トラブル必至 潜入ルポ 東京「1000円民泊」はここまでヤバい
警鐘レポート 泊まった外国人観光客もビックリ このままではトラブル続出間違いなし
渋谷
2020年の東京五輪を前に、政府はいま、約6万件とも言われる「違法民泊」の取り締まりに躍起になっている。6月15日には、これまで曖昧な部分が多かった民泊法に細かな規定を設けた民泊新法を施行。しかし、この新法は、事業者の「地下組織(マフィア)化」を助長し、違法民泊がますます増加する可能性も指摘されている。
近隣住民からの苦情だけでなく、昨年から今年にかけて殺人事件やレイプ事件も発生するなど、トラブル続出中の民泊。本誌は今回、東京23区内にもかかわらず、一泊1000円前後という異様な安さで宿泊できる違法民泊に潜入。その内情を探った。
渋谷区幡ヶ谷 料金約1000円
最寄り駅から徒歩7分、幡ヶ谷の住宅街の真ん中に、その民泊はあった。変色した壁を見る限り、築50年は経っていそうな古アパートだ。
軋む階段をのぼり、狭苦しい廊下に立った瞬間、悪臭が鼻をつく。共同トイレにこびりついた排泄物と、カビ臭さがミックスされた臭いだ。
予約した部屋は、3畳の和室に小さな窓がある簡素なもの。扇風機はあるが、冷房はない。布団を広げて横になってみるが、生地が薄く寝心地はかなり悪い。
だが、こういった設備面の不安はまだまだ序の口。問題は”騒音”だった。深夜0時、突如として隣室から「何でやコンチクショー! オウオウオー!」という絶叫が響く。その後、この叫び声は明け方4時まで続き、恐怖した記者は、朝5時、足早に宿を後にした。
新宿区歌舞伎町 料金約1800円
歌舞伎町のラブホ街のど真ん中にあるこの民泊は、見た目はごく普通のビル。6階部分にある10室ほどを民泊用として貸し出しているようだ。
部屋はビジネスホテルのシングルルームくらいの広さだが、衛生面の不快感はかなりのものだった。カーテンはタオルをかけただけ、ベッドのシーツにも汚れが目立ち、共同のシャワールームのタイルもカビだらけ。
セキュリティの甘さも気にかかった。深夜、宿泊客の友達と思われる中国人が続々と訪れ、部屋で宴会を開始。壁が薄いためか、深夜3時頃まで中国語の騒ぎ声が響き、まったく寝付けなかった。管理人側も「無断宿泊者は通報する」と張り紙をしていたが、日本語が読めない侵入者に効果はないようだ。
新宿
江東区亀戸 料金約1300円
亀戸駅から徒歩10分ほどの位置にあり、外観は古ぼけた民家。実際、中も民家そのもので、1階にある共同のリビングルームを通って、2階の寝室に泊まるシステム。記者が宿にたどり着いた夜10時頃には、6畳ほどの寝室に、日本人アイドル好きの東南アジアの青年、チリ出身の医師志望の19歳、30代のアメリカ人バックパッカーの3人が寛いでいた。
衛生面の悪さは言わずもがな、共同トイレやシャワールームには汚れが目立ち、外国人客がひっきりなしに泊まるため、室内の掃除も一切されていなかった。
リビングにはテレビゲームが設置されていたが、東南アジアの青年が一晩中大音量でゲームをしていたため、ここでも一睡もできなかった。
違法民泊を巡るトラブルに、今後、政府はどのような対策をすべきなのか。民泊に詳しい暮らしジャーナリストの吉松こころ氏が言う。
「悪質な業者は確かに存在しますが、厳しすぎる民泊新法により、真面目にやっていた業者も撤退し始めている。一律に規制するのではなく、行政はもっと業者や旅行者の声に耳を傾けるべきです」
東京五輪まであと2年。日本が真の観光立国になるには、まだまだ課題が山積しているのだ。
亀戸
(この記事の公開当時、記事中新宿区歌舞伎町の物件で「1階部分」と記述したのは、「6階部分」の誤りでした。訂正いたします)
撮影:栗田シメイ(渋谷、新宿) 片山貴裕(亀戸)