明日ブラジル戦。ブラサカ日本代表主将・川村が見せた衝撃の肉体

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床に四つん這いになり、両膝を地面につけたまま、上半身をぐるりと1回転。169cm、63㎏と世界レベルでは小柄な体でも戦える秘密がこのしなやかさだ。

その瞬間、穏やかな空気が流れる会社の会議室は、悲鳴が混じった歓声とどよめきに包み込まれた。上の写真は、ブラインドサッカー日本代表・川村怜が、所属するアクサ生命のランチ勉強会で披露した、常人離れした肉体。2020年の東京五輪パラリンピック種目のブラサカ日本代表は初出場ながらメダルを期待される。明日14日、岩手県内で合宿中の世界最強軍団・ブラジル代表との練習試合を控え、川村本人を直撃した。

「最初は左肩が12時の位置(真上)までしかいかなかったんですが、日本代表のフィジカルコーチの中野(崇)さんと出会った2016年から、地道に取り組んできた成果です。中野さんからは『可動域が大きいほど、余裕を持って力を出せる』と言われて、ストレッチや柔軟を続けてきました。ストレッチを8時間おきにやることを徹底し、1日3回、1度のストレッチで20種目ぐらいをやり続けてきました」

どうしてここまで体を柔らかくする必要があるのだろうか。川村が続ける。

「上半身と下半身を分離して動かせることに意味があります。相手の力をまともに受けず、圧力を逃がしながら前に進める。相撲に例えるならイナす感じですね。普通の人はボールを足元におさめてドリブルすると、上半身が固まり、体を左右に振る余裕がなくなる。すると、(相手のディフェンスに)寄せられたら正面衝突にように『ポン』とぶつかってしまい、相手の圧力をまともに受けるので体力の消耗が激しい。今のような柔らかさが身についてから、余分な力を消費しなくなり、けがもぐっと少なくなりました」

6月に、世界ランク4位のトルコ代表、同5位のスペイン代表などが参加したトルコ・アンカラカップで準優勝に貢献した川村が、単純で地味なトレーニングを飽きもせず続けてこれた背景に、挫折がある。川村は5歳でブドウ膜炎という病におかされ、7歳の頃、手術したが、十分に回復せず。のちに全盲になり、筑波技術大進学後にブラインドサッカーをはじめた。だが、わずか2年後、半年間ほど競技を離れたことがあった。

「見えない状態で人と人がぶつかることに慣れていなくてこわかったんです。急に人が近づいて来るんで……。そのことによって鼻を骨折したこともありました。その恐怖心が抜けなくて、当時所属していたチームで選手を一度やめました。でもその後、国内で初めて開催された日本代表―中国代表戦を観に行ったんです。国内では圧倒的な実力だった僕らの先輩方が、中国にまるで歯が立たなかった。『ええ、あの人たちでさえ負けちゃうの?』と。その時に、『自分が代表の中心になって、勝利に貢献したい』とふたたび闘争心が沸いてきたんです。覚悟を持ってピッチに立つために、けがをしない体作りにフォーカスしたんです。今の体になって、プレーしていて楽です。試合中に楽になることを知っているので、体を柔らかくすることにも一生懸命打ち込めるんです」

日本代表の高田敏志監督からは「東京で得点王になる可能性があるし、彼が得点王になればメダルがとれる」と期待を受ける川村は世界最強軍団へ挑むにあたり、どんな心境なのだろうか。

「自分たちの世界での立ち位置を確かめるため、世界一のブラジルに対して100%以上の力を出しきりたい。ブラジルを無失点で抑えて、1点でも決められるように頑張りたい。(6月の)トルコ遠征では個人として、全試合で得点することを目標をしていたので、決勝だけ得点できずに負けてしまったことがとても悔しいんです。大事な試合で、チームが苦しい局面で得点してチームを勝たせる選手になりたい」

日本代表は過去、ブラジル代表とは9戦して8敗1分。パラリンピック5連覇を果たすために1年前にわざわざ来日したブラジル代表に隙はない。川村は、ブラジルから金星に導く決勝ゴールを奪い、岩手でも歓声とどよめきを再現するつもりだ。

3月のワールドグランプリで金星をあげたスペイン戦。川村が相手に押されてもびくともしないように見えるのは、強いのではなく、相手の力を利用してうまく逃がしているからだ

 

Photo Gallary2

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