プロ入りは叶わなくても 社会人野球で完全燃焼するスゴい奴ら! | FRIDAYデジタル

プロ入りは叶わなくても 社会人野球で完全燃焼するスゴい奴ら!

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トヨタ自動車の佐竹功年(さたけかつとし・35歳)投手
トヨタ自動車の佐竹功年(さたけかつとし・35歳)投手

7月13日開幕の都市対抗野球。昨年は近本光司(ちかもとこうじ・大阪ガス→阪神)が大活躍を見せるなどドラフト候補にとっては大きなアピールの場でもある。しかしその一方で年齢的にプロ入りの可能性がほぼゼロになったにもかかわらず、高いパフォーマンスを見せる選手がいるのも社会人野球の醍醐味である。今回はそんなプロのスカウトが“注目しない”プロ顔負けの実力を持つ選手を紹介したいと思う。

現役の『ミスター社会人』という意味で双璧と言えるのが佐竹功年(さたけかつとし・トヨタ自動車・35歳)と守安玲緒(もりやすれお・三菱重工神戸・高砂・32歳)の両右腕だ。

佐竹は169cmと小柄ながら若い頃は150キロ台のスピードを誇った本格派。現在は140キロ台前半が多いものの打者のバットが空を切るボールの勢いは健在で、両サイドをピンポイントに突くコントロールも高レベル。3年前の都市対抗ではチームを初優勝に導き、MVPにあたる橋戸賞も受賞している。

守安は大事な大会は全て登板し、チーム名をもじって「守安重工・守安・守安」と言われるほどの大黒柱。若い頃からスピードは140キロ前後だったが、全ての球種を同じフォームで操る投球術は超一流。一昨年の日本選手権では延長16回を1失点完投、12回以降は一死満塁から始まるタイブレークを5回連続で無失点に抑えたという伝説的なピッチングも見せている。今大会でもこの二人がチームの命運を握る存在であることは間違いない。

投手でこの二人に続く存在感を見せているのが大竹飛鳥(おおたけあすか・NTT東日本・32歳)、藤井貴之(ふじいたかゆき・日本生命・31歳)の二人だ。

大竹は173cm、79kgというどちらかというと捕手のようながっちりした体格の右腕で、とにかくボールの出所の見づらいフォームが持ち味。数字以上に速く見えるストレート、打者の手元で変化する多彩な変化球も素晴らしく、今年の都市対抗出場を決める東京地区第2代表決定戦では14奪三振、ノーヒット・ノーランの快投を見せた。

藤井は打者のタイミングを外す名人。少しクロスに左足を踏み出すサイドスローに近いスリークォーターで、ボールにもフォームにも緩急をつけて打者を翻弄する。昨年はチームとしての都市対抗出場を逃したが(藤井自身は三菱重工神戸・高砂の補強選手として出場)、今年はエースとしてチームを2年ぶりの本大会出場に導いた。

打者で注目してもらいたいのが田中政則(たなかまさのり・日立製作所・35歳・内野手)と日本製鉄鹿島の補強選手として出場する林稔幸(はやしとしゆき・SUBARU・39歳・外野手)の二人だ。

田中は水戸商から日立製作所に入社し、今年で18年目を迎える生え抜きの左の強打者。スイングに柔らかさがあるのが特徴で、ボールをしっかり呼び込んで自分のポイントでとらえる打撃技術の高さは社会人球界でも指折り。今年は主将を務め、北関東地区予選では4割を超える打率を残してチームを牽引した。

林は立正大時代に東都大学二部リーグながらシーズン9本塁打を放って注目された右のスラッガー。今大会のコーチ兼任を除く出場選手の中で最年長の39歳で、都市対抗も入社1年目から18年連続出場となる、まさにレジェンドとも呼べる選手だ。ボール球になる変化球を簡単に振って三振するような打席が続くことも少なくないが、フルスイングの迫力と甘いボールを逃さない集中力はまだまだ健在。長年中軸を打ち続けてきた打者としての雰囲気は、プロの選手でもなかなかまとえないものがある。

ここで紹介した選手以外にもまだまだそのチームの看板と呼べる選手は存在しており、彼らの多くは若い頃にドラフト候補として名前が挙がった選手たちである。巡り合わせやあらゆる事情によってプロ入りを果たすことはできず、30歳を過ぎても社会人野球を続けることに対する葛藤があったことは想像に難くない。

しかしそれでも決して腐ることなく、一流のパフォーマンスを発揮し続ける姿は尊敬に値するものである。都市対抗ではそんなある意味プロよりもプロらしい選手たちのプレーにもぜひ注目してもらいたい。

NTT東日本の大竹飛鳥(おおたけあすか・32歳)投手
NTT東日本の大竹飛鳥(おおたけあすか・32歳)投手
  • 西尾典文(にしお・のりふみ)

    スポーツライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

  • 写真時事通信

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