話題沸騰!「荒乙」作者が語る、皆が知らない“えすいばつ”の秘密

漫画家・絵本奈央さん&担当編集インタビュー 『荒ぶる季節の乙女どもよ。』1話を無料公開!

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『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』など、数多くの名作アニメを手がけてきた脚本家・岡田麿里さん。関わる作品が毎回注目を集める“超売れっ子脚本家”だが、そんな彼女が原作を務める漫画『荒ぶる季節の乙女どもよ。』が話題を呼んでいる。

漫画『荒ぶる季節の乙女どもよ。』 1・2話を今すぐ読む

©Mari Okada/Nao Emoto

本作は“性”に振り回される、文芸部所属の5人の女子高生たちを描いた群像劇。7月からアニメ放送がスタートし、「死ぬまでにしたいこと……セックスです」と儚げな美少女が言い放ったり、「走れメロス」を「走れエロス」と勘違いしてドキドキしたりと、思春期炸裂のその内容に「思ってたよりゲスいぞ」「人気声優たちに何を言わせるんだ」と第1話からSNS上で話題沸騰となった。『彼方のアストラ』『Dr.STONE』『炎炎ノ消防隊』など、人気漫画のアニメ化作品が大豊作な今期の中でも、異色の存在感を放っている。

そんな大注目の“荒乙(あらおと)”だが、雑誌「別冊少年マガジン」での連載にあたり、「ぜひこの方に描いてほしい」と岡田さんが太鼓判を押したのが漫画家・絵本奈央さんだ。連載開始の経緯や、制作の舞台裏について絵本さんはこう語ってくれた。

「前作の『それでも僕は君が好き』を岡田麿里さんが読んでくださって、ご指名を受けて漫画を担当させてもらうことになりました。岡田さんの原作を読み、ネーム(※漫画の下書きのようなもの)に起こしていくのですが、話の展開や、キャラクターたちの心の動きが非常にしっかり書かれているので、自然と情景やキャラの表情が浮かんでくるんです」

担当編集・香山直人さんによれば、絵本さんの描きあげたネームに、岡田さんから修正依頼が入ることは殆ど無いのだという。

「原作の意図や、繊細な感情を汲み取ったうえで、絵にするのが絵本さんは非常に上手い。上がってきた絵を見て、『ここでこの表情になるのか!』と唸らされたり、驚くことも多いんです。でも、しっくり来るんですよね。原作を踏まえたうえで、『なるほど。確かにこの顔になるな』『こういう反応になるな』と納得できるんです。岡田さんの原作の力も勿論ありますが、絵本さんの表現力があったからこそ、ここまで読者から支持を受ける漫画になったんだと思います」(担当編集・香山)

成長したら女子にモテモテになってしまった幼馴染・泉に、複雑な気持ちを抱いている和紗(かずさ)。女子からの陰口を恐れ、高校では泉と距離を置こうとしているのだが……。思わず息を呑み、うつむき、口をきゅっと引き結ぶ描写から、和紗の戸惑いが伝わってくる/1巻・第1回より(©Mari Okada/Nao Emoto)

思春期特有のむずむずするような感情が、繊細なタッチで描かれていく“荒乙”。一方で、えっちぃ話で盛り上がる同級生を「この性的愚者め!」と罵ったり、しつこい男から逃れるために「股がかゆい!」と叫んだり、大胆なシーンやインパクトのあるセリフも多いのが本作の面白いところ。中でも特に印象的なのは、やっぱり「えすいばつ」だろう。

これは、「SEX」を「えす」+「い」+「×(ばつ)」と分解して読み替えた言葉で、口にするのもはばかられる「セックス」を、他の言い方で表現しよう!と作中で登場人物たちが考えた造語である。

「明日までに一人3個!」と言い替え案を出すように言う部長・曾根崎の無茶振りに従い、それぞれが真剣に考え、議論する姿はなんともシュールなのだが……実はこの「えすいばつ」を巡り、文芸部員たちと似たような光景が編集側でも繰り広げられていたのだという。

「岡田さんや編集さんと打ち合わせをしている際、『他の言い回しも考えてみよう』と会議をしたことがあります。作中の文芸部員たちとまったく一緒で、案を出して、ホワイトボードに書いていって、議論をして……最終的に、元々の『えすいばつ』がやっぱり一番良いね、となったんですけど、その時に出た別案も、漫画の中にそのまま登場させています。だいぶ前の話なので、誰がどの案を出したのかまでは覚えてないんですが……(笑) でも皆、真剣に考えてましたね」(絵本)

この制作秘話を踏まえつつ作中シーンを振り返ってみると、「アンダー・ザ・C」や「さすまた」など、採用されなかった他の候補に妙な惜しさを覚えてしまう……。

それぞれが考えてきた案をホワイトボードに書き出し、部室で議論を重ねる文芸部員たち。しかし、「これだ!」という言い方が見つからず、迷宮に陥っていく……。/1巻・第4回より(©Mari Okada/Nao Emoto)

幼馴染の男の子の“アレ”を目撃してしまったり、エロチャットで知り合った人物が実は〇〇だったりと、衝撃的な展開が次々襲い来る本作。だが勘違いしてほしくないのは、本作が単に“ゲスい”だけの作品ではないということだ。

無視できない“性”を見つめ、振り回され、心乱されながらも、「人を好きになること」と真剣に向かい合っていく少女たちの姿は、青春の煌めきに満ちている。インパクトのあるセリフや大胆な演出が目につきやすいが、“荒乙”は胸キュンシーンも満載の恋愛漫画なのだ。絵本さんが語る。

「私自身は、作中に出てくるあんなキラキラした恋愛とは無縁の高校時代を過ごしました。なので、描いていて共感するというよりは、むしろ『こういうの良いな』という憧れの気持ちが大きいかもしれません。曾根崎さんと天城くんがまさにそうで、二人のシーンは毎回、『良いな~~』と想いながら描いていますね。登場人物全員大好きなのですが、曾根崎さんと天城くんは特に思い入れのあるキャラクターなので、アニメでどう描かれていくのか今から本当に楽しみです」

潔癖すぎる文芸部部長・曾根崎り香。性に奔放なクラスメイトたちと喧嘩になり、「ブス」呼ばわりされ涙ぐむ彼女に、天城が予想外の一言を放つ。この二人にまつわるエピソードには名シーンが多く、「これぞ青春!」と胸がキュンキュンしてしまう/1巻・第2回より(©Mari Okada/Nao Emoto)

アニメは現在第3話まで放送されており、ターニングポイントともいえる、「文化祭エピソード」が近づいてきている。一方、7月9日発売の「別冊少年マガジン」誌上では、残り2話で漫画の連載が完結することが発表された。アニメ放送と併せてのクライマックスに持っていく流れだ。

“性”に振り回されてきた乙女どもは、はたしてどんな結末に行きつくのか。今後も『荒ぶる季節の乙女どもよ。』から目が離せない。

アニメ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』公式ホームページTwitter

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『荒ぶる季節の乙女どもよ。』 1・2話を公開中!

  • 取材・文大門磨央

    石川県出身。雑誌やWEBを中心に漫画、アニメ、映画などのコラムを執筆中

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