メジャー”ドラ1″を11憶円で強奪したソフトバンクの「資金源」
今後は若手野球選手の「アメリカ→日本」というルートも
「ルール上は問題ないとはいえ、アメリカの有望選手を青田買いするわけですから、日米ドラフト戦争に発展する可能性は十分にあった。実際、球団内では『どんな反動があるか読めない』と獲得に反対する声もあがっていた。メジャーとの関係性を重視する巨人なら、二の足を踏んだでしょう」(MLB担当記者)
それでも、ソフトバンクは昨年の全米ドラフト1巡目右腕、カーター・スチュワート(19)の獲得に踏み切った。「孫正義オーナーが掲げる球団スローガン『めざせ世界一!』に沿った補強」と分析するのはソフトバンク関係者だ。
「’05年の発足時から『メジャーと世界一を争う、真のワールドシリーズ』の実現を球団は目指しています。現在も孫オーナーは球団幹部にハッパをかけている。実際、今年1月には、サンフランシスコ・ジャイアンツでコーディネーター、ボストン・レッドソックスではスカウティングを任されたハーバード大卒の嘉数(かかず)駿氏を球団統括本部長補佐として迎え入れています。メジャーとの強固な架け橋を構築するとともに、スチュワート獲得の実働部隊として動いたと言われています」
スチュワートにソフトバンクが提示した値段は、6年総額700万ドル(約7億7000万円)だと米メディアは報じた。
「スチュワートは昨年、1巡目で指名された後のメディカルチェックで手首に故障歴が見つかっており、スカウトの評価は全体56位に下がりました。今年のドラフトでも2巡目以降の指名が確実視されていますが、契約金は150万ドル(約1億6000万円)前後。メジャーでは3年目までは10万ドル(約1000万円)程度に年俸を抑えられるのが一般的なので、順調に成長して3年でメジャーに上がったとしても、今後6年間の稼ぎは360万ドル(約3億9000万円)ぐらいでしょう。ソフトバンクが提示したのはこの倍額。出来高を含めたら1000万ドル(約11億円)を手にすることも夢ではない。日本でエース級に成長してからメジャーに売り込めば総額1億ドル(約110億円)規模のメガコントラクトをとることも可能になる。日本へ行くメリットは大きいのです」(スポーツライターの友成那智氏)
スチュワートの代理人は、辣腕で知られるスコット・ボラス氏。今回、嘉数氏とボラス氏のルートで話が進んだという。
「今回、ボラス氏は『日本行き』というカードを手にしました。今後、有望新人の入団を巡ってメジャーの球団と話し合う際の有力な交渉材料となるでしょう。一方のソフトバンクも”世界の金の卵”を獲りに行きやすくなった」(スポーツ紙ソフトバンク担当記者)
198㎝の長身から投げおろす150キロ台の速球とタテに落ちるカーブがスチュワートの武器。友成氏は「スライダーなど、他の変化球は試合で使えるレベルにない。数年かかる」と言うのだが……。
「バンデンハーク(年俸4億円)やサファテ(同5億円)が二軍にいて、助っ人は余っている状態。12球団随一と言われるソフトバンクのファームで、焦らずジックリ育てればいい」(球団関係者)
この余裕――ソフトバンクの強欲資本主義がメジャーをも飲み込み始めた。
『FRIDAY』2019年6月14日号より
- 写真:アフロ(1枚目写真)