分で配合

カレーは甘口〜20辛まで無料で辛さを選べますが、ここのカレーはかなり甘口です。20辛にしても普通の店の中辛レベルといったところです。

しかし個人的にはここのカレーは甘口〜中辛ぐらいが丁度良いと思います。マイルドな中にうっすらスパイスが効いてる、まるで店主の性格をカレーにしたような味が魅力なのです。

「矢沢な店はいい店だ」の確証④:変なものは使わない

「ラハイナ」オムレツをご開帳。チーズと卵の雪崩や〜!
オムレツをご開帳。チーズと卵の雪崩や〜!

ここの卵、やけに黄色いけど照明のせいかな〜と思っていたら、「良い餌を食べて育った鶏の卵を使っています」とのこと。さらに、ライスもなんだか美味しいよな〜と思ったら「カレー用に米問屋にブレンドしてもらったコシヒカリです」。

それでこの値段なんて、耐え忍びすぎでしょ〜!

「ラハイナ」チーズがびよ〜んとのびます
チーズがびよ〜んとのびます

矢沢への愛を語ってもらいました。

「歌が上手い歌手はいっぱいいるけれど、矢沢永吉の生き様が好きです。どん底から這い上がって、頂点に立ってもハングリー精神を持ち続けている。矢沢に恥じない仕事をしたいですね」

「ラハイナ」こちらはほうれん草入り卵カレー。ふわとろ卵のせタイプです
こちらはほうれん草入り卵カレー。ふわとろ卵のせタイプです

なるほど〜。お客さんに間違ったものは出さない。そこからこのクオリティが生まれるんですね。

余談ですが最近、矢沢の熱烈なファンが問題になっていましたね。聞くところによると、実際矢沢の家を突き止めて勝手に家の前を掃除して怒られたり、矢沢の家の近くに引っ越しちゃったりするファンも確かにいるそうです。

「ラハイナ」

ちなみに佐々木さんはそんなことはしません。強いて言えばラハイナがどんなところか知りたくて、新婚旅行にハワイのラハイナに行ったぐらいだそうです。健気ですねえ。

西川口のチャイナタウンでまっとうな商売を貫く担々麺の店「永吉」

「永吉」

続いての矢沢な店は、いまディープなチャイナタウンとして「住みたい街ナンバーワン」と(私の中で)言われている埼玉県西川口の「永吉」です。担々麺が有名ですが、実はもともと普通の中華居酒屋だったのがいつの間にか担々麺屋と認識されてしまっているらしいです。ちゃんとエビチリや酢豚といった中華料理もあります。

「永吉」

「永吉」

店主の清水幸雄さんは矢沢歴20年。最初は全く好きではなかったのですが、コンサートに無理やり連れて行かれ、一気に魅了されてしまったのだそう。

「永吉」

一見怖そうやはり物腰はソフト。これも矢沢な店主の特徴です。

店内はパッと見、矢沢な店と気付かないのですが、よーく見るとちょいちょい矢沢が入っています。

「永吉」

「だって矢沢全開だったら普通のお客さんが引いちゃうでしょ。それにうちは矢沢で売っているのではなく、味で勝負しています」素敵ですね!

「矢沢な店はいい店だ」の確証①:休まない

「永吉」

「永吉」

厨房のそこかしこに、尋常じゃない量の餃子の具とか、担々麺にのせる肉味噌とかが置かれています。これはどれも一から仕込んで作った料理の具材。「市販は使わず、徹底的に手作りにこだわります」

お店は水曜定休ですが、「休みの日もひたすら仕込み。年末年始も休んだことがないです」。確かにラハイナもそうでしたが、GWの10連休ど真ん中にもかかわらず取材に対応してくれました。普通なら「平日来いや!」と怒られるところですが、これも矢沢精神なのか、「あ、いいよ」と快く応じてくれてこっちがビックリしました。 

「矢沢な店はいい店だ」の確証②:矢沢の言葉がよぎる

「永吉」デカ肉担々麺1080円。排骨麺の鶏肉版といったところです
デカ肉担々麺1080円。排骨麺の鶏肉版といったところです

看板メニューは担々麺。食べ盛りなのでデカ肉担々麺1080円にしました。揚げ鶏がドドンとのっています。明らかにトッピングの域を超え、タワーのようにそびえ立っています。

見た目に反して辛すぎず、マイルドな中にスパイスや鶏ガラの旨味がしっかり感じられ、奥行きがハンパないスープです。

「永吉」

いっちゃ悪いですが安い中華料理屋の担々麺って、市販の胡麻ペーストに市販のラー油合わせました的な簡素な味のものが多いですが、ここは一口食べたらすぐに「こりゃ手間かかってるわ!」とわかります。

ゴマは使う分だけ挽く!

「永吉」

なんでもゴマは風味を最大限引き出すため、その日使う分だけを朝挽いてペースト状にするのだそう。そこに自家製ラー油を混ぜてタレを作り、それを豆乳と鶏ガラスープでのばしてスープにするのです。

「永吉」これがゴマペースト。飲みたいです
これがゴマペースト。飲みたいです

大変ですねえと感嘆しましたら、「永吉の言葉がよぎるんです」。

「永吉」

自分だけが辛いのではない。世の中で頑張っている人はみんな辛いんだ。永吉も辛い時を乗り越えて頂点に上り詰めた。でも常に謙虚な姿勢を忘れていない。

だいぶはしょって申し訳ないのですが、だいたいそんなお話をしてくださいました。

「矢沢は今も貧乏な時代の金銭感覚を忘れず、かけ蕎麦ぐらいしか食べないそうです」というエピソードにはグッときましたね。

鶏が重くて持てな〜い!

「永吉」

しかしデカい鶏ですね。300gほどあるそうです。

「永吉」

すごい重量です。麺も「どけよ!」と思っていることでしょうね。モモ肉をしっかり特製ダレに2日間漬け込み、油でカリッと香ばしく揚げています。

「矢沢な店はいい店だ」の確証③:細部まで抜かりない

「永吉」

「うちのは子供でも食べられる担々麺です。辛すぎると食べられる人が限られてしまうから」と清水さん。そうですよね〜程度を越したマニア受けの食べ物は一過性ですからね。

しかし!辛くしたい人は卓上にあるラー油をたんまりと入れると良いでしょう。

このラー油、入れてみようと思った自分を褒めたくなるほど旨いんです。

「永吉」

一味唐辛子と韓国の粗挽き唐辛子、8種ほどの香辛料などを白絞油で炒めるなどして弱火で2時間炊き、その後2日間漬け込んだという手間のかかったラー油です。

調味料ひとつひとつにもこだわって手作りしているんですね。

揚げ鶏の油が溶け込んだスープとラー油が混ざり合うとまたこってりオイリークリーミーで、カロリストにはたまらないんです。 

「矢沢な店はいい店だ」の確証④:最後まで飽きさせない

「永吉」

ライブと一緒ですね、「ファン(客)を飽きさせない」という精神。

なんと麺類を頼むと小ライスが無料。つまり残ったスープに入れて坦々飯が楽しめるというわけです。こんなにボリュームのある担々麺ですが、一滴も残さず飲み干す人が多いのも納得です。

「永吉」

「永吉」

このライスにまたラー油をたっぷり入れて、エンドレス永吉!

「食べ終わるのが惜しい!」と心底思いました。

清水さんに「ここの坦々麺が一番美味しいかも」と告白しましたら、「うちより上はもっといます!」と全否定されました。

「永吉」

「担々麺の世界で名を馳せる店はまだまだあります。だからこそ毎日もっと美味しくできるよう研究しています」。

現状に満足せず謙虚な姿勢で向上心を持ち続けた者がいずれトップになるのですね。トップになってもきっと上を目指し続けるのでしょう。

「永吉」

この2店、共通しているのは「驕らない」ということです。どこかに「矢沢に比べたら俺なんかまだまだだ」という謙虚さがあるのです。

長くなりました。まだまだ書きたいことはありますが皆さん実際に行ってみてください。

「矢沢な店に悪い店はない」という法則は本当だと実感できるはずです。

そして矢沢永吉さん、この記事見ていたらどうかこの2店に行ってエールを送ってあげてください!と切に願います。

店舗情報

ラハイナ 住所:東京都板橋区小豆沢1-9-20 アクセス:都営地下鉄三田線本蓮沼徒歩8分 電話:03-3967-8032 営業時間:11時〜20時 定休日:日・祝

永吉 住所:埼玉県川口市西川口1丁目5−5 MFハイツ1F アクセス:JR京浜東北線西川口駅徒歩2分 電話:048-229-7798 営業時間:11:30~15:00(LO14:30)・18:00~23:00頃(LO22:30)※日・祝は~22:00頃(LO21:30)定休日:水(まれに臨時休業あり)

  • 取材・文・写真猫田しげる

    1979年北海道函館市生まれ。京都のタウン誌、北海道の新聞地域面、東京の街歩き雑誌、旅行本などの編集・ライター業に従事。2019年4月から拠点を札幌に移動し、ウェブライターとしてデカ盛りから伝統工芸まで幅広い分野で執筆。弱いのに酒好きで、「酒は歩きながら飲むのが一番旨い」が人生訓。

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