「今週私はどのポジション?」サンウルブズが国内全敗と迷走した訳

国内全敗で今シーズンを終えたサンウルブズ。来年でスーパーラグビーから除外されるが、今後の存在意義は?

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正確なキックでファンを魅了したスタンドオフのヘイデン・パーカー

試合後のセレモニーが始まるなか、バックスタンドから帰路へつくファンは通用口付近に並ぶボランティアスタッフと順にハイタッチ。「来年は東京で勝ちましょー!」の声が響く。

6月1日、東京・秩父宮ラグビー場。国際リーグのスーパーラグビーに日本から挑むサンウルブズは、オーストラリアのブランビーズとの第16節を19―42で落とした。これで今季の国内戦は6戦全敗。ここまでの戦績は2勝12敗で、リーグ戦全15チーム中の最下位が確定した。

サンウルブズが日本で未勝利だったのは今シーズンが発足以来初。フランカーで日本代表候補の松橋周平はまず、南アフリカ、アルゼンチンでの残り2試合を見据えた。

「(選手の)入れ替わりがあり、チームも勝てないなか、成熟(の度合い)が問われている」

この日は鋭く飛び出す防御ラインが何度もオフサイド(攻防線上より前でプレーする反則)と判定され続けた。

痛恨のペナルティでリズムを崩したり、失点を招いたりするのは、今季の敗戦パターンにも映る。ブリスベンでのレッズとの第12節では、セミシ・マシレワが30分を残してレッドカードを食らうなどし、ノーサイド直前は12人対14人という荒れた展開に持ち込まれていた。その日は26―32で屈した。

サンウルブズは日本代表強化のために作られたが、今季は海外出身者を軸にスコッドを編成。ある日本人選手は、多国籍軍ならではの難しさを指摘する。

「(防御時の接点で)日本人なら我慢して次の局面まで耐えるところ、(海外出身者が)頑張り過ぎるというか、1人でどうにかしようと(その場で)反則をしてしまっている。それがいい方向に転べば攻守逆転に繋がるのですが…」

連携強化も鈍った。スコット・ハンセンヘッドコーチ代行はこうだ。

「サンウルブズ以外のチームでは選手から『今週、私はどのポジションですか』という質問が飛ぶことはありえない。互いが互いのプレーを理解する部分は難しかった」

ワールドカップ日本大会を9月に控える今季は「日本代表を優先しながらサンウルブズを運営する形」とクリス・ウェブゼネラルマネージャー。藤井雄一郎・日本代表強化委員長兼サンウルブズゼネラルマネージャーが「スーパークラス」と見る姫野和樹、福岡堅樹らは、今春、ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチ率いるウルフパックに入ってスーパーラグビーの2軍クラスとの強化試合に参加。ここまでサンウルブズへは加わっていない。

一方、ウルフパックからサンウルブズへ飛び込む日本代表候補の顔ぶれは頻繁に入れ替わる。スーパーラグビーの開幕前からサンウルブズにいた日本代表候補の一部も、ウルフパックとサンウルブズとの間を行き来した。策士でならすサンウルブズのトニー・ブラウンヘッドコーチは、アタックコーチを担う日本代表の準備へ携わるべく開幕時はチームを離脱。スーパーラグビーの終盤戦がおこなわれている現在も、6月からの代表合宿に備え休んでいる。

両軍は攻撃陣形の共有などで連携の円滑化を図ったが、サンウルブズの核となりえた海外勢に故障が重なったこともあり芯を作りきれなかった。結果としてフィールド上では、スクラムを組み合う選手の繋がりが乱れる、一か八かのパスが繋がらないなどのトラブルが頻発した。

ウェブは「シーズンの最初にジェイミーがしっかりプランを立ててくれていたし、怪我が出た時はジェイミー、藤井さんとコミュニケーションが取れていた」と強調しながら、「ワールドカップに向けた準備とのバランスを取るのが難しかった」とも認める。ブランビーズのダン・マッケラーヘッドコーチは、上位陣の現実をもとに語る。

「我々は直近の数試合では、セレクションすべき位置で何名かを入れ替えながらも全体的な流れのなかでいまの形を作り上げ、コンビネーションも滞りない。それが勝利の裏側にあります。一方でサンウルブズは色々な選手を使うなか少し苦労したのかな、という印象です」

松橋は「言い訳にしかならない」「負けてしまうとそういうところ(よそで言われる課題)が…(問題)なのかな、という話が出てきてしまう」と言葉を選びながら、サンウルブズの選手としての皮膚感覚を明かすのだった。

「外国人選手がステイするところへ、日本代表に関わる選手が入ってくるので、お互いがもっとチームとして結束するのが大事だと感じます。(平時に)日本人だけで固まってしまうことは悪いことではないですが、その影響が出ているとしたらあまりよくない。(試合中は)外国人同士の方が英語でスモールトークができて、ボールをもらうタイミング、(立ち位置の)深さを伝え合えている」

2016年から通算8勝のサンウルブズがスーパーラグビーでプレーできるのは来季限り。日本ラグビー協会およびサンウルブズを運営するジャパンエスアール側は、正式に除外される直前に統括団体のサンザーから巨額の参加費を求められたと訴える。しかし、サンザー側は参加費を求めたタイミングはもっと前だったと主張。ウェブは「どちら(の意見)も本当だ」とするなか、日本側の釈明を真に受ける国内関係者は減りつつある。

本来ならワールドカップ後の日本代表強化への貢献も期待されたサンウルブズだが、2020年もしくはそれ以降の具体的な活用方法は不明。2020年は国内トップリーグがスーパーラグビーと同時期におこなわれるとあり、今季まで国内外の戦いを両立していた日本人選手は「皆、これからどうするんだろう」と互いの身を案じている。

日本代表を支える日本協会は、サンウルブズのスーパーラグビー除外を受けガバナンス面の不安を指摘される。森喜朗・前名誉会長の叱咤激励を受けるような形で、6月から執行部の顔ぶれを刷新する見込みだ。

松橋はいち選手として、スーパーラグビーに挑む価値を改めて強調する。

「世界トップ選手を相手に自分を試せますし、プレッシャーのなかで成長できる。僕のなかでは、もっと、やりたいな、とは思います」

いくらか風通しがよくなりうる今後の日本協会は、「数千人のファンクラブ会員を抱える日本の多国籍軍=サンウルブズ」をどう活用するか。明確な意思表示が求められる。

  • 取材・文向風見也

    スポーツライター。1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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