「え?これって全国区じゃないの!?」昔ながらの薬の力、再発見

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「ういろう」、「六神丸」、「陀羅尼助丸」、「雪の元」、「たこの吸出し」。これらが何かご存じだろうか。すべて薬で、その効能まで知っているという人は、かなりの家庭薬マニアか本職(薬学的な意味で)の人だ。

大手製薬会社のようなCMを流さずに、地域や特定の年齢層に根付いて定番化している薬。そんな昔ながらの薬に注目してみたい。

ネット販売全盛の時代に店舗販売のみ。信頼と実績の「ういろう」

ういろう(透頂香/とうちんこう)株式会社ういろう

役者、アナウンサーの研修で、発声練習や滑舌の練習に使われている口上「外郎売(ういろううり)」でもおなじみ。名古屋銘菓として聞き覚えがある人も多いと思うが、もともとはこちらの薬が本家。正式には「透頂香(とうちんこう)」という。600年以上の歴史を持つ薬で、外郎(ういろう)家によって一子相伝にて作られているため、一般的には“ういろう”と呼ばれ、神奈川県小田原市の店舗でしか販売していないという貴重品だ。特におばあちゃん世代からの支持が高く、都度小田原まで買いに行くという根強いファンが多い。

小さな銀色の丸薬で、効能は胸腹痛、胃痛、食中毒、消化不良、下痢、疲労、気つけから、口内炎、歯痛、さらには牛馬家畜諸種の疾患にまで及ぶお役立ちぶり。十返舎一九の「東海道中膝栗毛」にも描かれ、その歴史をたどると足利義満、北条早雲らビッグネームも登場するという、由緒正しき地域密着型薬の代表格だ。

愛用者のコメント

(※以下、愛用者のコメントはTwitterなどのSNSから抜粋。すべて個人の感想です!)

「万能薬な『ういろう』!! 」(@jv3_o)

「小田原行ったら江戸時代からの万能薬『ういろう』買わなきゃ」(@YUKKINKIN3t)

「直接買いに行かない限り手に入らない(一人二箱まで)ので母か兄か私が時折買いに行くのです。これで暫く安心 万病即効あること神の如し」(@ryo_panbons)

「海岸線走りつつ、婆ちゃんに頼まれた薬の『ういろう』を買う寄り道」(@sp_selmer)

「相州小田原 透頂香『ういろう』を買いに。実家の母の気付け薬」(@Hiromi_Maeda163)

「暑さで立ち眩みするって言ったら母が持って来たw」(@GIBSON4256)

「喉がチリチリ痛くなって来たので、母にもらった『ういろう』を飲んでみた。今までいつどんなタイミングで飲んでいいかわからなかった『ういろう』。よく見たらかなりの万能薬なのね。でもほんとにこれ飲んだら喉の痛みなくなったー。すごい」(@coconutisland8)

「『透頂香(とうちんこう)』オレもバッグにいつも入れて持ち歩いてる常備薬」(@taichos)

 

江戸時代後期に刊行されたガイドブック『東海道名所圖會』。この中にも、「小田原ういろう」が紹介されている(写真提供:株式会社ういろう)

関東大震災で倒壊した大正時代の店舗。(写真提供:株式会社ういろう)
現在の店舗は1997年に復活されたもの。喫茶室の天井の梁は、70年以上も保存していた旧店舗の部材が使われている
「外郎売(ういろううり)」は、享保3年(1718年)に初演された歌舞伎の演目。画像は、八代目 市川團十郎(写真提供:株式会社ういろう)

全国に広がった中国伝来の万能薬「六神丸」

「六神丸」亀田利三郎薬舗

こちらは、さまざまなメーカーから発売されている薬。関西方面でおなじみだったが、現在は全国区になっている。

江戸中期に開業した紅商・井筒屋利兵衛(現亀田利三郎薬舗)が呉服商に商売替えしたのち、六代目の利三郎が中国の景徳鎮へ行った際に病気になり、現地で入手した六神丸で回復したのがきっかけに、現地で処方を学び帰国後に薬屋へ転身。最初は中国から輸入していたが、含まれる一部成分が輸入禁止になったため、明治32年から国内生産するようになったとか。現在では全国にその名が広がり、亀田利三郎薬舗以外の多くのメーカーが製造するようになった。

主な効能はめまい、息切れ、気つけ、腹痛、胃腸カタル、食あたりだが、万能薬のごとく信望されていることが、愛用者たちからのコメントからひしひしと伝わってくる。さすが伝統の薬といったところだ。

愛用者のコメント

「ゴマ粒よりも小さいが一粒で胃腸が元気になり、酒の毒を早く分解する素敵な名薬その名は『亀田六神丸』 」(@B26510046)

「疲れがたまっていたのか、気持ち悪い時間を過ごしましたが、今は収まっています。ありがとう、『六神丸』」(@chibinao73)

「寝不足からの動悸で『六神丸』のお世話になってるこの頃」(@Orange_momm)

「飲んだら速攻ウンチの質が変わりました」(@_nakano_takeko_)

「『六神丸』を飲んでみた。気のせいかもしれないけど凄く効いてる感じがする。ストレス耐性が通常の倍くらいになってる」(@uedacoin)

「お腹が痛くなったら『六神丸』というのが長野県民のルール。長野県県民じゃないけど」(@TRYNE)

 

昭和29年(1954年)のパッケージと商品(写真提供:亀田利三郎薬舗)

大正時代の店舗写真(写真提供:亀田利三郎薬舗)
明治37年(1904年)の新聞広告(写真提供:亀田利三郎薬舗)

修験者が吉野山で生み出した秘薬「陀羅尼助丸」

「フジイ陀羅尼助丸」藤井利三郎薬房

「だらにすけがん」と読む。奈良・吉野山の厳しい自然環境の中で行われる修業のさなか、修行僧の開祖である役行者が山中のキハダを煮たエキスを飲んだところ、胃病や外傷に効果があったということから誕生したという霊験あらたかな薬で、1300年もの伝統を持つ。奈良県で3つのメーカーが製造しているほか、和歌山県、愛媛県、長野県、鳥取県でも作られている。

主な効能は胃弱、二日酔い、食べすぎ、消化不良、吐き気など。愛用者の多くは子どもの頃からお世話になっているというものや、中には「奈良県民に教えられた」という人も。

愛用者のコメント

「二日酔い予防に、『陀羅尼助丸』飲みます」(@alfmight)

「先に飲めば悪酔いしないし二日酔いにも効果的な素晴らしい漢方薬こと『陀羅尼助丸』さん」(@06atsushi14)

「体調悪い時に奈良の人に『陀羅尼助丸(だらにすけまる)』をもらいました。『なにそれ?』ときいたら、知らないなんて信じられない、みたいな、顔されました」 (@pMCxOLq8tjOjHNA)

「お腹の調子がいまいちなので、こんな時は万能の和漢胃腸薬『陀羅尼助丸』の出番です」(@nara_naka)

「今日はずっと激しい腹痛に悩まされてました。こんな時には大峯山の『陀羅尼助丸』。小学生の頃からお世話になってる笑」(@pain19980930)

「私の世界と、社会的尊厳は、『陀羅尼助丸』に守られたといっても過言ではない」(@welrod1990)

「夜中に腹痛で目が覚める。何度もトイレに通うレベルだったが吉野のお寺から頂いた『陀羅尼助丸』を飲んだら20分もしないうちにしっかり効いて助かった。ありがたや」(@matsuTKSD)

奈良県・吉野山のふもとにある藤井利三郎薬房。現在も、昔ながらの伝統を守り続け、無添加 無着色、無香料で作られているという(写真提供:藤井利三郎薬房)

お肌のトラブルは任せろ!「雪の元」

「外用雪の元」雪の元 本店

こちらも奈良県発祥で、皮膚、肌治療への信頼が厚い塗り薬。約100年もの歴史があり、置き薬として全国の家庭に広がった。特に北海道では“道民薬”的なポジションを獲得するが、東京都内での知名度はかなり低い(筆者調べ)。写真は薬局用のデザインで、置き薬用は「一富士、二鷹、三茄子」のデザインに。こちらを覚えている人も多いのでは?

主な効能はかゆみ、かぶれ、皮膚炎、じんましん、ただれ、しっしん、しもやけ、あせも、ひび。「皮膚に関するトラブルはすべて『雪の元』で治る」と盲信しているファンも多い(筆者の祖母含む)。

愛用者のコメント 

「『雪の元』が我が家の万能薬」(@thankthankyou39)

「道民の万能薬、『雪の元』!!」(@pointo10BAI___)

「とりあえず、万能薬の『雪の元』塗ってカットバン貼っておきます!」(@harima_mekkai)

「綿棒を使って『外用雪の元』を吹き出物に塗った。私はこの匂いが結構好きだ。」(@whatyousay_Lyla)

「『雪の元』って火傷にも使えるのかぁ\(^^)/  なんて万能薬(笑)」(@nayuki26)

「最近水仕事が増えたせいか掌に湿疹が出来て超痒かったんで、何か手湿疹に効く薬を探してみたら、実家に昔から常備されてる雪の元が効くって口コミを多数見かけた。すげぇな『雪の元』」(@xx_batu)

「幼少時『雪の元』なる軟膏が傷と火傷の万能薬でした」(@kisalagi758)

昭和51年(1976年)頃のパッケージ(写真提供:雪の元 本店)
創業当初の「雪の元」(1950年代前半)。戦後の鉄材が不足により軟膏を入れる容器(ブリキ容器)が調達できず、“はまぐり”の貝殻に軟膏を詰めて発売していた(写真提供:雪の元 本店)

東京生まれ渋谷育ち、悪そうなやつを吸い出す「たこの吸出し」

「たこの吸出し」町田製薬

 名前、パッケージデザイン、薬の色とかなりのインパクトを放っているが、大正2年(1913年)創業の100年以上の歴史を持つ、東京生まれで、昭和12年から渋谷育ちのメトロポリタンな薬。会社と工場が渋谷区笹塚にあり、住宅地に突如現れる「たこの吸出し」のレトロな看板が一部好事家の間でSNS映えすると人気スポットに。

効能は、おできの膿の吸出し。患部を開き、膿を排泄して患部を治癒する。その働きぶりに、絶対的な信頼を寄せるファン多数。SNS上でも百年選手の面目躍如のコメントがズラリ。

愛用者のコメント 

「『たこの吸出し』買ったよ。これで背中の粉瘤を除去する」(@kimbae1234)

「ようやくGETした『たこの吸出し』聞きたいことがあってお客様相談室に電話。とても親切丁寧で、思わずどんなにこの薬に救われているか、昔からファンであることなど熱い想いの丈をぶつけてしまった!そしたら『他の社員にも伝えておきます~!』って♪ぜひともー!これからも常備しますので♡」(@yurariro1126)

「半年くらい前におしりにおできみたいのができて、これが痛くて直らなかったので、40年くらい前に使ったこれを思い出して絆創膏に塗って患部にはったら、10日かからないで完治した」(@airvariable)

「『たこの吸出し』軟膏~祖父母の家の救急箱に入っていた事を思い出す。軟膏が緑色で独特な臭気だった」(@million7000)

「高校生の頃よくケツにおできができて、母親に塗ってもらったなぁ」(@haruwa_ka75)

「奥さんが『たこの吸出し』というすさまじく謎な物体を買ってきた、なにこの緑。俺の足にぬれって言うの?」(@uzulla)

「『たこの吸出し』つええwwwwwww」(@tessyuu)

昭和元年(1926年)~昭和12年(1937年)頃のパッケージと容器。(画像提供:一般社団法人北多摩薬剤師会)

このように、ひっそりと家庭や地域に浸透している薬は思いのほか多い。しかも、そういった薬は愛用者が「日本全国どこにでもあり、誰でも知っている」と思ってしまうほど生活に密着している場合がほとんどだ。長い年月をかけて信頼を勝ち取ってきた薬だけに、古臭いと敬遠せずに、あてはまる症状が出たら試してみてはいかがだろうか。

  • 取材・文高橋ダイスケ

Photo Gallary18

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