天理大「悲願の大学日本一」へ!漆黒のジャージーが好発進 | FRIDAYデジタル

天理大「悲願の大学日本一」へ!漆黒のジャージーが好発進

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ボールを持って突進する天理大の岡山仙治主将。(5月12日、関西大学春季大会1回戦の摂南大戦で。天理大はこの試合を74-5と大勝する)
ボールを持って突進する天理大の岡山仙治主将。(5月12日、関西大学春季大会1回戦の摂南大戦で。天理大はこの試合を74-5と大勝する)

大学ラグビーの頂点へ。天理は悲願達成に燃える。

「日本一です」

目標を聞かれ、主将の岡山仙治(ひさのぶ)は間髪を入れずに答えた。昨年度は大学選手権で準優勝だった。明治に17-22とトライ差で惜敗した。

終了直前に攻め込みながら、ノックオン。自らのミスで栄冠を逃した。それだけに、漆黒ジャージーの今年にかける意気込みは強い。

この春のオープン戦は順調にこなす。

6月30日、雨中で12-0とした立命館まで、9戦8勝1敗。唯一の黒星は社会人の豊田織機(21-41)。学生には全勝している。地元の奈良・天理で来西してきた関東勢3校を連破する。42-17日本、76-7法政、36-22筑波だった。

「まあ、去年ほどの強さじゃあないと思うよ。勝ってはいるけど苦戦している。圧勝やったら安心してられるけど」

監督の小松節夫はいつもの慎重な姿勢を崩さない。春の初戦ではスクラムを武器にする京都産業に苦しみ、33-26と7点差での勝利だった。

ただ、京都産業は天理とともに、今秋の関西Aリーグの優勝候補であり、監督の大西健は古希を迎え、勇退を表明している。相手チームが一丸になる勢いに屈せず、勝ち切ったことは評価に値するだろう。

今年、日々の鍛錬はより実戦を意識した形になった。岡山は解説する。

「15対15ではラックができたら、それをオーバーして乗り越えるようになりました」

試合形式では従来、捕まって地面に寝ても、そのままボールは継続されていた。形を確認する感じだった。

今は守る側もそこに圧力をかけ、攻める側はそれを吹き飛ばすようにする。普段から気が抜けないような練習を続けている。

岡山のポジションはフランカーだ。168センチとこの位置にしては小柄ながら、タックルでは鈍い音を響かせる。自分より、20センチ以上も高い選手にも平然とひざ下に突っ込む。恐怖は感じない。

「僕は負けず嫌いなので、怖さよりも負けたくない意識の方が強いんです」

こう言い切る21歳がチームの先頭に立つ。岡山が中心になって、170人近い部員の結束を強める。

「キャプテンになって、同級生ひとりひとり面談をしました。28人ですかね。上のチームにいようが下のチームにいようが、全員で同じところを目指したいからです」

最上級生がまとまれば、その思いは下級生に伝わる。一枚岩になることはたやすい。

岡山はU20日本代表と次代のフル代表の位置づけであるジュニア・ジャパンに選ばれた。U20では主将をつとめる。国内最高レベルでのチーム作りを実際に経験した。岡山の同期、主務の川村将貴はチームの良化を感じている。

「みんなが協力的なので、助かっています」

部員たちは寮生活を送っているが、美化や風紀などに分かれ、積極的に運営を手伝う。生活の乱れはグラウンドでのパフォーマンスに直結する。その部分に手落ちはない。

昨年の主要メンバーから8人が抜けたものの半数近くは残っている。プロップの谷口祐一郎、ロックの奥長凌太、フランカーの松岡大和は昨年から正選手並みの力があった。

主将でフッカーだった島根一磨(現パナソニック)の穴は北條耕太が埋め、ウイングの久保直人(現豊田織機)の代わりは松田信夫らがいる。大きな崩れはない。

戦い方は大きくは変わらない。コーチの岡田明久が手塩にかけたスクラムを起点に、アシペリ・モアラら南太平洋からの留学生を縦に入れ、ディフェンスを集める。そして、早いテンポで展開する。

天理はまぎれもなく伝統校のひとつだ。小松は苦笑する。

「新しいチームみたいに思っている人もいてるけどね」

創部は1925年(大正14)。決勝で破れた明治に遅れること、わずか3年である。戦後1946年から再開された関西リーグでの優勝は10回。これは42回の同志社に次ぎリーグ2位である。3連覇は3回。1973、2010、2016年からそれぞれ記録している。今秋はチーム最多となる関西4連覇にも挑む。

大学選手権の出場は5大会連続の27回。48回大会(2011年度)では初めて決勝に進み、帝京に12-15で敗れた。9連覇する帝京の3連覇目だった。当時の主将はスタンドオフの立川理道。現在はクボタに進み、日本代表キャップ55を持つ。

今夏はラグビー合宿のメッカ、長野県の菅平高原で早稲田、慶應との試合が組まれている。さらに、ワールドカップによる秋の大学リーグ戦の中断期間には、東上して明治との対戦も予定されている。

日本のラグビーをけん引してきた伝統校3校「早慶明」との試合は、天理の力や人気がそのレベルに近づいている証明でもある。

関西を含め、西日本勢の大学選手権における決勝進出は天理と同志社だけだ。優勝は同志社のみ。1982年度からの3連覇を含む4回が戦績に残る。

大学選手権で同志社に次ぐ、西日本2校目の覇者に天理がなれば、名実ともに大学ラグビーのトップとしてその名が世に響き渡る。

  • 取材・文鎮勝也

    (しずめかつや)1966年(昭和41)年生まれ。大阪府吹田市出身。スポーツライター。大阪府立摂津高校、立命館大学産業社会学部を卒業。デイリースポーツ、スポーツニッポン新聞社で整理、取材記者を経験する。スポーツ紙記者時代は主にアマ、プロ野球とラグビーを担当

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