楽天の守護神・松井裕樹 昨年のどん底から大復活!絶好調の秘密

魔球・小さなスライダーと新妻・石橋杏奈に支えられ 目指すは優勝

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松井裕樹の持論は「しなやかな股関節が剛速球を生む」。柔軟性を保つため毎日50回の”シコ踏みトレ”を欠かさない

野球人生で初めての挫折

投げても投げても打たれる。真っ直(す)ぐのスピードも落ちた。野球人生でこんな経験をしたことがなくて、どうしたらいいのかわからなくなった。どん底でした。

パ・リーグ首位を快走する楽天を支えているのが守護神の松井裕樹(23)だ。防御率1.49、セーブ数はリーグトップの22。圧巻なのがセ・パのクローザーたちを大きく引き離す奪三振率15.36だ(数字はすべて6月18日現在)。絶対的守護神はしかし、つい数ヵ月前まで「自分を見失っていた」と言う。

昨シーズンの開幕戦で抑えに失敗したのが始まりでした。その後は、出るたびに打たれ、もう意味がわからなくて……挙げ句、プロ2年目から任せてもらっていた抑えの座を剥奪(はくだつ)され、二軍行きを通告されました。当時、二軍で投手コーチをされていた与田剛さん(現中日監督)にフォームを見ていただいたら、身体が大きく開いていることがわかった。リリーフ失敗が続き、「いいコースに投げないと打たれる」と思うあまり、身体を開き、正面を向いて腕を振る――いわゆる「置きに行く」フォームになっていたんです。身体の側面で壁を作り、ギリギリまでボールの出所を隠さなければならないのに、正面を向いて投げていた。良かったころと比べると、右足を踏み出す位置が10㎝近く、三塁側にズレていました。ボールの出所が見やすく、球威もない。打たれて当然ですよね。

抑えになってから最低の5セーブという成績に終わり、オフ返上で練習に臨んだ松井。福音をもたらしたのはキャッチボールだった。

12月何日だったか……室内練習場でスタッフさんとキャッチボールしていたときに「腕が走る」感覚がつかめたんです。踏み出した右足を伸ばすタイミングで上半身をかぶせる、股関節を乗っけるイメージ。そうすると、ロスなく力がボールに伝わる感じがしたんです。パッと見ではわからないですが、昨季とは全然違う投げ方をしています。実際、142㎞とか143㎞だったスピードが今季は150㎞出るようになった。ただ――球速はもちろん大事ですが、僕は質にもこだわっています。ポイントとなるのはリリース。「手首を立てて、中指と人差し指で押し込みながら握る」感覚でリリースする。ボールの回転が垂直に近く、回転数が多いほど空気抵抗が減り、初速と終速の差が縮まる。打者の手元で浮き上がるような、伸びのある真っ直ぐになるんです。回転数はアベレージで毎分2500回転くらい(プロ平均は2200回転)なんですが、他球団の方によると「今季は2600回転を超える日もある」そうです(笑)。

あとは「小さいスライダー」が効いていると思います。僕はもともと「大きいスライダー」と「小さく速く曲がるスライダー」を投げていたんですが、今年のキャンプでは大きなスライダーを捨て、小さいスライダーを磨きました。曲がりが小さいからストライクを取りやすく、球速もあるから打者は真っ直ぐとの見分けがつきにくいはずです。いま、大きなスライダーは封印していますが……じきに登場するかもしれません。バッターの目が小さいスライダーに慣れたころに。

桐光学園時代、甲子園記録となる一試合22奪三振を決めたあの大きなスライダーを温存してこの好成績なのだから恐れ入る。松井は「メンタル面でも大きな変化があった」と言う。

クローザーは抑えて当たり前。打たれたら戦犯になる辛いポジションです。これまでは「よし、いきますか!」って、気合を入れてマウンドに上がっていました。ただ、気負いは力(りき)みになる。力むと真っ直ぐがふける――吹きあがるような軌道になり、キレを失う。「どうすれば力まずにいられるか」が昨年までの課題だったんですが……今年の春先、突然、道が拓(ひら)けた。打たれたチームメートに「次、頑張ろう」って声をかけたとき、「あれ、俺はいま、少しもムカついてないぞ。『何やってるんだよ!』なんて全然思わない。ということは俺が打たれたときも、周りは『次、頑張れ』と思ってくれているんじゃないか?」と気づいたんです。

それからは「明日の仕事を100%頑張るために、落ち込む時間は必要ない」と割り切ることができた。もちろん、リリーフに失敗しても平気というわけじゃないですよ。打たれたらすぐ、球場を出る前に反省会をします。分析官は同じ左のリリーバー、高梨雄平さん(26)。高梨さんとは毎日、キャッチボールをしているから、「いつもより腕が遠くから出ているぞ」とか、僕のちょっとした変化に気づいてくれる。「あのカウントでスライダーを挟むべきだったね」などと、配球についても話し合います。なぜ失敗したのかを検証し、「次はこうしよう」と決めて、安心してから寝ます!

新妻・杏奈のサポート

もうひとつ、去年と大きく変わったことがある。昨年12月に女優の石橋杏奈(26)と結婚。人生の伴侶を得たことも「メンタルの安定につながっている」と松井は分析する。

奥さんは野球のことは抑えたか打たれたか、くらいしかわからないんですけど、「ナイスピー」って褒(ほ)めてくれます。そういえば……西武の秋山翔吾さん(31)からカーブで見逃し三振を奪ったときは「あれはなんていうボール?」と聞いてきましたね。カーブがお気に入りみたいです(笑)。食事の面とか、サポートもしっかりやってくれていますし、彼女のすべてが僕の支えとなっています。

このままいけば、キャリアハイとなる40セーブ超えは確実。だが、松井は個人成績は眼中になく、「目標は優勝!」と言い切った。心技体が整った最強クローザーの存在はチームの大きな推進力となるだろう。

「手首が1度傾くだけで速球の伸びは大きく落ちる」と語る松井裕樹。「手首が寝ると腕の外側が張る。腕の張りは常にチェックしています」

『FRIDAY』2019年7月5日号より

  • 撮影ジジ

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