夜のニュースは女性キャスター大戦争!? 気になる各局の戦略は?

指南役のエンタメのミカタ 第22回

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6月からTBSの夜の顔として「news23」のキャスターを務めている小川彩佳アナ

先の6月3日、TBS系の『NEWS23』が、大文字から小文字の『news23』に変わった。

――おっと、大事なのはそこじゃなかった。周知の通り、メインキャスターがそれまでの星浩サンと雨宮塔子サンから、テレビ朝日を退職したばかりの小川彩佳アナに変わったのだ。以前の出演陣は星サンがアンカーにスライドした以外は、全員お役御免に。まぁ、星サンは朝日新聞を中途退職して、番組に迎えられた経緯もあり(それ、筑紫哲也サンと全く同じパターンなんですね)、簡単には切れないんでしょう。

それはそうと、小川アナである。なんだか開始早々、初回視聴率が4.3%だったことで、某ニュースサイトに「スタートダッシュに失敗」などと書かれていたけど、ニュース番組なんてキャスターが変わったくらいで、そう簡単に視聴率が上下することはなく、その種の物言いはあまり意味がない。

かつて鳴り物入りで『ニュースステーション』(テレビ朝日系)を始めた久米宏サンだって、開始当初は一桁の視聴率に苦しんだもの。20%台に乗せたのは、開始5ヶ月目にフィリピン政変が起きて、連日、安藤優子サンが現地からリポートするようになってから。つまり、習慣視聴のニュース番組は、最低でも半年間は様子を見ないと数字面で評価できないんです。

そもそも、記者経験もない一介の局アナに過ぎなかった小川アナに、番組の成否を背負わせるのが筋違いと言うもの。欧米ではニュース番組の顔であるアンカーが編集長(その日、扱うニュースの順番や配分を決める人)も兼ねるので、全ての責任をアンカーに被せてもいいけど、日本ではニュースキャスターは番組の司会者に過ぎず、仮に叩くとしたら裏方の編集長の方でしょう。

――そんな次第で、今や民放各局の夜のニュース番組は、メインキャスターに女性がズラリと肩を並べる状況にある。

『報道ステーション』(テレ朝系)は、昨年10月から徳永有美アナが加わり、富川悠太アナとのWキャスター(※小川アナはサブキャスターだった)だし、時を同じくして、『news zero』(日本テレビ系)にはNHKを退職した有働由美子アナが就任。フジテレビ系はこの4月からニュース番組を刷新して、新たに『FNN Live News α』をスタート。新キャスターに同局の三田友梨佳アナを抜擢した。そしてテレビ東京系は、お馴染みの『ワールドビジネスサテライト(WBS)』が大江麻理子体制になって、今年で早や6年目である。

そう、この状況は、もはや女性キャスター大戦争(!?)と言っても過言じゃない。

思えば、日本で初めて女性キャスターが登用されたのが、1978年のフジテレビの『FNNニュースリポート6:30』における田丸美寿々アナだった。彼女は契約社員でフジに入り、女子アナが天気予報しかやらせてもらえなかった時代に、「報道をやりたい」と上層部に直訴。念願叶っての抜擢だった。

そして、これに触発され、翌79年に国会で市川房江サンが「NHKの女性アナはなぜニュースを読まないのか?」と質問して、ようやくNHKも80年の「国際婦人年」を機に、『7時のニュース』に加賀美幸子アナを、『NHKニュースワイド』に頼近美津子アナをメインキャスターに起用する。あれから40年――今やニュース番組は各局とも女性キャスターが仕切る時代が訪れようとは、隔世の感がある。

さて、そんな民放夜のニュース番組の視聴率を比較していこう。

時間帯はそれぞれ微妙に異なるが、まず『報ステ』が10~12%でトップを走り、これを『news zero』が7~9%で追い、『news23』は4~5%で3位。『FNN Live News α』と『WBS』が2~4%という状況だ。とはいえ、先にも書いた通り、ニュース番組というのは習慣視聴で、そうそう数字が変動するワケじゃない。つまり、これらの数字は長年かけて、徐々に定着したもの。多分、この先も大きく変動することはないだろう。

もっと言えば、ニュースを見る人の割合って、視聴率的には常に10%程度いるんですね。彼らはどの番組を見るというよりは、常にニュースを見たい人たち。『ニュースウォッチ9』や『報ステ』が安定して二桁視聴率を取れるのは、要は同時間帯にライバルがいないから。一方、23時台は4つのニュース番組がひしめいており、その「10%」の取り合いになる。そこで、『WBS』は経済ニュースに特化して他の3番組との直接対決を避け、『FNN Live News α』も23時40分開始とスタートを遅らせ、極力直接対決を避けている。で、現状、『news zero』と『news23』が10%のニュース視聴者を分け合っている状況である。

おっと、数字の話ばかりしても夢がないので、ここからは各ニュース番組の“売り”について解説したい。

まず、リニューアルしたばかりの『news23』。番組タイトルを大文字から小文字にしたり、オープニングに新海誠監督のアニメを使ったり、その音楽がサカナクションだったりと、力の入れ具合がハンパない。恐らく、キャスターの若返りに合わせ、若い新規の視聴者を取り込もうと意識したのだろう。つまり、10%のニュース視聴者以外の層へのアピールだ。

ただ、その一方で、スタジオセットは荘厳なパイプオルガン風だったり、照明も欧米のニュース番組風に暗めに抑えたりと、こちらは硬派な演出が目立つ。実際、元KAT-TUNの田口淳之介被告の土下座の一件では、トップで報じたNHKの『ニュースウォッチ9』や、バラエティっぽく3つのアングルでリピートして見せた『報ステ』と異なり、番組後半でベタ記事扱いと報道番組の矜持を見せた。多分、こちらの硬派路線で行くのだろう。

次に、その直接のライバルにあたる『news zero』である。

こちらも昨年10月のリニューアル直後は、有働サンがあれこれ言われたけど、就任から半年が過ぎ、有働サンの力みも取れて、往年の有働節を取り戻しつつある。この人はやっぱり喋りが上手い。4月1日には自身最高となる視聴率11.8%を記録するなど、数字も上向きにある。

この番組の売りは、ニュースを多面的に、硬軟織り交ぜて見せてくれるところ。その辺りの“チーム力”は日テレのお家芸だ。それが最も機能するのが嵐の櫻井翔キャスターが登板する月曜日で、月曜に限ると視聴率も9~10%と安定して高い。これは想像だけど、この番組がモデルにしているのは、かつての久米宏サンの『ニュースステーション』だと思う。

さて、その『Nステ』の後継である『報道ステーション』だけど、昨年7月に桐永洋サン(朝帯の『グッド!モーニング』を立て直して、テレ朝の全日視聴率1位に貢献した人)がチーフプロデューサーに就任して、10月から現行の富川悠太・徳永有美のWキャスターにリニューアルされた直後は色々と叩かれたけど、視聴率は今も二桁と安泰。先の6月5日には14.2%と、NHKを含むその週のニュース番組のトップに立った。

聞くところによると、桐永CPの戦略は、かつてワイドショーに寄りすぎた『グッド!モーニング』を少し硬派にして成功したように、今度はその逆――頭のいい番組になりつつあった『報ステ』をもう少しやわらかくして、視聴者の幅を広げたいらしい。そして数字を見る限り、巷で聞こえる批判の声に相反して、その試みは一応の結果を出している。これがサイレントマジョリティーか。

問題はフジテレビだ。この4年間だけでも、『あしたのニュース』→『ユアタイム』→『THE NEWSα』→『FNNプライムニュース α』→『FNN Live News α』と5回も番組が変わっている。これでは根付く視聴者も、なかなか根付かないというもの。かつては『ニュースJAPAN』で、滝川クリステル・松本方哉・箕輪幸人という鉄壁のトライアングルで、民放随一のニュース番組のクオリティを誇っただけに、なんだかなぁという残念な思いはある。

とはいえ、現行の『FNN Live News α』はそれなりに試行錯誤の結果、45分の尺は長すぎず、短すぎず、丁度いい(そもそも欧米のニュースは30分尺が一般的。30分あれば主要なニュースは伝えられる)し、ニュースの選定も何気にバランスよく配置され、コンパクト。キャスターの三田友梨佳アナも自分を過度に主張することなく、好感が持てる。忙しい人には、この番組をオススメしたい。その日の主要なニュースがスッと入ってくる。

最後は、テレ東の『ワールドビジネスサテライト』だ。一般には経済ニュース番組と思われているが、もちろん普通のニュースも報じている。むしろバイアスなしで、フラットにニュースを楽しみたい人には、一番適しているかもしれない。例えば、今、話題の年金のニュースにしても、この番組なら与党寄りでも野党寄りでもなく、老後の資産形成には何がお得かを、純粋な“経済目線”で教えてくれる。あと、経済ニュースと言いつつ、実はホテル業界とか飲食業界とか、街のトレンド系のニュースも多く、とりあえず流行りものを押さえておきたい人には打ってつけ。大江麻理子キャスターも手慣れたもので、スタジオはいつもアットホームな空気。そして忘れてならないのは、相内優香アナは可愛い。

――そんな次第で、今後ますます展開が楽しみな、夜のニュースの女性キャスター大戦争。彼女たちの中から、アメリカの伝説的アンカーウーマン、バーバラ・ウォルターズのような傑物が現れるか、乞うご期待。

  • 草場滋

    メディアプランナー。「指南役」代表。1998年「フジテレビ・バラエティプランナー大賞」グランプリ。現在、日経エンタテインメント!に「テレビ証券」、日経MJに「CM裏表」ほか連載多数。ホイチョイ・プロダクションズのブレーンも務める。代表作に、テレビ番組「逃走中」(フジテレビ)の企画原案、映画「バブルへGO!」(馬場康夫監督)の原作協力など。主な著書に、『テレビは余命7年』(大和書房)、『「朝ドラ」一人勝ちの法則』(光文社)、『情報は集めるな!」(マガジンハウス)、『「考え方」の考え方』(大和書房)、『キミがこの本を買ったワケ』(扶桑社)、『タイムウォーカー~時間旅行代理店』(ダイヤモンド社)、『幻の1940年計画』(アスペクト)、『買う5秒前』(宣伝会議)、『絶滅企業に学べ!』(大和書房)などがある

  • 撮影西原秀

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