清宮克幸新副会長が語る 日本ラグビー界「W杯後のストーリー」

名将がラグビー協会副会長に就任 W杯イヤーに大幅な人事刷新が行われた意味

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着席。その場にいる人たちをぐるり、と見回しながら、時折、笑みを浮かべて展望を語る。6月29日に就任した日本ラグビー協会の清宮克幸副会長が7月1日、都内で取材に応じた。国内リーグのプロ化を示唆し、懸念される国際交渉や代表強化についても話した。

「日本ラグビー全体を考えないといけない。攻めるべきものは攻め、守るべきものは守るというバランスです。守るべきものを守るには、先に攻めないとだめだと思っている。この攻める部分で、僕がリーダーになっていきたい」 

早稲田大学、サントリー、ヤマハの監督として名将と謳われてきた清宮副会長はこの日、森重隆新会長のもとおこなうタスクを「攻める」「守る」という表現を用いて説明。「攻める」には、ラグビー界の収益拡大に向けて自身が主導権を握る決意が見られた。約30分の問答を通し、こんなメッセージを残した。

「攻めることとは、いまないものを獲りに行くことです。もう少し簡単に言うと、上からけん引するということです」

「皆さんもラグビー協会の懐具合は理解していると思いますが、競技を発展させるならお金を稼がなきゃいけない。金銭的部分でどういままでにないものを作れるか」

では、いかにして「金銭的部分(の上積み)」を生み出すのか。森重隆新会長からは、試合会場に空席の目立つ国内トップリーグの改革を期待されていた様子。しかしこの日、本人は、新規プロリーグ創設の可能性を匂わせた。

企業クラブが各国の選手を競わせるトップリーグは、かねて変革を予感させていた。前執行部のもとでは、24チームが3カンファレンスに割れる2021年以降の新フォーマット案が出ていた。しかし、複数のクラブ首脳はこの方針に首をひねり、前副会長ながら前体制とは意見を異にする森新会長も「わかりにくい」と断言する。

そのためこの日も、清宮のトップリーグへのビジョンに注目が集まった。結局は着任間もないなかとあって「(計画の)中身はこれから作る」「日本ラグビー界がそう(この日の自らの発言通りに)なるわけではない」と具体策は明かさなかったが、問いかけに応じるなかでこう言い残した。

「(プロ化も)その(アイデア)うちのひとつ」

「いまあるトップリーグをプロ化するとは思っていない。いくつも(イメージしている)道筋がありますが」

「新しいこと(清宮の計画)がもしできれば、その段階で(進行中のトップリーグとの)調整していくことになるでしょう」

まったく新しい枠組みを作りたいのかと聞かれ、「そうですね」。自身の願いが叶った場合のトップリーグとの「調整」については、「(自身の計画が)どういう絵になるか次第でしょうね」とした。

「プランはA、B、Cと色々ある。未来がどんな色になるか、大局を見て答えを決めていく」

新任の境田正樹理事はプロバスケットボールのBリーグ創設に携わった1人で、「私の要請で就任していただきました」と清宮副会長。みずからが代表理事を務める一般社団法人アザレア・スポーツクラブの谷口真由美・広報担当理事も日本協会の理事になったのを受け、「私、境田さん、谷口さんとイノベーションします」と話す。

今後のスケジュールを「7月28日、観衆の前で日本ラグビーの未来を語り合う場を設ける。そこまでの間にどういう絵を描けるかのチャレンジをする」「ワールドカップ(2019年9月開幕の日本大会)が終わるあたりまでの約5か月で、皆さんに提示できるものが作れるかどうかにチャレンジする」とし、素早い意思決定を約束した。

「僕がいま話している内容を形にするためのプロジェクトチームを立ち上げます。10名前後になると思いますが。(それは日本協会の)公式(のチーム)でしょうね」

話題は、この国唯一のプロチームであるサンウルブズや日本代表についても及んだ。

日本代表ともリンクしてきたサンウルブズは、加盟していた国際リーグのスーパーラグビーから2020年限りで除籍される。代表候補選手の強化への悪影響が懸念されるうえ、独自の応援文化を定着させたファンの落胆ぶりも明らかとなっている。スーパーラグビーを運営するサンザーがサンウルブズを弾いたのは、日本協会が継続参加へ消極的と映ったからと指摘される。

森会長は、サンウルブズを運営する一般社団法人ジャパンエスアールの渡瀬裕司CEOと対話。今度の新理事でもある渡瀬CEOへ「日本協会も(ジャパンエスアールを)バックアップする」と伝えたとし、「何とか(スーパーラグビーに)戻る手立てはないか……」と意思表示している。

国際団体へのアプローチへは、渡瀬CEOに加えて国際派の岩渕健輔専務理事も尽力する。清宮副会長は「弱かった、赤字だったとかいう言い方を僕はしたくない。新しい価値を作ったのは事実」とサンウルブズの存在意義を認め、国際交渉を別角度から後押ししたそうだった。自身が動かす新プロジェクトの形状次第で、サンザーへ新たな経済的メリットを提示するつもりか。 

「何もない状態で(先方へ)新しい提案はできない。このワールドカップが終わるまでの時間で、僕たち(日本協会)がどういう武器を背負えるかにかかってくる。武器を持たずに戦いに行くことはない。ただ頭を下げに行ったって、何かが変わるわけではないです」

自国ワールドカップを直前に控えた日本代表へも、バックアップを約束する。

大会後の指揮官選定に関しては「私は(日本大会の)結果を見ずに決めるべきだと思います。結果を見て次の人を探すとなると、2年間ほど空白が生まれる」。現指揮官のジェイミー・ジョセフヘッドコーチは世界ランク上位国からの勝利経験がないものの、清宮副会長は「ジョセフが継続すべきと考えます」と続けた。

「ゴルフのタイガー・ウッズの復活(一時スキャンダルで非難されながら今年のマスターズで優勝)を見て、『スポーツって、人の心を動かす』と思わなかったですか? 過ちを犯した彼がチャレンジし続け、それを応援し続けた人がいて、そしてああいう感動を……。あの流れでラグビーを考えると、ワールドカップで優勝しても失敗しても次に繋がるようなストーリーを用意しておかないと、と思いました」

ジョセフヘッドコーチと親交が深い藤井雄一郎強化副委員長は、前執行部時代から続けて理事に残った。藤井強化副委員長は宗像サニックスの監督時代、相手との戦力差を補うランニングラグビーを展開している。清宮副会長は藤井を次期強化委員長候補として「アイデアマン。彼もどちらかというと攻めるタイプ」と期待する。

とにかく、以前から発信力の高かった人が文句なしの発言権を獲得した格好。重要な検討課題に対し、周囲とどう議論を進めてゆくか。注目度は増すばかりだ。

  • 取材・文向風見也

    スポーツライター。1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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