サーフィン・五十嵐カノア 世界を驚かせた「フローター」!
東京五輪のライバルたちを蹴散らすようなスーパーテクニック撮った!
「今大会の決勝では、カノア選手は3mの大波に挑みました。波の頂点で横滑りを行う『フローター』と呼ばれる技ですが、上の写真はそれが成功した瞬間を捉えたものです。カノア選手は、持ち前のスピードを活かして波に乗り、扇形のキレイな水しぶきをあげて観客を魅了しました」(専門誌『サーフィンライフ』の小川泰佳氏)
東京五輪期待の新星がまた現れた。5月25日、インドネシアのバリ島で行われたサーフィン・チャンピオンシップツアー(CT)第3戦で、五十嵐カノア(21)がアジア人として初優勝を果たしたのだ。
CTに出られるのは世界トップの32人だけ。この大会が始まったのは’76年だが、カノアが登場するまではアジア人は出場することさえできていなかった。そんな世界最高峰の大会でなぜ優勝することができたのか。プロサーファーの一楽弘徳(いちらくひろのり)氏は話す。
「今のカノア選手は、いい波を見極める力がずば抜けている。どうすれば高い点数を出せるかを瞬時に判断して、技の構成を考えるのが抜群に上手いんです」
しかし、これまでずっと順風満帆だったわけではない。’16年、CTに参戦したばかりの頃は、慣れない環境に気負いや焦りもあった。乗るべき波ではないのに、がむしゃらに向かっていって、体力を消耗する場面も見受けられたという。状況が変わってきたのは、昨年のシーズン中盤からだ。
「フィジカルトレーニングを積んだことで、身体が見違えるほど大きくなった。もともとトップクラスのスピードが持ち味でしたが、そこにパワーが加わってよりダイナミックなサーフィンができるようになった。サーフボードを海の中に深く押し込む脚力を得ることで、波の斜面で素早くターンが行えるようになったんです。今大会の彼を見ると、本当に力強くなったと感じますね」(前出・小川氏)
サーフィンは東京五輪で初めて加えられた競技種目で、出場資格は今季CT(全11戦)終了時にランキング10位以内であることなどだ。今回の優勝でカノアはランキング2位に浮上し、五輪出場に大きく近づいた。それどころか、金メダルへの期待も大きくなっている。
「今シーズンは安定した記録を出すことができているので、このままいけば五輪出場は確実でしょう。ツアーのまわり方も含めて自分のペースを掴んでいる様子です。サーフィン界最初の五輪金メダルを、カノア選手が獲る可能性も出てきました」(前出・一楽氏)
ライバルのプロサーファーたちも驚かせた「フローター」を成功させれば、東京五輪でも金メダルを獲得できるだろう。
『FRIDAY』2019年6月14日号より
写真:WSL/ZUMA Press/アフロ